第474話 進展
ボスを攻略して地上に戻ってきたら、ギルドに寄って素材の販売。売れるのはギガンテスの瞳だけだが、用途は不明。研究に回されているらしい。
俺は一人ぽつんと離れた位置で、報告や売買をしている様子を眺めていた。
俺以外皆冒険者登録しているから、ダンジョンカードを更新するとポイントが付与されるんだよな。
ルリカたちは別段高ランクになる必要は感じてないようだけど、Bまでは上げておくつもりらしい。
それ以上は面倒だから止めるそうだ。
何でも高ランク冒険者になると色々なしがらみも発生するらしい。
「ソラ君じゃないか。君たちもダンジョン帰りなのかい?」
俺がそんなことを考えていたら声を掛けてくる者がいた。
振り返るとそこにはアッシュをはじめとしたクラン【守護の剣】の面々がいた。
そしてアッシュを残し、他のメンバーたちは受付の方に歩いていった。
「さっき帰って来たところだよ。アッシュたちもか?」
「ああ、僕らもだ。それはそうと結構ダンジョンを進んだようだけど、今は何処まで行っているんだい?」
アッシュが言うには、三十五階以降で活動している【守護の剣】のメンバーから、俺たちが先に進んでいることの報告を受けていたようだ。
俺たちも実際何度か【守護の剣】のマークの入った装備を持った集団を見掛けたわけだしな。
俺は正直に四十階のボス部屋を通過したことを話した。
どうせギルドの方には素材を卸しているから、俺たちが四十階のボスを倒したことは調べれば誰でも分かるだろうからね。
ただアッシュはそれを聞いて凄く驚いていた。
その後アッシュは自分たちは四十一階で活動していることを話してきたが、ちょうどミアたちが戻ってきたのと入れ替わるように小走りに受付の方に行ってしまった。
「あの人は、確か守護の剣の人よね?」
「ああ、四十一階から帰ってきたって言っていたよ。それより用事も済んだし帰るとするか?」
ミアの言葉に俺は頷いて答えると、今日は真っ直ぐ帰ることにした。
ボスとの戦闘はそれほど時間がかかっていないし、ある意味日帰りだからいつもの探索と比べてもダンジョンにいた時間は圧倒的に短い。
それでも初見のボスに挑戦するのは、やはり緊張するし精神的な疲労が溜まりやすい。
それもあって皆の顔を見ると少し疲れているようにも見える。
だから俺の言葉に異を唱える者は誰一人いなかったし、俺たちはひとまず五日間ゆっくり休むことを決めた。
そんな俺たちが休息日を設けている間。ダンジョンでは大手クランが新たな動きを見せていた。
それはある意味俺たちが原因だったようで、無名の、それも何処のクランにも所属していないパーティーが四十階を突破した話はすぐに伝わることになった。
それを聞いた最前線で戦っていたクランの人たちは、四十二階を目指し始めた。
その先陣を切ったのは【守護の剣】で、それに他のクランも追従した。
ちなみに後で知ったことだが、俺たちが下層での攻略をしていたのは大手クランの間では有名なことで、一応有望株として勧誘の話も上がっていたらしい。
ただそれを何処かがすると、取り合いに発展するかもしれないということで、俺たちが自らクランに入りたいと来た場合を除き、接触を控えるようにしていたとのことだ。
「まあ、無茶をしなければいいんだけどな」
ギルドから戻ってきたサイフォンが、その話を聞いたようで心配そうに言ってきた。
確かに慌てて四十二階を目指したんじゃなければいいなとは思うが、行くか行かないかを決めたのはそのクランの人たちなわけだから、その結果どうなるかは自己責任だろう。
もっともこの余波は別のところで発生したようで、帰還石の値段が倍以上に跳ね上がったのと、ボス部屋を利用する人が増えたとのことだ。
特に十階、二十階のボス部屋に挑戦する人は倍増した。
特に十階だと魔物の強さから少数精鋭部隊を多く作ることで、挑戦する回数を増やしたようでギルドの職員が整理で悲鳴を上げていたらしい。
「基本一階進んで次の階の登録を済ませたら、帰還石で戻ってくるって方針なんだろうな。あとは万が一に備えてお守りみたいなもんなんだろう」
とはサイフォンの意見だ。
俺たちもそれなりにボス部屋に挑戦したりしているから帰還石は貯まってきているから、そろそろ次の階に到着したら帰還石で戻ってくることを視野に入れる必要が出てくるかもしれない。
それはダンジョンが単純に広くなっているからだけでなく、次の階への情報がないためだ。
食糧や回復薬などの消耗品に関してはアイテムボックスがあるから問題ないが、出る魔物が分かっていないから、出る魔物次第では必要なアイテムが出てくるかもしれないからだ。
「まあ、俺たちの場合は余程のことがない限り大丈夫そうだけどな」
「……確かにバランスいいよな。アンデッド系が出てもミアがいれば安心だし、物理と魔法の効きにくい魔物が出てきても対処出来そうだよな」
サイフォンの言葉に俺は仲間たちのことを考えながら言ったら、
「一番はお前の存在だけどな、ほんと」
とちょっと呆れ顔で言われてしまった。
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