第457話 マジョリカダンジョン 32F
階段を下りてMAPを確認したが、人の反応は少ない。
ただし魔物の数も三一階と比べると少ない感じだ。
ちょうどここを通って三三階を目指す人がいたのかもしれない。
このところ大手クランの二軍、三軍にあたるPTも四〇階を目指して移動しているという話だ。
そこには四一階以降の攻略で、人手が必要になっているという事情があるそうだ。
現在【守護の剣】は四二階まで進んだような話を聞いた。
ただそこから先がきついため、一緒に攻略できる人数を増やすためクランメンバーを鍛えているということだった。
それを聞いたいくつかのクランもそれを聞いて同じようにしているみたいだ。
だから今は階の更新を目指すギルドと、一五階で鉱石を稼ごうとしているギルドとで大きく分かれているようだ。
クランに所属していない冒険者の主要狩場としているのは二五階が人気らしい。
あそこはある意味魔物が固定湧きするから魔物を探す手間が省けるという利点がある。
あとは帰還石がなくてもダンジョンから脱出しやすいというのもあるのだろう。
「それを考えるとこの人数だと辛いのか?」
四〇階以降の話を聞いて思うわけだが、
「まあ行ってみて無理ならその時考えればいいんじゃないか? 最奥を目指しているって話だが、ソラのスキルがあれば魔物と戦わなくてもいける可能性はあるんだろ? 問題はボスを倒せるかどうかだが、そこは先行組の情報に期待だな」
サイフォンの言う通り、ボス部屋の魔物は何が出るかが分かっていた方が対策をたてることが出来る。
だから最初に入る人たちは何が出てもいいように準備する必要があるから、実際に攻略するまで準備に時間がかかる。四〇階のボス攻略がいい例だ。
それにはボス部屋がやり直しが効かないという事情がある。
ただし完全な手探りではないようで、だいたい四〇階なら、三一階から三九階に出た魔物の中から出る傾向があるのではと想定して準備をしたそうだ。
もっとも今回それが当たったのは巨人族という種族だけで、取り巻きがジャイアントエリートで、ボスがギガンテスだったようだ。
「先のことはあとで話すとして、まずは先に進まないかい?」
ジンのその言葉に、俺とサイフォンは頷きダンジョン探索を開始する。
コボルトに関しては、ボス部屋で戦った中ではコボルトガードに手を焼いたことを思い出す。
ただ今回は人数が増えたこともあって、三〇体近いコボルトの集団と遭遇しても手間取ることなく倒すことが出来た。
サイフォンとジンが加わったことで近接組の厚みは増したし、ゴーレムがいるから俺も積極的に前に出ることが出来た。
あとはミアとクリスが魔法の盾で自衛出来るというのも大きい。
ユーノにも同じような盾を渡してあるが、現在使い方を練習中だ。
ミアとクリス曰く、魔力の流し方の筋はいいという話だ。
とくにミアはちょっと涙目になっていた。自分はあんなに苦労したのにって……。
「ちょこまかと面倒だな。正直素早い敵は苦手だ」
「私はむしろその方が戦いやすいかな。あとコボルトは皮膚が厚くないから武器の通りがいいし」
「うん、そのままシュパシュパ出来る」
サイフォンが額の汗を拭きながら愚痴を言ったが、ルリカとヒカリは逆の意見のようだ。
特にヒカリは主要武器が短剣だから、肉厚の魔物の方が苦手としている。
それでも普通の短剣を使う人に比べると、ミスリルの素材だし、魔力を流すことが出来るから切り裂くことが出来るわけだが、短剣は刀身が短いというのがあるからな。
「いっそ少し刀身を長くしてみるか? ちょっと扱いが難しくなるかもだけど」
刀身が長くなればその分重さも変わるし、間合いの取り方も変わる。
武器を本当に変えるなら慣らす必要がある。
この辺りは帰ったらヒカリに相談するのもいいかもしれない。
出会った頃と比べると体も成長して大きくなっているから。
「とりあえずご飯にするか? この辺りの魔物は全部倒せたみたいだし」
その言葉に異を唱える者はいなかった。
今日の昼食はスープを作って、他は屋台で買った料理で済ますことにした。
これは昨日の夕食時に、サイフォンたちが故郷には全然帰っていないという話を聞き、故郷の味が恋しいという話を聞いたからだ。
もっとも俺たちはサイフォンたちの生まれ故郷には寄っていなかったわけだけど、その料理はたまたま別の町でやっていた屋台で買ってあったから提供出来た。
「ああ、この味だ……懐かしいな」
サイフォンのしみじみとした言葉に、他の四人も頷き黙々と食べている。
サイフォンたちの町も戦争で大打撃を受けたが、復興されて今も存在するということだ。
「サイフォンたちは故郷には戻らないのか?」
「まあ、戻ってもいいんだけどな……」
サイフォンは歯切れ悪く答え、チラリのユーノの方を見た。
あまり聞かない方が良い事情があるのかもしれない。
その後はコボルトを狩りつつダンジョン攻略を進めたわけだが、屋台の料理を出したことで二日に一度は屋台の料理を出すことになった。
「それでヒカリの嬢ちゃん。お勧めの料理はあるか?」
だからなのか、ヒカリに屋台のお勧め料理を尋ねるゴブリンの嘆きの面々を良く見掛けるようになった。
料理に関しては、ヒカリに聞いていれば間違いないからね。
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