第470話 マジョリカダンジョン 38F
「それでだ。どうする?」
三十八階への階段を発見し、登録を済ませたサイフォンが聞いてきた。
これはこのまま進むか、それとも戻るかということを皆に聞いてきたのだ。
三十六階は最初の頃戦闘をしなかった分、五日ほどで探索は終了した。
ただ三十七階は休憩をとるのが多かったため、十日ほどかかった。
俺たちの場合はMAPによって階段の位置が分かっているため、迷うことなく進めているから他の人たちに比べれば次の階へ到着する日数はかなり早い方だ。魔物と戦わないで進める場合も、結構回避したりしているし。
それでも流石に来た道を戻るとなると、同じだけの時間がかかるからこのまま進んだ方が早いんじゃないかと迷ってしまう。
ここが三十四階までならこのまま進んでいたが、ジャイアントは倒せない魔物ではないものの、やはり一度の戦闘でそれなりに消耗しているため皆の疲労は間違いなく溜まっているのが分かる。
それとこの階から出るのはジャイアントガードだ。
ジャイアントとの違いはその体の大きさ。
ジャイアントと比べて一回り小さくなるのだが、それは無駄な肉がなくなり、体が引き締まっているからだ。
その分素早さが上がり、速度が加わることで攻撃力も増しているそうだ。
「とりあえずMAPで階段の位置を確認して、あとはジャイアントガードがどれぐらい強いのかを確認したいかな?」
俺のその意見は取り入れられて、ひとまず三十八階に移動した。
いつものようにMAPを呼び出して確認したところ、階段の位置はMAP中央にあることが分かった。
MAPの広さから、三日ほどで到着出来そうだと今までの経験から推測出来た。
あとは魔物の数が比較的少ないことも確認出来た。正確には階段までのルート上にはという注釈が入るが。
俺がそのことを告げると、とりあえず何度か戦闘を試してみてから決めようということで進むことにした。
ジャイアントガードの素早さは確かにジャイアントと比べると速いが、戦ってみたところ一対一なら問題なさそうだ。
「問題は次の階だよな。出る魔物は引き続きジャイアントガードみたいだがよ。確か装備が変わるんだったか?」
サイフォンの言葉に、資料室で調べたことを思い出した。
三十九階もジャイアントガードで、基本的に群れで行動しないのはこの階と変わらない。
ただ一点だけ、装備がかなり豪華になるという話だ。
この階で出るジャイアントガードは、体は腰蓑をしているぐらいでほぼ裸と変わらない。
だけど次の階からは鎧を着用し、他にも武器だけでなく盾を持つ者も出てくるそうだ。
「厄介なのは盾持ちのジャイアントガードだって話だな。守りが固いから倒すのに時間がかかるってのを小耳に挟んだ。まあ、それでも囲んで一斉に攻撃すれば倒せるって話なんだがな……」
そう、三十九階の戦闘でならそれが通じる。
ただし四十一階以降だと集団のジャイアントガードとの戦闘になる。
そのためその手が通用しなくなるらしいのだ。
大手クランが攻略人数を増やさざるを得なくなった大きな要因だ。
「理想は正面から戦ってその守りを崩せるかだよね」
ルリカの言葉にサイフォンが頷いている。
「そういうことだ。それで最終確認だが、このまま進むか?」
結局俺たちはそのまま進むことにした。
やっぱ三日で到着出来るという魅力には勝てなかったのだが、もちろん体調面で問題ないからというのが一番の理由だ。
それがなければ無理に進もうとはしなかった。
そしてその体調面を支えている一番の要因は、きっと料理に違いない。
「ああ、それは間違いない」
「ダンジョンでしっかりした料理を食べられるのは大きいよね」
ガイツの言葉に、ジンも同意するように頷いている。
これが味気ない保存食だったら、間違いなくこの辺りで引き返していたと主張した。
「残念なのは酒を飲めないことだな」
サイフォンのその発言に、ユーノが静かに微笑みを浮かべていた。
目は笑っていなかったけど。
保存食は一応栄養を考えて作られているけど、満たされることはないからな。
少なくとも腹いっぱいあれを食べようとは思えない。
それにダンジョン内は基本的に一定の気温が保たれているから寒さを感じないが、やはり温かいスープとかを飲むと違うんだよな。
「それじゃ今日は俺たちが先に見張りをするからよ。嬢ちゃんたちは先に休みな」
食事を終えたら交代で休むのがいつもの日課だ。
組む人はその日ごと違うが、だいたい斥候の出来る俺たち四人……ヒカリ、ルリカ、オルガを中心に誰が組むかを決めている。
またその日のうちに、何人かは見張りをしないで一晩休めるようにもしている。
やはり睡眠時間をしっかり取ることは大事だからだ。
その点はゴーレムたちのお陰だが、あとはミアの力も大きい。
休む前にミアが聖域……魔物除けの魔法を使ってくれるから、不思議と休憩中は魔物に襲われる頻度が少なかったりするからだ。
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