第477話 マジョリカダンジョン 43・44F

「えっ」


 ダンジョンカードをミアが受付で提示したら、驚きの声が上がった。

 何度も確認し、その後セラたちのダンジョンカードも確認すると、別室に通された。


「あの、詳しい話を聞かせてもらっても大丈夫ですか?」


 ペンと紙を持ったギルド職員が控えるなか、俺たちはダンジョンの四十三階と四十四階の様子を語った。

 といっても特に新しい情報らしい情報は少なく、四十三階は出る魔物はジャイアントエリートのままで、魔法を使う個体の比率が高くなり、さらにその後衛を守るための盾持ちが多く出た。

 これは部屋での戦いではそれほど苦戦しなかったが、逆に通路での戦闘で苦労した。

 盾持ちの壁を崩さないと先に進めず、クリスたちの使う魔法でもなかなかその守りを崩すことが出来なかった。


「それではそこはどうやって進んだのですか?」


 その質問には、強引にシールドオーラを使って突撃した時もあれば、逆に部屋に近いところで遭遇したらそこまで魔物を誘き寄せて戦ったと答えておいた。

 もちろんそういう戦い方をして突破したこともあったが、力技で突破した回数の方が多かったような気がする。

 うん、付与した投擲武器をまた補充する必要があるな。


「それでは四十四階はどうでしたか?」

「そこで出た魔物はサイクロプスでした。単眼の巨人の魔物で、ギガンテスに似てました」

「サイクロプスですか? 初めて聞く名前の魔物ですが……何処かで見たことがあるのですか?」


 報告したら真顔でそう言われてしまった。

 そう言えばサイフォンたちも、


「ギガンテスに似た魔物だな。こいつら」


 と言っていて、サイクロプスと俺が言った時もピンときていない感じだった。


「あー、エルド共和国の遺跡に行った時に、偶然知ったんです」


 俺は鑑定のことを話そうか迷ったが、結局この場ではそう答えることに留めた。

 実際俺がサイクロプスの名前を知っているのは、鑑定した結果だったわけだけど。

 この時、ダンジョンで出て来た初見の魔物がいた場合はどうやって調べていたのか気になったが、これは後でクリスかサイフォンあたりに聞いてみることにしようと思い話を続けた。

 最終的にサイクロプスに関してはどうやって戦ったなどの話を聞かれ、武器の通りや魔法を使ったならその聞き具合などを答えていった。

 これに関しては個人の力量や装備の関係もあるから、あくまで参考意見という感じだ。


「それでその、四十五階には行ってみましたか?」


 最後にそう聞かれた瞬間、ヒカリは眉間に皺を寄せ、ルリカは嫌そうな顔をした。

 ギルド職員は不思議そうにそんな二人を見ていたが、まあ、理由を知っている俺としては仕方ないと思った。


「四十五階は三十五階までと同じようにフィールド型になっていて、草原と森の広がる環境だとは思うのですが、辺り一面雪が積もっていました」


 そう、それは竜王国のアルテアダンジョンの八階と同じような環境だった。

 生憎と入口近くに魔物の反応はなかったため、一目見て引き返してきた。

 俺たちは一応装備は以前使ったものがあったが、サイフォンたちは防寒用の装備を持っていなかったからだ。

 寒さが厳しかったし、まずはそのための装備を揃える必要がある。


「分かりました。どうもありがとうございました。それと四十五階到達おめでとうございます」


 実は四十四階を通り抜け、四十五階に到達したのは俺たちが初めてだったりする。

 そのため受付の人はダンジョンカードの記録を見て驚いたし、こうしてダンジョンの様子の聞き取り調査を受けていたのだ。

 まあ、別にダンジョンを更新したからといって、何か報酬が出るわけではないからな。

 ギルドとしては攻略を促すための餌として昔はありだと思っていた時期もあったそうだが、無謀に挑む人が多く出て命を落とす人が続出したためいつからか廃止されたそうだ。


「とりあえず装備を揃えることからだが……防寒具はこの町じゃ揃えるのは大変かもな。寒さを防ぐだけじゃなく、防御力も出来れば欲しいしよ」

「いっそ別の町に買いに行くか?」


 転移を使えば別の国で買い物は可能になるが、


「いや、ここは時間が多少かかるがこの町で作ってもらった方がいいだろう。無理そうなら商業ギルドを通じて取り寄せでもいいし。まあ、ここのところダンジョンばかりに潜っていて疲れたからよ。その間少し休息を取ろうって感じだ」

「そうね。ダンジョンでの時間が長いとエルザちゃんとアルト君も寂しい思いをしていると思うし、少し二人と一緒にいてあげた方がいいかもね」


 サイフォンの言葉にユーノものったことで、しばらくダンジョン探索は休むことにした。

 そしてせっかくだから、いっそエルザたちを連れて他の町に行ってみようという話になった。


 


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