第456話 マジョリカダンジョン 31F
この階に出現するのはゴブリンたちだ。
もちろんただのゴブリンではなくメイジやアーチャーなどの職業就きのゴブリンたちだ。稀にゴブリンキングも出現するというのを資料で見たことがある。
それなら楽勝だな?
と勘違いする人もいるが、実際にはボス部屋などで出たゴブリンと同じように考えていると痛い目に合う。
違いはゴブリンたちが持つ武器がアップデートされているということと、根本的に個体のレベルが高くなっていることだ。
これは実際に鑑定して確認した。
レベルが上がった影響なのか、戦ってみて思ったことはゴブリンたちが戦略のようなものを見せてきたことだ。
まあ中には何も考えてなくて突撃するやつもいたけど、だいたいのゴブリンたちは連携を見せて攻撃を仕掛けてきた。
「もうあれはファイターじゃなくてガードと名乗ってもいいさ」
「そうね。盾の使い方が上手いよね。アーチャーとメイジをしっかり守っていたし」
戦闘が終了したら、セラとルリカがゴブリンの動きを褒めていた。
「あとは罠に注意」
「ああ、確かにあのゴブリンは罠を利用しようとしていたな」
ヒカリの言葉に、俺はゴブリンがとった行動を思い出す。
戦況が不利とみた一体が、罠のある方に突然走り出したのだ。
今回は罠が発動される前にクリスが魔法で仕留めてくれたから被害はなかったが、発動していたら何が起こっていたか分からない。
なんか以前罠を利用してきたコボルトシーフのことをふと思い出した。
次の階はコボルトたちが出るから、また会うことがあるかもしれない。
資料にはあまりシーフは出ないということだったが、いないとは言ってないからな。
「まあ、これからも油断せずに行こう。ここの狩場は人が少ない分、魔物が多くいるかもしれないからな」
階層によって人気不人気はどうしてもある。
特にゴブリンは素材が手に入らないから、稼ぎが悪く敬遠されがちだ。
一応ダンジョンを脱出するために戻る時にこの階に寄ることはあるが、ここを狩場の主戦場にする者はいない。
「やっぱ素材が手に入らないと、魔石の質が多少上がっただけじゃ誰も相手にしないよな」
「ゴブリンだしな。金を稼ぐだけなら、もっと上層階でも割のいい依頼はあるみたいだしな。一五階だったか? あそこの護衛なんか結構人気みたいだぞ」
ミスリルを採れるから人気なんだよな。
近頃は大手クランが独自に採掘をし始めたようなことを言っていた。
その辺りは特に規制がある訳じゃないから、国や領主としても止められないだろう。
ただ利益が出るかどうかは、優秀な鉱夫を雇えるか次第だと思う。
それもかなりの人数を用意しないとだし、数が増えるほど護衛をするにも人数を裂く必要がある。
それを思うと赤字になりそうなもんだが、それだけミスリルは魅力的なのかもしれない。
「それならボス部屋の宝箱で一攫千金を狙った方がまだ金は貯められそうだけどな」
「君がそれを言うかいサイフォン。僕たちが今まで手に入れたものを言ってみるといいよ」
サイフォンの言葉にジンが呆れた調子でサイフォンに物申していた。
サッと目を逸らしたところから、あまり良いものを手に入れたことがないようだ。
「正直お金になりそうなのは帰還石ですからね」
「ああ、自分たち用に取っておきたいから売る訳にはいかない。だから稼ぎはほぼない」
ユーノの言葉にガイツがお金が貯まらない事情を教えてくれた。
それでも俺たちと一緒に住むことで宿代が減ったし、何よりサイフォンの飲む酒の量が減ったから助かっているとのことだった。
「酒はよ。情報を入手するためには必要なツールなんだぜ? 飲みながら有益な情報を交換したりよう」
「ふふ、なら今度一人で行って来たらいいんじゃないですか?」
サイフォンが必死に必要性を主張していたが、笑顔のユーノの前に撃沈されていた。
自分で稼いだお金で飲むなら別に俺はいいと思うが……。
ふとギルドでバカ騒ぎをしていた人たちのことを思い出した。
俺も一緒したことはあるし、たまにならああいう場所で食べるのも悪くないとあの頃は思ったほどだ。
なら今は? と尋ねられたら、家や屋台で食べる方が落ち着くかな?
むさいおっさんたちと食べるよりもねえ。
それとも俺がお酒を覚えたら、ああいうのも悪くないと思うようになるのだろうか?
「それよりどうする? この調子なら明日にも三二階の階段まで到着出来ると思うけど。予定通り三五階まで進むか?」
「物資に余裕があれば行ってもいいと思うが……大丈夫なんだろう?」
俺はサイフォンに聞かれたから頷いた。
アイテムボックスの中には半年は優に過ごせるだけの食べ物が入っている。
いや、新しい町とか行くとさ。その都度買うから増える一方なんだよ。
ダンジョンに潜っても結構自炊することが多いし。
しかし俺のアイテムボックスの限界は何処なんだろうな。
少なくともレベルが上がってからは、これ以上入らないなんてことはなったことがない。
いつかは把握したいと思う一方で、無限に入れることが出来れば嬉しいなと思う自分がいた。
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