第464話 マジョリカダンジョン 依頼・2
料理を基本的に教えるのは、俺とミアとクリスとルリカの四人になる。
ちなみにヒカリとセラは俺とルリカの補助に入ってくれている。
それぞれが肉系料理とスープを作るのだが、焼くと煮るだけなので基本的に調味料の使い方になる。
調味料は食料品店に元々売っている複数の調味料をその場で混ぜて、料理に使って味を確かめてもらうことにした。
ルリカたちは出会った時から複数の調味料を使い分けて料理をしていたが、冒険者の中でそんなことをする人は正直言って稀だ。
その事情の一つとして魔法を使える者が……正確に言うと水系の魔法や生活魔法を使える人が少ないことがあげられる。
スープを作るには水も必要になるし、お皿などを使ったら洗う必要もある。
依頼で何日も町の外で生活する時は飲むための水も必要になってきたりと、本当に水は貴重らしい。
洗浄魔法欲しさに生活魔法を覚えた俺は、ある意味運が良かったといえる。
あとはウォーキングで魔物を倒さなくてもレベルが上がって、MPが上がって魔法の使用回数に余裕が出来たのも大きかったんだと思う。
とはいえここに集まるのは魔法学園の生徒たち。魔法を使える人は多い。
「あ、あの。調味料一つでそんなに変わるものですか?」
「うん、全然違う。この二つの肉を食べ比べるといい」
質問してきた生徒に、ヒカリが料理を渡している。
学園の生徒は基本寮暮らしで食事は職員の人が作ってくれるから自炊する人は殆どいないそうだ。
施設の整った家の中と外とでは違いはあるが、それでもやっている人とやっていない人とでは差が出ると思う。
ヒカリから料理を渡された人たちは食べ比べをして驚いている。
「お、美味しい」
「う、うん。同じ肉とは思えない。本当にこれ、両方ともウルフの肉なのかい?」
「そう。あと焼き方で違いも出る」
ヒカリはちょっと得意げに肉の焼き方について説明している。
変な調味料の使い方をしなければ、ヒカリの作る料理も美味しい。特に肉料理に関しては、焼き方も上手でミアたちも絶賛している。うん、混ぜるな危険をしっかり守れれば、もう何も言うことはない。
「スープも基本的に調味料を入れてから、カットした野菜を煮込むだけでも一味変わるよ。調味料の組み合わせ次第で色々な味も出せるし。あとは保存食を水に溶いてスープにするのはありかな?」
「保存食を、ですか?」
言いたいことは分かる。あの保存食をと聞くと抵抗があるのは無理はない。
「普通に売っているものの中にはスープにすると相性が合う奴もあるよ。もちろんそのままだと味はイマイチだから、調味料で調整する必要はあるけどね」
なんて偉そうなことを言っているが、全て料理スキルのお陰です、ハイ。
俺は野菜スープと保存食で作ったスープをそれぞれ渡して反応を見たが、概ね好評なようだ。
「けど料理をするための火を維持するとなると燃料が必要になりますよね?」
雑貨屋に旅用の燃料みたいなものは確かに売っている。
木材もあるが、それとは別に持ち運びしやすく軽量で長持ちのものがある。ちょっと高いけど。
「迷宮階では確かにそれを使うのが一般的になるかもだが、例えばこの階なら木を拾うことが出来るからそれを利用すればいいよ。地面に落ちているし、なければ枝を切ってやればいい。専用の枝伐採用の鉈や斧があればやりやすいかな」
剣で出来ないこともないが、あとの整備が面倒そうだからお勧めは出来ない。
それぞれが食事を済ませたら、休憩しながら薬草の見極め方の復習をする。
ただこれは冒険者コースなるものの授業で習っているから別に必要ないが、俺が教えるのは品質の良い物とそうでない物の見分け方だ。
薬草、魔力草、活力草をそれぞれ二種類渡しながら口頭で説明する。
ある意味これの説明するためにこの世界に来て一番頭を使ったのかもしれないと思った。
「薬草の品質は分かりましたが、これによってどう違いが生まれるんですか?」
「一つはポーションの品質……効果に影響してくる。品質の悪い薬草では、どんなに腕のよい錬金術士でも高品質のポーションを作ることは出来ないのが特徴かな? あとはポーションの成功率に関係してくるけど、手作業で作る場合はどうなるかは俺はやったことがないから分からないかな」
ポーションの作り方も錬金術による魔法で作る方法と、すり鉢などで薬草をすり潰して手作業で作る方法がある。
そちらはやったことがないため、どう関係しているか正直分からない。
学園でも錬金術の魔法を使えるのはほんの一握りなため、手作業でポーションを作製しているとのことだ。
「ま、まあ。冒険者ギルドに納品する場合は、品質の良い薬草の方が高く買取ってもらえるし、評価点も高くなるから、持てる荷物の量に制限があるなら品質の良い奴を集めた方がいいと思うぞ」
俺たちはその後レイラたちに先導されて草原エリアの方でみつけた群生地で薬草を採取することになった。
ここで二日ほど野営をして、その後森の中の群生地に向かいそのまま六階への階段を目指す流れになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます