第461話 お誘い
ダンジョンの資料室で三十五階のことを調べていたある日。レイラが家に訪れてきた。
「五階と十五階のガイドを?」
「はいですの。ソラは薬草採取やら鉱石の採掘とか得意ではないですか。それを学園の生徒に教えて欲しいのですわ」
いや、それは鑑定があるからで、別に得意というわけではないのですが……。
そこはクリスに頼ることになるかもしれないが、俺も時間があればギルドの資料室で復習しておこう……いや、アイテムボックスを確認すれば薬草が入っているかもしれない。実物を見て勉強する方がいいに違いない。
この世界の資料は写真とかではなくて、手書きであるから分かりづらいところがあったりする。
一応専門家が作っているけど、資料を作った人次第で微妙な違いがあったりするみたいだからな。そもそも全ての薬草に同じ特徴があるかも怪しい。
レイラの話によると、学園の生徒のレベルは年々上がってきているが、レイラたちが巻き込まれた件もあって、浅い階で活動出来るように、色々と試しているそうだ。
その際たるものが五階と十五階の活動とのことだ。
薬草なら学園でも買取を行っているし、ポーションの作製を学んでいる人たちの練習にもなるし、出来たポーションを学生の皆に安く売ることも出来る。
鉱石の採掘に関しては鉱夫の護衛や、鉱夫に採掘方法を教わりながら学ぶことを目的としているそうだ。
それなら十五階はあまり俺関係なくない? と思うが、是非にとのことだ。
ちなみ食材をたくさん持っていってもらいたいとのことだから、もしかして俺、料理要員として呼ばれてるのかもしれないと思った。
「まあ、いいんじゃないか? ダンジョン攻略も大切だが、息抜きは必要だと思うし」
「そうね。私も賛成かな。それにこれから先ポーションとか必要になると思うし、皆で採りに行くのはありだと思う。ね、ヒカリちゃん」
「うん、ついでに木の実や果実も採る」
サイフォンをはじめ、ミアやヒカリも賛成みたいだ。
ただしサイフォンたちは別の用事があるから、俺たちだけで行ってみてはということだった。
俺は相談した結果をレイラに話すと、レイラは嬉しそうに帰って行った。
「あの、ソラちょっといいですか?」
その夜ゆっくりしていたらクリスが困った表情を浮かべて話し掛けてきた。
どうやらモリガンとスイレンと通信機で話をしていて、エリルの住人の希望する人たちをマジョリカに運んで欲しいと俺に頼んでくれと言われたそうだ。
「何でまたその話が?」
「黒い森で戦っていたのもあって、戦いの技術を生かしたいって人は結構いるみたいなんです。それで私たちがダンジョンに行っていることを聞いて、興味を持ったみたいです」
「あとは魔法学園とかに通いたい子たちもいるって言ってたさ」
セラも一緒に話を聞いていたみたいで、そんなことを言ってきた。
「それにほら、エルザとアルトのこともあるし私はいいと思う。二人はもしかしたら嫌がるかもしれないけど、知り合いと一緒に暮らしてくれれば私たちも安心出来ると思うから」
「……それで何人くらいがこっちに来たいって言っているんだ?」
ルリカの言葉に俺は少し考えて、三人に尋ねた。
この家も一般的な家庭と比べたら広いが、さすがにこれ以上の人を住まわせることは不可能だ。
「一応いくつかの家族が希望していて……三〇人ぐらいって言ってました」
「住む家に希望はあるのか?」
「共同でもいいようなことを言ってました。そこを拠点にしてあとは稼ぎ次第で自分たちで家を買うかどうかを決めるそうです」
それならその準備もする必要があるのか……。
なんか急に忙しくなったような気がするけど、自分たちで見て決めなくていいのだろうか?
「寝る場所とご飯が食べられる場所があれば特に気にしないみたいです」
クリスに確認したら、かなり緩い条件を言われた。欲がないというかなんというか……。
レイラは明日には予定を教えてくれるという話だったが、その対応は誰かに任せてまずは家を探しに商業ギルドに行くか?
その後誰が残るかを相談したら、サイフォンとユーノが残って対応することになった。
俺たちの方で誰か残るぐらいなら、皆で出掛けた方がいいと気を遣われたようだ。
エルザとアルトも一緒に連れていってやりなとも言われた。
サイフォンたちの用事にリーダーが行かなくて良いのか聞いたら、
「ジンに任せていいし。それにレイラが一人で来た場合、異性と一対一で会うと色々と問題が起きるかもしれないからな」
とサイフォンは言った。
本当に気が利くところがあると思う。
本来ならケーシーが一緒についてきそうなものだけど、学園の方が色々と忙しいみたいで今日もレイラ一人で来てたから。
「それじゃ明日は頼むよ。ヒカリ、二人にも明日出掛けるから付いてきてくれって伝えてもらっていいか? その時はメイド服じゃなくて、前買い物の時に買った服に着替えて出掛けるようにともな」
俺の言葉にコクリとヒカリは頷くと、エルザたちの部屋へと伝言をしに行ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます