第476話 マジョリカダンジョン 42F
四十二階に到達したのは、全てのクランが四十二階に消えていってからちょうど二日後になった。
そのまま四十二階に下りてMAPを確認したが、そこには人の反応がちょうど四十人分しかなかった。
確かこの人数で行動していた集団は、四十一階でも先頭を進んでいた人たちだ。
「他は帰還石で戻ったようだな」
「それは仕方ないよ。人数が多い分、消耗品は多く必要になってくるし。食料の問題もあるんだしさ。マジック袋やアイテム袋があっても、ソラみたいに大量に持ち運びは出来ないと思うよ」
俺の呟きに、ルリカが答えてきた。
確かに人数が多くなればその分消費する食料は増えるし、それこそポーション類だけでなく予備の装備とかも必要になってきたりする。
実際俺たちも予備の武器は用意しているけど、俺たちが使っているミスリル武器に関しては俺が修復出来るし、フレッドたちも自分たちの分はアイテム袋にしまってある。
ちなみにフレッドたちが使っているアイテム袋は、俺がポーチ型のものをサイフォンたちの分を作ってプレゼントしておいた。
一応使用権限を本人にしてあるから、他の人が使えないようにはしてある。
渡されたサイフォンたちは戸惑っていたようだが、そこは深く考えるのをやめた。
それともう一つ。撤退した理由はこの階から出てくる魔物が関係していると思った。
この階に出る魔物はジャイアントエリート。名前の通りジャイアント系の精鋭らしいが、厄介なのが魔法を使う個体がいるということだ。
そのためここからは物理だけでなく魔法に対する耐性のある装備も欲しくなる。【守護の剣】の人たちの残した資料によると、魔法を使う個体の比率は少ないそうだが、それでも威力は無視出来ないそうだ。
見分ける方法は簡単で、この階では少なくとも魔法を使う個体は杖を装備しているとのことだ。
「とりあえず少しだけどんな感じか戦ってみないか?」
俺は近くに部屋があり、そこに魔物がいることを伝えた。
すると誰一人反対する者はなく、行くことになった。
「前の集団はどれぐらい進んでいるんだ?」
「階段までの距離を考えるとちょうど中間地点ってところかな? 今回は階段の位置が比較的近い場所にあるみたいだし」
ただこれは運が悪いと到着するまでにかなり遠回りになりそうだ。
ポイントは何回目かにくる別れ道で、そこでハズレを引くと外周部まで進んで反対側から階段のある通路に到着する感じだ。
一応時間はかかるが階段には到着出来るようにはなっているのが救いか?
ちなみに先行する集団は見事当たりの道を進んでいるから、あと二つほど部屋を通過すれば階段に到着することだろう。
もっとも部屋と部屋を繋ぐ通路の距離がかなりあるから、それでも一日以上はかかりそうだ。寝ないで進めば一日もかからないで到着出来そうだけど、通路にも魔物の反応があるしね。
「ソラ的にはこのまま四十三階を目指しても問題なさそうか?」
「一応四十階に戻るよりは近いと思う。あとは魔物の強さ次第かな」
「なら進んでみるか」
サイフォンの言葉に俺が答えると、とりあえず次の階段を目指すことになった。
実際ジャイアントエリートと戦って思ったことは、通路で魔法を使う個体と勝ち合うと容赦なく魔法を撃ってくるため、俺とガイツがシールドスキルのオーラシールドで魔法を防ぎながら進むしかなかった。
しかも相手は魔法を連発してくるから、その間はこちらからの反撃はクリスとユーノ頼りになった。
さらに部屋での戦闘は、魔法を使う個体が一体ならそれほどの脅威ではなかったが、複数いるときは立ち位置に注意する必要があった。
オーラシールドの範囲から外れると被害が出るからだ。
一応サイフォンたちは魔法に被弾しても大丈夫な装備をしているが、だからといって被弾覚悟で戦うのは愚か者のすることだ。
ただ部屋だと迂回して攻撃するなどの手段が取れるため、ルリカをはじめ、ヒカリやセラはその速度を生かして強襲するなどして魔法使いを率先して狙ってくれた。
この頃になるとさすがにゴーレムを召喚して戦ったが、ゴーレムが魔法を防ぐシールドを張るとその分魔力を消費するため稼働時間がどうしても短くなってしまうという欠点があった。
あとはタイミングをこちらから指示する必要があったのは、学習能力が足りてないからだろう。
「もう少し守り手が欲しくなるところだけど、俺が盾を使っても駄目だからな」
「サイフォンが守りに回ると、今度は攻撃陣が手薄になるだろう?」
「……攻撃はセラの嬢ちゃんがいればなんかなんとかなりそうだけどな」
俺がサイフォンの視線を追えば、両手に持つ斧を軽々と振るっているセラの姿があった。
確かに魔力を付与した斧を振るうセラの強さは、格段にアップしたと思う。
ただ逆に頼り過ぎれば負担も増えるため、そこは難しいところだ。
かといって仲間を増やそうにも、生半可な実力者じゃこの下層をついてくることは無理だろう。
少しだけ、ナオトたちがいてくれたら助かったかもしれないと思った。
その後俺たちは無事四十三階に到着し、今回は帰還石を使用して地上へと戻った。
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