第446話 スキル【隠蔽】
俺は見張りをするにあたりMAPを表示させて気配察知を使用する。
最初の当番になったのは、男性陣は俺とナオトとシュンの異世界組三人で、女性陣がヒカリとセラとカエデを除いた五人になった。
ちょっとバランスが悪いような気もするが、この辺りには凶悪な魔物が出るという話は聞かないから大丈夫だろう。実際MAPの中に魔物の表示はされない。同じように旅をしている人が表示されるだけだ。
もちろん盗賊など、犯罪者が変装していることも想定して警戒する。
街道沿いでは知り合いではない限り、何が起こるか分からないからだ。だからお互い干渉しないように、寝る時はある程度の距離を取るのが普通だ。
俺たちは二人一組に分かれて、それぞれ馬車を囲むように見張りに立った。
探索系のスキルを持つ俺とルリカがちょうど離れるように立っている。
俺はミアと組んで周囲を警戒する一方、並列思考を使用してスキルの確認をする。
不謹慎かもしれないが気配察知と時々使う魔力察知で周囲の警戒は万全だ。それに遠距離からの不意打ちに備えて、馬車の周囲にシールドも使ってある。
またミアは魔物除け用の神聖魔法の聖域を使用してくれている。
「それでソラは、今度は何をしようとしてるの?」
「これからダンジョンに行くだろ? それで何かいいスキルがないかを探してるんだ」
旅の間ナオトやアルゴたちからダンジョンについての話を聞いている。
ナオトたちはプレケスの、アルゴたちは帝国にある二つのダンジョンに行ったことがあるという話だった。
やはりダンジョンで一番大変なのは探索だが、先を急ぐなら魔物との戦闘を極力避けた方がいいだろう。
これはあくまでもダンジョンの最奥部を目指す場合であって、お金を稼ぐためなら率先して魔物を狩る必要がある。
別に階の更新をしたからといってお金が入るわけではないのだから。
ただ総じてダンジョンは階が進むほど強力な魔物が出てくるため、強い魔物ほど魔石の買取価格は上がるし、素材も貴重なものが多くなってくる。
それは限られた人間しか、奥に進むことが出来ないためである。
またそこにはダンジョンごとの特徴みたいなものがある。
例えば低階層に出てくる魔物は、どこのダンジョンも大して変わらない。
ただ進めば進むほど、そのダンジョンでしか遭遇しない魔物というのも存在するようだ。
時々罠などで、本来そこにはいないはずの魔物が出現するというイレギュラーは起こるが、それは極稀な出来事らしい。
と話がずれた。
強い魔物の魔石は確かに欲しいが、優先順位としてはエリアナから頼まれた調査が先決だ。
魔物と戦わないとこちらの成長も止まったままだからある程度のレベル上げは必要になるが、それでも避けられる戦闘は避けたいし、戦うならこちらの有利な状況で戦いたい。
例えば強い魔物が五体集まっているのと二体だけでいるなら、後者と戦った方が安全に戦えるといった感じだ。
「それで何か良さそうなものあったの?」
「……一つだけ気になるスキルはあったかな」
ミアの問い掛けに俺は答えた。
スキル【隠蔽】効果としては対象から認識しにくくなるというものだ。
気配遮断と似たような感じだが、気配遮断は自分自身に使うのに対して、隠蔽は自分以外の人に気配遮断と同じような効果を付与することが出来るというものだ。
効果範囲はレベルが上がると徐々に広がっていくといったところか?
これは魔物を回避するのが主目的だが、不意打ちにも利用可能だ。
特に皆で固まった状態で不意打ちをすることが出来るのが一番大きいだろう。
あとはそうだな……。以前マジョリカのダンジョンで覚えようと思っていたスキルを一応取っておくかな?
スキル【シールドマスター】
これはソードマスターのシールドバージョンだな。所謂盾の扱いが上手くなるというものだ。
盾なんて構えてきた攻撃に合わせればいいから簡単なんて言う人がいるかもだが、そんなことはない。
攻撃の受け方で反撃のチャンスが生まれたりするし、それはサイフォンのパーティーメンバーの一人である、盾士のガイツと何度も鍛練したから分かる。
マジョリカに行ったら、専用の盾を探す必要があるな。
「ん? どうしたんだ」
ふとミアがこちらを見ていることに気付いて尋ねた。
「なんか楽しそうだなって。スキルを探す時っていつもそうなの?」
「そんなことを言われても、スキルを覚えようとする時の姿なんて自分じゃ分からないぞ?」
「それもそっか。けど何というか、幼い子供みたいに目を輝かせていたよ」
そう言うミアは可笑しそうに笑っていた。
確かに新しいスキルを探して習得するのは楽しくはある。
スキルポイントは有限だし、必要に迫られて覚える時もある。
それでも新しくスキルを覚えるというのは、俺が出来ることの可能性が広がるから楽しいんだよな。
俺はとりあえず隠蔽のスキルの熟練度を上げるため、時々隠蔽のスキルを使用しながらその後の見張りを務めたのだった。
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