第450話 ブラッディーローズ
翌日のお昼前に、エルザとアルトがお客を連れてやってきた。
そのお客というのは、ブラッディーローズの面々だったわけだけど。
やはりというか、一番喜んだのはトリーシャだ。
ミアを見るなり、突然拝みだしたのには俺だけでなく、レイラたちも驚いていた。
まさか神人になった影響か? と思ったが、前からミアに対してはこんなものだったし、久しぶりに会ったからの行動だろうと思うことにした。きっとそうに違いない。
他にはレイラがヒカリを捕まえてお菓子を食べさせていたり、ヨルがクリスに魔法について質問している。
なんか会った早々、場がカオスな状態になっているのは気のせいじゃないはず。
その様子にエルザはアワアワしているが、アルトは至ってマイペースだ。
「けど最初は驚きましたわ。頑なに仮面をしていたソラが、仮面を取っていたんですもの」
「師匠の素顔を初めて見た気がします」
レイラとヨルの言葉に、他の四人もコクコクと頷いている。
その辺りは王国関係で、素顔を晒すことが出来なかったと簡単に説明しておいた。
それだけで、レイラは何となく察してくれたようだ。
もしかしたらウィルの方に色々と情報が届いているのかもしれないな。
「それでソラたちはまたダンジョンに行くんですの?」
「ああ、そのつもりだ。今回はちょっと本格的に攻略しようと思ってる。前回の時は他にもやることが色々あったからな」
「そう、ですの。私たちも手伝えれば良かったのですけど、色々忙しいので……」
聞いた話では、レイラは学園の卒業を控えているということで、その後どうするかを迷っているそうだ。
ブラッディーローズはパーティーとしてそのまま残るそうだが、五人で続けるか、新しくメンバーを入れるかを検討しているそうだ。
新しくメンバーを入れた場合は、無理に階の更新を狙わず、のんびり活動すると言っていた。
「ソラたちが強いのは重々承知ですが、やはり下に行くなら別のパーティーと組んで人数を増やして行く方がいいと思いますわ」
「それは分かっているんだけどな……かと行ってクランに入るわけにはいかないし」
守護の剣なら人材も揃っているし、クランのリーダーであるジェイクたちとは顔見知りだったりする。
ただ俺たちの場合、ここのダンジョンを攻略したら次の地に行く必要があるから、気軽にクランに所属するというわけにはいかない。
「あ、それならサイフォンさんたちはどうですの? 確か一〇日ほど前にこちらに戻って来てましたわ。確かルリカやクリスが顔馴染みでしたよね」
「サイフォンさんって……フレッドたちは一緒じゃないのか?」
「フレッドさんたちは獣王国の方に行くからと別れたらしいですわ。えっと、その、こちらに戻ってきたのはゴブリンの嘆きの方たちの五人ですわ」
ゴブリンの嘆きか……その呼び方は懐かしい。
確かにサイフォンたちなら頼みやすいかもしれない。
それに今なら正体を隠す必要もない。
それと気になることというか、サイフォンたちなら一緒に下を目指しても大丈夫かもしれないと思う理由があった。
それは単純にレベルだ。
マジョリカで再会した時は大して気にならなかったが、というか、わざわざ鑑定で調べなかったが、ルフレ竜王国にいた時には、ルリカたちと一緒に依頼を受けるということで一応鑑定していた。ま、これはフレッドたちも鑑定したわけなんだけど。
その中で、ゴブリンの嘆きの面々のレベルは高かった。
普通に考えたら、エレージア王国の王都で会った時点でも、逆算するとかなり高かったことになる。少なくとも、Cランクなのが不思議に思うほどだ。
もちろん俺たちと別れてから、魔物を乱獲してレベルが上がった可能性もなくはないが、俺の知るゴブリンの嘆きはそんなにガツガツ依頼をこなすような感じではなかった。
レイラたちみたいにスタンピードに遭遇したら別だけど、そんな話も聞かなかった。
「その辺りはルリカたちと相談するよ。やりやすい、やりにくいはあるだろうしな」
俺の場合は気まずさがありそうだけど。
ここは理由を話て素直に謝るのが一番だろうな。
「ふふ、ならルリカたちに話を聞いてきますわ。問題ないようでしたら、ここを教えてもいいですの?」
「ああ、二人がいいなら俺は構わないよ」
結果はまあ、問題ないということだ。
これで逃げ道がなくなった感じか。
事情を知るルリカとクリスは申し訳なさそうにしていたが、こればかりは仕方ない。
二人も確実性を上げるためと、どうせ誰かと組むなら顔見知りの方がいいと思っての判断だろうし。
「それじゃ連絡がついたら、ソラたちにも連絡を入れますわ」
結局レイラたちはお昼を食べて、さらには日が沈む少し前まで滞在していった。
主な原因はトリーシャとヨルで、捕まっていたミアとクリスはブラッディーローズの面々が帰ったあとはぐったりしていた。
いや、俺もヨルの相手をしたけど、質問を受けていたのはクリスの方が多かったんだよな。
たぶんそこには、クリスの説明が分かりやすいってのもあったと思う。
まあ、俺の場合はスキルをポイントで習得していたから、基礎となる知識はないからな。説明をするとどうしても感覚的なものになってしまうわけだ。
俺は労う意味もこめて、二人が希望する料理をエルザたちと共に作るのだった。
もちろんこの時ヨルにダンからの手紙を渡しておいた。
嫌そうな顔はされたけど、一度だけでいいから返事を書いてやってとも頼んでみた。一度だけ、を強調して。
これで願いを叶えたということでいいと思いたい。
だって俺にはヨルの意志を変えるほどの影響力はないんだから。
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