第459話 マジョリカダンジョン 34F・1
三四階に下りてまず思ったことは、予想以上に人の反応が多いということ。
ここに出る魔物はジャイアント。身の丈三メートルを超す巨体で、横幅も二メートル近くある。
力は強いが俊敏さがないのが特徴だが、それはあくまで力に比べてという注意書きがつく。
あとは体力があるため持久戦を強いられることが多い。
ちなみにこの階に人が多いのは、三六階からはジャイアントが複数出るためここで戦い方を研修しているそうだ。
あとは倒し方の最適解を見つけて、複数相手でも素早く倒せるようにすることが主目的みたいだ。
「まずは余裕を持って倒せるかどうかだな。一応ガイツとソラには盾で攻撃を受けられるかも試してもらいたい。上段からの振り下ろしでためす訳にはいかないから、どうにか横からの振り回しで攻撃させるように俺たちが誘導する」
サイフォンの言葉に俺は緊張しながら頷いた。
【守護の剣】の盾士はその一撃に耐えることが出来たということを聞いている以上、攻撃を受け止めることは可能だと思う。
「ソラ、私もプロテクションをかけるけど、あまり無理をしないでね」
「ああ、大丈夫だよ。一応力自慢の奴らとは今までも戦ったことがあるから」
せめてミノタウロスとかと比べてどれぐらいの力強さとか分かればいいけど、そういう比較表みたいなのはないからな。
ある意味俺たちみたいに、色々な魔物と戦っている奴ってのは、意外と少ないのかもしれない。
黒い森で戦っていた猛者なら別だが、一つのダンジョンに籠っていればそのダンジョンの魔物としか戦うことはないだろうからな。
一応痛覚軽減もあるし、その辺りは大丈夫だと信じたい。
「それじゃガイツさん。まずは俺から行かせてください」
ガイツは渋ったが、今回は俺から戦わせてもらった。
ヒカリとルリカが連携して翻弄し、ジャイアントを上手く誘導している。
ヒカリの短剣による攻撃は相性が悪そうだが、ルリカが剣を振るうごとに次々と傷を生んでいく。
機動力を失わせようと、足を重点的に攻撃している。
そしてそれを振り払うため攻撃してきたところに、俺は飛び込んで盾を構えた。
今回は新しく買った奴ではなく、元々使っていた防御重視の頑丈な奴だ。
ジャイアントの攻撃を受けた俺は、衝撃で足が浮きそうになったが踏ん張ることは出来た。
確かに勢いがあったが、耐えることは出来た。
最初は回り込むために重心をしっかり落としていなかったが、それに注意して攻撃を受け止めたら体がブレることもなく安全に受けられた。
これはステータスのためか、それともスキルのお陰かは分からないが、俺でも十分盾士として役立つことが分かった。
その後ガイツも試したが、さすが盾の扱い方が上手く安定している。
少し体勢がずれたりすると、それこそ盾を上手く動かして力を殺すように受け流している。
それは防ぐだけでなく、味方の攻撃を有利にするためのもので、ジャイアントの体が流れたところをサイフォンが一刀両断していた。
「やっぱ硬いな。オルガは矢で攻撃するなら目を狙った方が良さそうだ」
「ヒカリちゃんも短剣だと麻痺を優先させる方がいいかもね」
サイフォンはオルガに、ルリカはヒカリとそれぞれ戦い方について相談している。
「それじゃ次は魔法を試してみるか?」
「ソラの言う通り何の魔法が有効的かを確認していくか。この際素材は諦めて倒すこと優先でいこう」
複数の魔物を一斉に叩くならやはり魔法による範囲攻撃が一番友好的だ。
これは今後は出る魔物ごとに試していく必要がある。
魔法使いはどうしても個人差があるため、資料にどの属性が苦手というのがなかなか載らなかったりする。
アンデッドなら聖属性と光属性とか、あとはだいたい火魔法が効くとかが多い。
そこには火魔法が一番威力があることと、複数属性を使える人でも火を多用する人が多いのもある。
「ミア、今度はプロテクションなしで戦いたいから一度だけ補助をしないでもらってもいいか?」
「……大丈夫なの?」
「そこはやってみないとだけど、出来るだけ攻撃を受け流すように頑張るよ」
次の魔物を探して戦ってみたところ、
「やっぱプロテクションがあると感じる衝撃が違うかな。次からはまた頼むよ」
ということが分かったからミアにお願いした。
それを聞いたミアはちょっと嬉しそうだったけど、それは頼られたからだろうか?
「クリスの嬢ちゃんの精霊魔法はちょっと威力が強過ぎだから、他の面々が近くにいる時は範囲を絞って使ってもらってもいいか?」
そう言われているクリスのいる方を見れば、見るも無残な姿になってたジャイアントがいた。
調べたところ魔石も完全に壊れていた。
この階までは精霊魔法を特に使っていなかったし、エリアナの力で強化されているというのもあったと思う。
「次はゴーレムたちで倒せるか試してみたいし、クリスも練習してみるか?」
俺の言葉にクリスはちょっと申し訳なさそうに頷くのだった。
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