第463話 マジョリカダンジョン 依頼・1
「今日はよろしくお願いしますわ」
ダンジョン前にはブラッディーローズの面々の他に金貨千枚などの顔見知りもいれば、まったく初めて会う人たちもいた。
その数は三〇人を超えている。
「これでも少なくした方ですわ。私たちが色々習って、また他の人たちに教えていくみたいな感じでやるつもりですの。私も残り少ないですが、協力していく予定ですわ」
レイラは学園を卒業したら、首都マヒアに行くという話を聞いている。
母親の仕事を手伝うためだそうだ。詳しくは教えてくれなかったけど。
「とりあえず薬草の群生地から探すのを始めよう。森の中に比較的多かったりするけど、場所によっては草原にも普通にある。森での戦闘に慣れてなければ最初は草原で薬草採取をした方がいいと思う」
これは主に二五階を体験したことのない人たちに向けて言っている。
あそこを体験したら森での戦闘は嫌でも覚えることになるからな。
とりあえず俺たちにブラッディローズと金貨千枚の三組をリーダーにして六組に別れて薬草の群生地を探すことになった。
薬草の採取の仕方を教えるにしても、まずは採取出来る場所を発見する必要があるから手分けすることになったのだ。
俺たちは森の中を探索するため、六人の学生と一緒に行動している。
正直初対面だから緊張していると思ったが、緊張しているのは男子生徒三人だけで、女子生徒三人は楽し気にルリカたちに話し掛けている。
冒険者としてどうやって活動しているかなどの声が聞こえるが……他にも色々話しているようだ。
俺が入るのは危険だと思い、MAPに目をやりながら魔物の位置を確認する。
魔物は六階の階段のある近くに多くいるみたいで、この辺り周辺には少ない。
ただ安全を確保するためにも、近くにいる魔物は狩っておいた方がいいと思う。
「とりあえず向こうの方に進めば魔物がいるがどうする?」
俺が方向を指して尋ねたら首を傾げられた。
なんかキョトンとしている子もいる。
「ソラ、たぶんレイラが最初にソラのことを行商人って紹介したから戸惑っているんだと思う」
反応がなくて俺が戸惑っているとミアがそんなことを言っていた。
いや、行商人でも探せば探索スキルとか使える人とかいると思うよ?
俺は仕方なく探索スキルのお陰で駆け出しの頃魔物を回避して街道を安全に進めたというエピソードを話ながら、とりあえず魔物のいる方に移動した。
そして信じていなかったのか、それとも魔物に対して緊張していたのか、本当に魔物がいると知って驚いていた。
「ウルフが五体か……戦えるか?」
尋ねたら返事がない。緊張しすぎではないか?
木の影から覗いているのと、距離が離れているからまだウルフはこちらに気付いていないようだが、このまま時間を費やすといずれ気付かれてしまうかもしれない。
「とりあえず私たちで四体倒すわ。残り一体は貴方たちに任せるわ。ミア、補助をお願いね」
ルリカがセラとヒカリに目配せすると、ルリカとセラの二人は大きく迂回して背後に回り込んだ。
ヒカリは一人木の上に飛び乗り、木を伝って近くまで接近していく。
「大丈夫ですよ。木が邪魔かもしれませんが、皆さんは既にウルフと戦ったことがあるのでしょう? なら普段通り戦えば大丈夫ですよ」
クリスが緊張する生徒たちに話し掛け、ミアはプロテクションを使っている。
男子生徒はボーしていたが、女子生徒に活を入れられて武器の用意をし出した。
「ここだと木が邪魔だから、左前方の少し木の少ないところで戦うよ」
俺は先頭に立って移動すると、盾を持ってウルフに見えるように姿を現した。
距離が離れていたが、挑発を使ったお陰かウルフはこちらを向いて向かってくる。
木の間を縫うように走るウルフだったが、俺たちのいる場所に到着出来たのは一体だけだった。
途中気付かれずにルリカたちの手によって仕留められたからだ。
「それじゃ後を頼んだぞ」
背後に控えてた生徒たちと立ち位置を変えて後方に下がった。
何かあってもいいようにシールドの魔法だけ準備をする。
元々ウルフとの戦闘経験はあるみたいだが、やはりダンジョンの通路とこの階とでは違うのか、動きがぎこちない。
比較的開いた場所とはいえ、木があって剣を振るうには邪魔だし、地面に走る木の根も動きを阻害する。
その中で動けたのは盾を持つ少年と、武闘家のような戦闘スタイルの少女だった。
魔法使いの子は接近されると味方への被弾が怖いのか結局オロオロするだけで何も出来なかったようだ。
「お疲れ様。まあ、森の中での戦闘は慣れだからね。今回はソラがそれでも戦いやすい場所に誘導してくれたけど、自分たちだけで戦う時はそれもやらないとだからね」
地面に座り込む生徒たちに、今回の探索で覚えればいいよと声を掛けている。
その後森の中を探索したがちょっとした採取場所は見つけられたが、皆が採れるような場所ではなかった。
結局レイラたちが森の中で見つけたという連絡があったため、一度別れた場所で集合してから向かうことになった。
「その前に食事にしましょうか。ソラ、それではお願いしますわ」
一応今回の探索で薬草採取だけでなく、料理の体験もさせたいということだったので、俺たちは調理器具をアイテムボックスから出しながら準備をするのだった。
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