第460話 マジョリカダンジョン 34F・2

 ゴーレムとジャイアントの戦いは、最初は押され気味の人型ゴーレムだったが、戦いを繰り返すうちに学習していき守備に関しては文句がないほど完璧に仕上がった。

 いくつか装備を変更する必要があったけど。

 犬型ゴーレムに関しては、相性が悪いようで攻撃が通らないから今回は召喚を控えることに。機動力が必要な時は呼び出すかもしれないということにした。

 あとは人が多いから目立つというのもある。

 人型ゴーレムは服を着せて騎士のような顔も覆うフルフェイス型の兜を被っているから一見するとゴーレムには見えない仕様になっている。

 ちょっと背が高いというのがあるかもしれないけど……うん、いなくはないはずだ。逆に装備が目立つかも説はあるかもだけど。

 冒険者らしかぬ装備と言われるとそうかもしれないと思う。冒険者はどちらかというと速度重視の装備を好むからね。軽くて丈夫な装備とか。

 それから他にやったことといえば解体だ。

 これは体の何処に魔石があるかを調べるためだ。


「僕の力じゃサイフォンやセラちゃんみたいに一撃で倒せないから、最悪魔石を狙って倒すという選択もしないと駄目かな」


 とジンが言ったからだ。

 魔石は魔物にとっての心臓だから、それを破壊するか首を刈るかが魔物を早く倒すコツだ。

 魔物もそれが分かっているからその辺りのガードは堅い。

 一般的には大きな傷を負わせて出血多量などで殺す方法もある。


「ちょっとオークと比べると首に近い場所にある感じですね」

「背が高いからそれを考えると狙い難いかもだね」


 ルリカも真剣に解体をしながら魔石の位置を確認していたが、首元にある魔石を破壊するには飛び上がって攻撃する必要があることが分かった。


「クリスにセラ、頼んだわ」


 とそれを見たルリカはクリスとセラに頼んでいた。

 飛び上がるとその分隙が出来るからそれは仕方ないと思う。

 確実に一撃で仕留められるなら仕掛けるのもありかもと思うかもしれないが、リスクを考えるとやらない方がいいと俺は個人的に思う。

 俺も一応魔石の位置は確認したが、それはゴーレムに学習させるためだ。


「今使っている槍が駄目そうなら新しく買い換えないといけないかな」


 最悪自作するのもありだと思うが、武器に魔力自体を付与することが出来ればとふと思った。

 いわゆる魔力を籠めた武器を扱えるようにしたいという意図だが、付与術だと魔法は付与出来るが魔力の付与することが出来ないんだよな。

 時間がある時に出来そうなスキルがあるかちょっと調べておくか。

 これがあれば魔力の少ないセラの武器に、予め魔力を付与しておけばそれだけで攻撃力が上がるかもしれない。

 それを考えると、もっと早くに調べておけばと思った。



「なんか魔物と遭遇する率が下がってきたね。反応もないし」

「うん、いない」


 両隣を歩くルリカとヒカリが歩きながらそんな会話をしている。

 現在俺とルリカとヒカリの三人が先頭に歩き、最後列をガイツとジンとオルガが歩いている。

 中央に魔法職三人が並び、セラとサイフォンが前後どちらにでも援護に行けるように配置されている。

 ゴーレムは十分戦闘経験を積めたから、話し合いの結果ゴーレム核に戻した。

 俺たちもジャイアントと戦ってしっかり経験を積みたいというのもあった。

 階段近くに魔物が少ないのは、狩りをしている人が多いからのようだ。

 少なくとも一三の集団がそれぞれ狩をしている。


「やっぱ慣れるために戦っている人が多いのかな?」

「そうかもね。一つの集団あたりの人数が四人から六人前後だから、少人数で倒せるように訓練してるのかもね」


 遠目で狩りをしている人たちを見ながら思わず呟いたら、ルリカが意見を言ってきた。

 ただすぐ近くに他の集団がいるから、危なくなったら駆け付けることが出来るようにしているのかもしれない。

 連絡はダンジョンカードの通信機能で離れていても取り合うことは可能だから、それを利用しているんだと思う。


「それで明日には階段に到着出来そうなんだろう? ちょっと三五階を覗いてから帰るか?」


 夕食を食べている時サイフォンが皆に聞いた結果。少しだけ見て行こうということになった。

 次のフィールドは二五階と同じ森フィールドだったからな。

 二五階は昼はオーク。夜はアンデッドだから休む暇がなかったが、今度は木に擬態するトレントが出てくるからそれはそれで辛いかもしれない。

 MAPと気配察知もしくは魔力察知で索敵出来ればいいがこればかりは行ってみないと分からないからな。

 その後三五階に到着して様子見で下りてみたが、霧が出ていて視界が悪かった。

 あとはMAPを使って索敵したが、索敵できる範囲がいつもよりも狭い。

 それと気配察知で一種類、魔力察知で一種類の計二種類の異なる反応しかなかった。

 資料ではトレントとサイレントキラービーが紹介されていたから、それを考えれば合っているのか?


「この霧は厄介かもしれないな」

「ああ、それに魔物の気配が希薄で探り辛いな」

「帰って資料を読み返してみよう。何か対策があるのかもしれないしね」


 サイフォン、オルガ、ジンが今後の方針を話し合っている。

 俺もそれには同意見だから、ギルドの資料室で確認だな。

 

 

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