第443話 再会

「あらあら、もしかしてソラ君かしら?」


 アポステル家に到着した時に、一悶着会った。

 まあ、あの時は俺も仮面していたからな。

 門番から呼ばれた執事のロンドに商業ギルドのカードを見せて証明する必要があった。

 その後身元確認が出来て家に通されて、やってきたのはヨルの母親のルーだった。

 ルーはヒカリたちを見て、それから俺の髪色を確認して言ってきた。


「けどミア様もお元気そうで良かったです。主人も心配してたんですよ? 手紙で連絡ってのも難しかったみたいですし」


 ルーがミアを抱き締めると、恥ずかしいのかミアは顔を真っ赤にしていた。


「あ~、こっちの二人はルリカとクリス。セラの幼馴染で、マジョリカで再会したんだ」


 ルリカたちの方を気にしている様子だったため、俺が二人を紹介した。

 ルリカとクリスが自己紹介をすると、ルーもそれに答えていた。


「それでソラ君たちは主人に会いにわざわざ来てくれたの?」

「マジョリカに戻る用事が出来たので、そのついでに寄ってみようと思いまして」

「そうなのね。ロンドが主人を呼びにうちの者を走らせたから、それまでゆっくりしていってね。ユリもそろそろ戻ってくると思うし」


 ルリカとクリスが「ユリって誰?」とセラに尋ねている声が聞こえ、セラが「ヨルの妹さ」と答えていた。

 俺はそれを聞いて少し悩んだ。この後宿を探す必要があったからだ。

 そのことが顔に出たのか、ルーが楽しそうに笑いながら、


「今日は泊まって行けばいいですよ。主人もミア様と話したいだろうし、ユリもヒカリちゃんとお話ししたいと思いますしね」


 と言ってきたので他の面々に意見を求めたら、お言葉に甘えることになった。

 お金にはそれほど困っていないが、やはり宿代が浮くのは嬉しいようだ。

 俺たちはメイドさんに先導されて部屋に案内され(もちろん俺は一人部屋)、一先ずダンとユリが戻ってくるまで部屋で休むことになった。

 これは今日聖都についた俺たちへ、ルーが気を遣ってくれたんだろう。

 俺はスキルのお陰で疲労は感じないが、ヒカリたちは別だからな。

 俺たちは一度部屋に案内されたが、程なくして呼ばれた。ユリとダンが同時に帰宅したからのようだ。

 とりあえず俺とミアはダンと会い、ヒカリたちはユリに会うことになった。


「これはミア様! 御無事で何よりです。そして……あの時は申し訳ありませんでした」


 ミアを見たダンはホッと胸を撫でおろしていた。

 ミアの生存を知る数少ない関係者で、色々なしがらみによって身動きがとれなかったのを悔いていたのかもしれない。

 ただあの頃と比べて頬が少しこけ、疲れている感じを受けた。

 教皇のしでかしたことへの対応もしていたようだし、もしかしたら女神が死んだことの影響も多少は出ているのかもしれない。あくまで想像だけど。

 女神が教会にしたのは神託ぐらいしか聞かないし、むしろ聖王国よりも王国の方が女神との繋がりが強いイメージが俺にはあるんだけどな。

 その後俺たちは今まで旅したことをダンに伝えつつ、今後の予定について話した。

 旅の話に関しては、エルド共和国辺りまでのことまで話して、最果ての町以降のことは話していない。世の中知らない方がいいこともあるだろうしな。

 ミアにしても心配させたくないのだろう。

 あとは真実を話すことで、教会全体が揺らぐのを恐れたのかもしれない。


「そうですか……ではミア様はこれからも旅を続けるのですね」


 ミアが頷くのを見たダンは、俺にしっかり守るように頭を下げて頼んで来た。


「しかし残念です。魔王の問題が終わったので落ち着いてきたところでしたが……いや、王国と帝国の問題があるのでまだまだ忙しいですが」


 魔人が王国と敵対していた事実や、王国の非道な行いを聞いて頭が痛いと言っていた。


「きっとミア様はそれに巻き込まれて命を狙われたんですね」


 とダンはそう解釈したようだ。

 実のところミアが狙われたのはアドニスの独断専行だったわけだが、確かに魔王を守りたいという理由からだったな。

 逆に翁やイグニスは、女神を殺すためにミアを生かそうとしてたわけだけど。


「それでダンジョンに行くとのことですが、まずはエルド共和国にあるダンジョンに行くのですか?」


 確かにここから一番近いダンジョンはそこだしな。そう思うのは不思議ではない。


「いや、マジョリカのダンジョンに行く予定だ。前回は途中で切り上げてきたからな」

「ああ、ヨルの友達の件か。しかしマジョリカか……何なら馬車を手配するがどうする?」

「……もしかしたら知り合いと一緒に途中まで行くかもだから、馬車は大丈夫だよ」


 コトリたちと合流して、途中まで一緒に旅をするかもだしな。


「……その知り合いは数が多いのか?」


 アルゴたちパーティーが五人で、コトリたちも五人だから一〇人ってところか。


「一〇人だな。俺たちを含めると一六人にいなる」

「……ふむ、馬車二台もあれば十分乗れるな? なら馬車を手配しようじゃないか。それでその知り合いもマジョリカに行くのか?」

「いや、エレージア王国の方に行くって言ってたかな」

「なら馬車はロイエまででいいな。それとも君たちの方は国境都市まで行くか? そこまでなら馬車も使えるぞ?」


 ダンが物凄く乗り気だったため。結局馬車を頼むことにした。

 もしかしたらミアに対する負い目があるから、便宜をはかろうとしているのかもしれない。

 俺たちとしても早くマジョリカに到着したいということがあったから、それを受け入れることにした。


「ただ相手の予定を聞く必要があるから、少し待ってもらっていいか?」

「いいだろう。それとこの街にいる間は家に泊まってもらっていいからな。あ、ただミア様、一度でいいのでレグルスやシグルドと会ってもらっていいですか? あの二人は大層心配してましたから」

「はい、分かりました」


 レグルスというのは聖女付きの筆頭従者で、シグルドはアドニスからミアを守ったダンお抱えの衛士だったな。

 その後俺はコトリに連絡を取り、ロイエまで馬車を利用出来ることを伝えた。

 コトリはそれを聞いてかなり喜んでいるみたいだった。アルゴたちも賛成してくれたようだしな。

 こうして聖都に到着してから三日後。俺たちはメッサを出発することになった。

 すぐに出発出来なかったのは、レグルスとシグルドと会うのに時間がかかったのと、ルリカとクリスのために街を回ったからだった。



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