第458話 マジョリカダンジョン 33F
この階はオークの魔物が出現する。
オーク肉は人気があるし、魔石の質も普通よりも上の水準だから本来なら人気の狩場になってもおかしくないとは思う。
ただマジョリカダンジョンにおいては、そうでもない。
まず第一にアクセスが悪いということと、第二に高望みをしなければ二五階で狩ればいいんじゃないかという考えがあるからだ。
オーク肉でもメイジやウォーリアー、さらにはジェネラルなどは普通のオークよりも確かに美味しいが、持ち帰るのが大変だという問題がある。
少なくともマジック袋を持ってないと、肉の鮮度を保てないのだ。
もちろんアイテム袋でも持ち運びは出来るが、後者の場合は劣化を防ぐ機能が付いていないから、肉を解体してブロックごとに保存する必要があるから手間なのだ。
逆に言うとここの狩場を利用するのは、階の移動を苦にしない人や、マジック袋持ちとか空間魔法の使い手がいる可能性が高いのではと噂される。
ちなみ俺たちの場合はマジック袋を持っているという認識をされている。
一応俺、行商人だからな……。
「ここまで来るとオークもかなり強化されてる感じだな。ただコボルトの時と違って数が少ないし逆に狩りやすいかもしれないな」
「ああ、単純に攻めてくる相手が多い」
サイフォンの言葉に、ガイツが頷いている。
オークは力自慢ということもあって、戦略とか関係なく突撃してくる奴が多い。
例外は集団の中にジェネラルがいた場合で、ジェネラルがいると軍隊さながらの動きをしてくる。
そのため率先してジェネラルを狙うと、集団の足並みが乱れてもう烏合の衆と化す。
その点はオルガの弓矢による攻撃が光る。
魔法と違って派手さはないが、気配を消してからの攻撃コンボはジェネラルやメイジを何体も倒していた。
「スキルを使っているわけじゃないのに凄いよな」
「その点は出来ることを探した結果かな。俺はあいつらみたいに何か秀でているわけじゃないからな」
「けどその方が凄いかも。私は剣しか使えなかったし」
俺の言葉にオルガは謙遜するが、ルリカもオルガのことを褒めている。
ルリカは剣しか使えないというけど、セラもそうだけど、両手に武器を持ってそれを同時に扱うのも十分凄いと思う。
俺は並列思考を使えば辛うじて出来るレベルだ。
そうすると他に費やす余裕がなくなるんだよな。
俺はオークを回収すると、MAPを再度確認する。
オークは罠の反応がある場所を避けているのか、罠の近くには魔物の反応はない。
俺たちとしてはその方が戦いやすいから助かる。
「主、オークいる?」
「ああ、ヒカリの言う通りいるぞ」
「……少ない?」
ヒカリの言う通り、今こちらに向かってきているオークは三体と少ない。
ただ魔力察知の反応は強いからメイジかジェネラルの可能性が高い。
「メイジだ!」
ガイツの言う通り、T字路の右側から姿を現したのは三体のオークメイジだ。
しかも既に魔法の準備が整っているのか、こちらを見るなり魔法を放ってきた。
俺が前に出る前にガイツが最前列に立ち盾を構えると、オーラシールドを使用した。
オーラーシールドは半円のドーム状のシールドを展開して皆を守るスキルだ。
魔法がシールドに衝突すると爆発音が鳴ったが、こちらには一切被害がない。
メイジたちは次の魔法の準備に入ったが、次の瞬間眉間にそれぞれ矢を受けて倒れた。
ガイツが魔法を防ぐ影で、オルガが矢を速射していたのだ。
その見事なコンビネーションにヒカリとルリカが目を輝かせて見ていた。
「しかしこの辺りの階まで来ると広くてたまらないな」
「結構面倒だよね。下に行くほどダンジョンの通路の幅も広くなっているから、複数の魔物と同時に戦わないといけないし」
サイフォンが休憩中愚痴を零せば、ジンも同じように愚痴を零している。サイフォンはある意味いつも通りだが、ジンは珍しい。
三六階からは巨人系の魔物が出て来るから、まるでそれに合わせているようにダンジョンの通路の幅が広がっていったんじゃないかと言う人も近頃いると聞いた。
「ま、先のことを今考えても仕方ない。まずは三五階。そして四〇階のボスを倒すことを考えようぜ」
それはサイフォンの言う通りだ。
それから俺たちは一週間かけて三三階のフロアを歩き、三四階への階段に到着した。
今回は入口と出口の階段の位置が端から端だったため、到着するまでに時間がかかってしまったのだ。
あとは毎回ではないが、時々進む道が迷路のように複雑になっている階があるため、魔物とは遭遇しないのにそれだけで時間がかかる時がある。
俺は別に歩くだけだから問題ないが、やはり緊張したダンジョン内をただ歩くというのは神経を使うから心身ともに疲れるみたいだ。
「とりあえず三四階に下りる前に今日は休もう。この辺りには魔物もいないことだし」
今回は野営地周辺に魔物除けのアイテムを使用し、あとはシールドを張って見張りはゴーレムたちに任せることにした。
一応並列思考を使って魔物の襲撃に備えたが、その日は襲撃にあうことなく、皆ゆっくり休むことが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます