第453話 マジョリカダンジョン・30F
三〇階のボス部屋に出るのはオーク系の魔物だ。
ボスはオークキングかオークロードのどちらか一方が出現するそうだ。
取り巻きはジェネラル、メイジ、アーチャー、ウォーリアーが出て、数の方はその時々で変わるそうだ。
今回はオークキング一体にジェネラル四体、メイジ一〇体、アーチャー一〇体、ウォーリアー三〇体となっている。
それを見てヒカリがちょっとやる気を出している。
オーク系の肉は人気があるから……。
今のアイテムボックス内に入っている魔物の肉と比べるとちょっと見劣りするかもしれないけど。
「主にクリス、ユー姉は火魔法禁止!」
戦い前に念を押されもした。
いや、俺も盾の使い方を練習するから、一応前衛に立って戦いますよ?
後衛陣の護衛は基本ゴーレムに任せることにした。
一応不安だからジンも付いてくれている。
「それじゃ行くか!」
サイフォンが高らかと声を上げた。
気合が入っているな。
まあ、前回のダンジョンでは出番がなかったからな……それを言ったら誰も活躍してなかったんだけど。
戦いはウォーリアーの突進を俺とガイツが盾で止めつつ挑発で注意を引く。
これはシールドマスターを覚えた時に使えるようになった技だ。いわゆる魔物のヘイトを集めて他の者への攻撃を防ぐ。
一気に五体のウォーリアーに囲まれることになるが、ガイツはどっしりと構えてその場でその全ての攻撃をさばいている。
俺はさすがにそこまでの腕がないから盾で攻撃を止めながら剣で反撃を試みる。
あとはその場に留まらないで移動して回避行動をとりつつ威圧を放つ。これで相手の動きを鈍らせて余裕が生まれる。
そんな俺たちに集中するウォーリアーたちを、セラとサイフォンが側面から襲い掛かり蹂躙する。
斥候のオルガは色々な武器を使えるため、今回は弓を使用してメイジを牽制している。
本人はただの器用貧乏なんて言っていたが、その腕は間違いない。速射で三体を瞬く間に倒していた。
四体目はさすがにオークたちも対策をとってきて、ジェネラルがメイジたちの護衛に回った。
ただそれも相手の気を引く作戦で、その間にヒカリとルリカが接近してアーチャーとメイジを攻撃する。
本来ならここで投擲ナイフを使えば安全度は上がるのだろうが、今回は使用しなかった。
素材のことも確かにあったが、それを使わなくても倒せる自信があったというのもある。
一応投擲用のナイフだって消耗品になるわけだから。
戦闘が始まって三十分すれば、オークたちの陣営は最早ボロボロだ。
昔は強く感じたオークだったが、数多くの修羅場をくぐって来た俺たちの敵ではなかったわけだ。
最後はルリカの振るうミスリルの剣がオークキングの首を切り裂き、決着がついた。
その後は遺体を素早くアイテムボックスに回収すると、その頃には宝箱が出現していた。
鑑定をしたところ罠がないためそのまま開けた。
中は帰還石が二つ入っていた。
これから先ダンジョンは広くなっていくから、ある意味一番価値のあるものを手に入れたと言える。
プレケスは一階ごとにワープで戻って来れる仕様になっていたと聞いて、ちょっと羨ましいと思ったほどだ。
ただ一階一階が広いという話だったから、実際どっちがいいかは俺たちがプレケスのダンジョンを体験して時初めて分かることだろう。
「嬢ちゃんたちは強いな。とくにルリカのことは昔を知る分、成長してることが良く分かるよ」
サイフォンとガイツが手放しで褒めると、ルリカはちょっと照れていた。
「ソラは盾を使うなら、剣よりも槍とかの方がいいかもしれないが……まあガイツとはまたタイプが違うし戦いやすい武器がいいのか? やっぱ慣れている方がいいだろうし」
その言葉に俺はちょっと悩んだ。
サイフォンとしては剣の腕を知っているからそう言ってくれているのだろうが、スキルで槍術を習得すればそれなりに槍を使うことが出来るようになるんだよな。
もちろんスキルを習得したからといって、それだけでその武器を完璧に扱えるようになるわけではない。
あくまでスキルは入り口で、それを使いこなすには鍛練は必要だ。
本当は盾士がどんな武器を扱うのか調べられたらいいが、盾士ってあまり冒険者では見掛けないんだよな。
ただ盾を扱う騎士たちは槍を使う人が多かった気がする。向こうは騎乗することを想定しているからというのもあるかもだけど、ダンジョンで見掛けた騎士たちは剣が多かった気もするんだよな。
レイラ経由で領主のウィルに頼めば騎士団の訓練を覗くことは出来るかもだが、それなら【守護の剣】に見学にいった方がいいかもしれない。
「ソラどうしたの?」
「ああ、盾に合う武器って何があるのかなって思って」
ミアが聞いてきたから答えたら、
「聖王国の騎士の人は剣が多かったような気がするな。ただ私がいったのは魔物の討伐だったから、盾は小さめで動きやすさ重視だったみたいだけど」
ミアはその時の討伐は森の中だったと言った。
俺はそれを聞いて、今使用している盾を見た。
今使っているのは幅広の大きめと盾だ。重量もあって素早く動くに向いていない。
その分オーガなどの力のある魔物の攻撃を受けてもビクともしないはずだ。
俺は重さを感じはしないけど、動きにくさは確かにあるかもしれない。スキルレベルが上がればまた違ってくるかもだけど。
「魔物に合わせて盾を変更すればいいのかな?」
俺はダンジョンから出たら防具屋で盾を探してみようかなと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます