第487話 防寒具創造

 今日はエルザたちがレイラの家に行っているから、俺たちはダンジョンに行くための最終準備をする。

 主に新しく購入した防寒具を着て動きの確認だ。

 一応お金を掛けて薄い素材だけど寒くないという服を購入したけど、それでも普段着ている物よりも厚みが増しているからだ。

 ただ俺はそれでもアルテアダンジョンでの体験からアイテムを作ろうと思っていた。

 最初はホッカイロのようなものを作ろうかと思ったけど、それよりも手袋と靴下で保温効果のある物を作ればいいと思った。

 創造で作れるのは分かっていたが、保温性を長時間維持するのがそのままだと無理そうだったが、魔力付与を覚えたことでそれが可能になった。

 所謂魔力を籠めることで保温性を維持することが出来る代物だから、俺たちのパーティーだけだったらセラ以外は自分で何とかなった。

 セラも出来なくないが、保有している魔力量が少ないから、長時間だとどうなるか心配だったのだ。

 ということで創造で手袋と靴下を作ることにした。

 素材は魔物の皮素材を元に、魔石を使用して作ることが出来た。

 使う皮の品質で強度や伸縮姿勢が代わり、魔石の品質によって温かさと保温出来る時間が決まる。


「もう何でもありだな」


 と作った物をサイフォンに渡したらそんなことを言われた。


「あとはダンジョンについて分かっていることを説明するが、出る魔物はフロストジャイアントって話だ。火属性の魔法が弱点らしいんだが……」


 フロストジャイアントは水属性系統の魔法を使う巨人のようで、ダンジョン内が寒いということもあって、フロストジャイアントの使う氷系の魔法がかなり強力ということで多くの被害が出たそうだ。

 逆に火属性の効果が四五階では低くなるようで、弱点なのに魔法は通りにくいため火属性系の魔法は使うのは止めた方がいいとのことだ。


「だから魔法を使うソラたちは使うなら風や土属性の方がいいかもしれねえが、ただ魔法防御が強いみたいだ。だから攻撃は物理攻撃主体になるが、奴の外皮は硬いみたいだからな。その辺りは実際に戦ってみて具合を見るしかないかな」


 ただ話によると、四五階はMAPが広いが魔物の数は少ないとのことで、運が良いと戦闘しなくても進めるかもしれないとのことだ。


「難易度は魔物よりもいかに吹雪の中を進むかってところなのか……」


 サイフォンもダンジョンの情報を集めた限りだと、そっちの方が大変だと言ってきた。


「特に夜だな。かなり寒くなるって話だからよ」

「それに関してはこっちにも考えがあるから大丈夫だよ」


 雪を使ってのカマクラを作るつもりだ。

 魔物に関してはMAPや気配察知を使っての警戒や、あとはゴーレムに見張りをしてもらう予定だ。

 同調を使えばカマクラ内にいても外の確認も出来るしな。

 ただあまり使っていないから、今日は寝る時に部屋にゴーレムを召喚してスキルの熟練度を稼ぐとしよう。



「帰りました」


 と元気よく部屋に入ってきたのはエルザだ。

 その後にアルトが続いたが、シズネの姿がない。

 それにアルトも気付いたようで、引き返して手を引いてシズネを連れてきた。

 シズネの姿はまあ、見事なメイド服になっていた。

 恥ずかしがっているけど、その格好でここまで歩いてきたんだよね?

 そのことを聞くと、


「こ、ここまではローブを着てたんだよ」


 とプイッと横を向かれた。


「別に変じゃないと思うぞ?」


 俺の言葉にシズネは信じられないものを見る目を向けてきたが、サイフォンたちも普通に「似合っているぞ」と言ったため、困惑したまま顔を真っ赤にしてしまった。

 シズネというか俺たちの感覚だとメイドはメイド喫茶やコスプレのイメージが強いが、この世界では貴族や裕福な家では普通にメイドがいたりする。

 とはいえ一般的かと言われると一般的ではないのは確かだ。

 ただサイフォンたちはエルザやアルトのメイド服姿を普段から見ているから、特に違和感を覚えないんだろう。

 それとこの家周辺の人たちも、外出する時はエルザたちはメイド服で買い物に出掛けているからたぶん慣れている。

 一生懸命働く二人の姿は好意的に映るようで、可愛がられているのを俺は知っている。

 ではそんな幼い二人を働かせている俺たちをどう思っているかというと、悪く言ってくる人はいない。

 それはエルザがメイドとして働くようになった経緯を話しているからだ。

 曰く、今の自分たちが生活出来るのは、俺たちのお陰だと。

 あとはダンジョン攻略で目立ったこともあって、エルザたちに手を出そうという輩もいないだろう。

 誰だってダンジョンの最前線で戦う冒険者に喧嘩を売ろうという者は……余程自分に自信のある強者か、馬鹿しかいないだろう。

 そういうこともあって当初はミアたちをナンパするような奴らがいたが、今ではそういうことも減っているようだ。

 ま、まあ可愛い子たちが多いから、玉砕覚悟で近寄ってくる者は一定数いるようだが、さすがにしつこく言い寄ってくる者は……今はいないらしい。

 そういう説明をシズネにして、


「とりあえずエルザとアルトについて回って、仕事を覚えてくれ。そうすれば変な奴らに絡まれることはないと思うからな」


 と言っておいた。

 ただこの場合はシズネを守るためというよりも、相手を守るためというのが大きい。

 たぶんレベル的に、普通に戦えばシズネの方が強いし、コトリたちから聞いた話だと、下手に魔法を使われるとここ一帯が火の海になりかねない。

 だから俺はシズネに町中で魔法は使わないようにと念を押しておいた。








 



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