第472話 マジョリカダンジョン 40F・準備

 四十階に到着したら、一度ダンジョンから出ることになった。

 もともと今回の探索ではここまで来るつもりは半分以上なかったのもあって、四十階に出る魔物について良く調べていなかったからだ。

 一応どんな魔物が出るかは知っているけど、どんな攻撃が得意でなどの情報まではしっかりチェックしてなかった。

 数々の苦難を乗り越えてきたから大丈夫だとは思うが、ボス部屋となるとさすがに慎重にならざるを得ない。

 ちなみに出る魔物はギガンテスとジャイアントガードで、ギガンテスがジャイアントガードを指揮しているとのことだった。

 詳しく調べた結果、ここで一番気を付けるのは、ここのボスであるギガンテスは特殊なスキルを持っているそうで、ジャイアントガードの数が減るとスキルを使ってジャイアントガードを召喚するそうだ。

 ジャイアントガードの出る数は十体と固定されていて、三体以下になると必ず再召喚をするとのことだ。

 ただこれは三体以下にならなくても再召喚されるようで、例えば五体減った状態で十分が経ったら召喚されるなど、何体減った状態で何分時間が経ったら召喚するという仕組みになっているということが分かったらしい。

 あとは再召喚されてから次の召喚までのクール時間が設けられているから、連続召喚は出来ないということも分かっている。

 これは誰かが検証したわけではなく、ここのボス部屋を戦うパーティーが増えたから、どんなことが起きたかを記録していって分かったことなので、資料には『仮』という文字が表記されていた。


「まあ、戦い方は最初から全力で取り巻きを倒して、一気にボスを倒す流れでいいと思う」

「いや、もう少し作戦はしっかり練った方がいいよ」


 サイフォンの言葉にジンは呆れながら注意していた。

 結局初手でクリスの精霊魔法を放ち、そのまま数を三体以下まで減らす。

 その後再召喚されたらガイツを中心に守りを固めつつジャイアントガードと戦う組と、ギガンテスと戦う組で分かれることになった。

 ギガンテスは特に物理と魔法に高い耐性を持っていて、属性による攻撃も光の属性攻撃以外は効きにくいということで、俺を中心にセラとルリカとオルガで戦うことになった。

 今回ヒカリがジャイアントガードの方に振り分けられたのは、麻痺による攻撃で動きを鈍らせる狙いがあったからだ。


「それじゃ矢を用意したいんだけど、オルガには矢を選んできて欲しいんだ。やっぱ手に馴染む奴のがいいと思うし」


 矢は使っている素材で微妙な重さとかがあるからな。

 投擲用の武器もセラはセラで、ヒカリはヒカリでというように自分で使う物は自分で選んでもらっているわけだし。

 とりあえず翌日一日は準備にあてつつ、ヒルルクの様子を見に家の方を訪れたりして過ごした。

 まあ、当のヒルルクたちダンジョン組は不在で、女の人や子供たちしかいなかった。

 俺たちがダンジョンに行っている間はエルザとアルトは頻繁に通っていたようで、かなり子供たちと仲良くなっていたし、事情を知る女の人たちも何かと二人のことを気にかけてくれているようだった。

 とりあえず準備と休憩で三日間とることになっているから、俺たちもエルザたちと町中を案内しながら色々なお店にも行った。

 俺は歩きながら経験値と魔力付与を使ってスキルのレベルを稼いだりして、出来るだけ実用レベルにまで使えるようにしたいと思ったが、さすがにそんなにすぐには無理だ。

 マナポーションがぶ飲みすればいけるかもしれないと思ったけど、さすがにそれをしようとしたらミアとクリスに怒られたから止めた。

 その代わりヒカリたちのミスリル武器を預かって、魔力付与したものはアイテムボックスに収納しておいた。

 これでボス部屋に入る前に渡せば、普通の状態でも二時間は持ってくれるはず。

 一応魔力付与してから魔力の減り具合を見てそれは確認したから間違いないはずだ。

 さらにセラとルリカの武器には、光属性の付与も忘れない。

 他にはオルガの使う矢百本に光属性を付与して渡したら、ちょっと顔を引き攣らせていた。

 もしかして百本頑張って使ってくれと、俺が思っているとでも思ったのだろうか?


「ボス部屋は普通の場所と違って緊張すると思うがいつも通りやれば大丈夫さ。あとは最終確認だが、まずはクリスの嬢ちゃんの攻撃で数を減らして、召喚を使わせる。その後皆である程度数を減らしたら、その後ソラたちボス班はボスを仕留める感じで問題ないな?」

「それで大丈夫だろう。ジャイアントガード組は余裕があればソラたちの援護に回ればいいだろうし。その点は状況を見ながらサイフォンが指示してくれればいいと思う」


 サイフォンの言葉にジンが答えれば、他に異議を唱える者はいなかった。


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