第482話 由比 静音
突然の再会で驚いたが、じっくり話す前に一度レーゼをマジョリカまで送ることになった。
「すみません。最後はバタバタしてしまって」
「大丈夫です。それよりもありがとうございます。スイレン様たちにも会えましたし、また町に行けて嬉しかったので」
そう言ってレーゼと別れた。
その後再び最果ての町に戻って、今度こそアルロンから話を聞こうとしたが、戻ってもまだ二人は言い合っていた。
二人というよりも、一方的にシズネが喋っている感じだ。
「だから僕は残るって言ってるだろう」
「そうは言ってもな」
帰ってきた俺を見て、アルロンが助けを求めるように見てきた。
とりあえず俺は一番聞きたいことを聞くことにした。
何故シズネがアルロンたちと一緒にいるのかを。
「黒い森で偶然見付けたんだ。負傷している、とりあえず保護した。君と同じ異世界から呼び出されたのを知ったのは後だったけどな」
そこでシズネは俺の方を見て、ちょっと驚いた表情を浮かべた。
「……見覚えがあるね。確か呼び出されて戦力外通告されてた子よね」
ずいぶんはっきりと言ってきた。
いや、その通りなんだけどさ。
「えっと、今の情勢というか、事情は話したりしてるのか?」
「……そう言えばいってないな」
俺がアルロンに聞いたらそんな返事が返ってきた。
ひとまず俺はシズネに対して、今がどんな状況かを話して聞かせた。
主に王国の顛末をだけど。
「そっか。コトリは無事だったのか。それとカエデ姉さんとミハルも……」
そう言ってから、シズネは自分のことを話してくれた。
「といっても僕は覚えてることは少ないけどね」
シズネがアルロンたちに保護される前の記憶は、それこそプレケスのダンジョンからエレージア王国に帰る時に、魔人の襲撃に遭った時が最後だったらしい。
「けどそっか……たぶん操られてたんだろうね」
シズネはそういうと悔しそうに唇を噛みしめていた。
シズネが言うには、ただぼんやりと何をしていたのかは覚えていたそうだ。
「騎士に命令されるまま魔法を派手に使ってただけだけどさ」
とにかく黒い森で派手に魔法を使って、魔物を倒す様に命令されてたのことだ。
ただ派手な魔法は魔物を引き付けたため、最終的に魔力が底をついた時に魔物群れに襲われてそこで意識を失ったそうだ。
その後負傷して倒れているところを、アルロンたち魔人に救出されたという話だ。
「だからその恩を僕は返したんだよ」
というのがシズネの主張だ。
なんというか、失礼かもしれないが見た目に反して義理堅いと思ったのが正直な感想だ。
ただアルロンたち魔人も色々と今忙しいことと、シズネの実力では足手まといだということだ。
シズネのレベルも十分高いけど、アルロンたちと比べるとな。
「なあ、少しいいか?」
「ん? なんだよ」
俺がシズネに話しかけると、キッと睨まれた。
どうもアルロンと話すのを邪魔されたと思っているようだ。
「いや、コトリたちがシズネ……さん? のことを心配してたからさ。連絡をとってみたらどうかと思って」
「連絡……って、どうやって? それから僕のことは呼び捨てでいい」
俺はとりあえず通信機を取り出してコトリに連絡を入れることにした。
時間的に何か活動をしているかと思ったが、無事繋がった。
『お兄ちゃん? どうしたのこんな時間に』
「ああ、今話せるか?」
『うん、大丈夫だよ』
今日はちょうど冒険者活動は休みらしく、部屋で寛いでいるところだったそうだ。
俺はシズネのことを簡単に伝え、シズネに通信機を渡した。
『シズ姉?』
「本当にコトリなのか?」
『うん、そうだよー』
積もる話もあるだろうし、とりあえず二人にさせよう。
「って、何処行くつもりだよ」
「うん、まあ、後は頼んだ!」
シズネがコトリとの通話に夢中になっている時に、アルロンは口早に言って飛んで行ってしまった。
完全に気配を消して、シズネにばれないように徹底していた。
それでいいのかと思ったが、俺は無理に引き止めるようなことはしなかった。
去り際にアルロンから、理由を聞かせられたからだ。
いや、それをはっきりシズネに言えばいいと思ったが、頑固そうというか、意志が固そうだから説得は無理と判断したんだろう。
「あれ? アルロンは?」
通話が終わり、アルロンがいないことに気付くと聞いてきた。
俺は正直にアルロンが去ったことを伝えた。
「何で引き留めておかなかったのよ」
「アルロンから色々理由を聞いたから。それにシズネも少しは自覚しているなじゃないか?」
俺がそう言うとキッと睨んできたけど、反論がないということは自分でも分かっているんだと思う。
アルロンが言うには、今アルロンは魔王城のあった場所であることをしていると言っていた。
そのあることは詳しく教えてくれなかったが、今そこはかなりの危険地帯になっているとのことだ。
それこそ近くにいるだけで体に害が及ぶほどの状況らしい。
本当はアルロンとしても早くシズネを避難させたかったが、連れて行く余裕がなかったとのことだ。
ちなみに魔人であるアルロンたちは大丈夫だという話だが、若い世代の者たち……一本角の者たちも避難させていると言っていた。
「だから今は素直に従った方がいいと思う。シズネだって迷惑をかけたくないだろう?」
迷惑という言葉にピクリと反応したシズネは、不承不承頷き俺たちと一緒に戻ることになった。
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