エーファ魔導国家編2
第439話 報告と確認
エリルで一泊し、ナハルに向けて出発した。
別に転移したその日に移動しても良かったが、出迎えてくれた子供たちが離してくれなかったのだ。主にミアが人気で、事情を知っていた分物凄く喜んでいた。
最果ての町にいた時も、良くヒカリと一緒に世話をしていたからな。
ルフレで買った珍しい食べ物を出したら、大層喜んでいた。
ナハルへ向かう道では特に人と会うこともなく、安全な旅になった。
MAPと気配察知でも確認していたため、ゴーレムを召喚しての移動になった。
これは単純に生命付与や同調のスキルレベルの熟練度を上げるためだ。
これから先ダンジョンに潜る時には、きっとゴーレムたちが活躍してくれるに違いないと思っている。
少なくともマジョリカのダンジョンは五の倍数の階以外では、すぐに戻ることが出来ないから、どうしても長期間ダンジョンで生活する必要が出て来る。下の階に行けば行くほど、階の面積も広くなっていくからな。
逆にコトリに聞いた話だと、エーファ魔導国家にあるもう一つのダンジョンプレケスは、一階ごとに帰還が可能だという話だ。アルテアにあるダンジョンと同じ仕様だな。
ただ一階一階がフィールド型になっているため、かなり広いそうだ。特に魔物の湧きが良い時にあたるとかなり苦労したと言っていた。
もっとも階段の入口と出口は固定のため、進む道は分かっているらしい。
プレケスのダンジョンに行く時になったら相談してみるかな? タイミングが合えば道案内とか頼みたいところだ。
エリルを出発して五日後。俺たちはナハルに到着した。
「あんたがミアさんねえ。ルリカたちが大層に世話になったみたいで、ありがとうねえ」
会うなりモリガンに深々と頭を下げられて、ミアも戸惑っていた。
助けを求めるようにこちらを見てきたが、その人を止められる人はここにはいないよ?
「お婆ちゃん。ちょっといいですか?」
いや、いた。クリスが口を開いた。
「なんだい?」
「ダンジョンについて少し教えてほしいことがあるの」
「……なら場所を移そうかねえ」
クリスの様子から何かを感じ取ったのか、俺たちはモリガンの使用している私室に案内された。
さすがに七人が集まると狭くなるため、この場にいるのは俺にクリスとモリガンの三人だ。
ルリカたちはそれぞれフィロやオリンの手伝いをしにいった。
「それでダンジョンの何が知りたいんだい?」
「……お婆ちゃん、今は七つのダンジョンしかないと思うんだけど、昔はもっとあったりしたの?」
「……それを何処で聞いたんだい?」
「うんとね……」
クリスは竜王国で会ったエリアナから聞いた話をモリガンに丁寧に説明していた。
その話を黙って聞いていたモリガンは、精霊神の件で大層驚いていたが、
「そうだねえ。確かに昔はもっと多くのダンジョンがあったねえ。私は行ったことがなかったけど、最奥にあるダンジョンコアってもんを破壊すると、やがてそのダンジョンは消えるって話だったねえ。私の友達が冒険者やっててねえ、良く話をしてくれたもんさ」
と、当時のことを思い出したのか懐かしそうに話していた。
「だけどいつからだったかねえ。突然ダンジョンが生まれなくなってねえ。残ったのが有名な七つのダンジョンってわけさ。その友達はその中の一つを攻略したって話だったんだけど、確かにそのダンジョンにはコアがなかったって言ってたねえ」
「……一つ疑問があるんだけど。何でダンジョンコアがなかったのに、そのダンジョンを攻略したって分かったんだ? 奥に行く階段がなかったからか?」
「その友達が言うには、頭の中に声が響いたっていってたかねえ。ダンジョンを攻略しましたってねえ。そんで何かをもらったってことだったけど、それが何だったかは結局話してくれなかったねえ」
モリガンの話を聞き、クリスがギュッと拳を握っている。
「行くのかい?」
それを見たモリガンが問い掛ければ、クリスはコクリと頷いた。
「まったく誰に似たのかねえ。クリスは昔から頑固だったからねえ」
モリガンが幼い頃のクリスがエリスを探しに行くと泣いて大変だったと話せば、クリスは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
それを見たモリガンは悪い笑みを浮かべて、幼い頃のクリスの色々なエピソードを話し出すと、さすがに我慢の限界がきたのか、途中でクリスが止めにかかった。
クリスは恥ずかしいのかさらに顔を真っ赤にしていたが、モリガンは実に楽しそうだった。
ただそれが貶めるとかそういう感じではなくて、何となく俺にクリスの幼い頃を話して聞かせるのが目的のような感じを受けた。
なんかチラチラと俺の方を見て反応を確かめているみたいだったし。
「まぁ、ソラ君たちもいるようだし。気を付けて行くんだよ。ソラ君、頼んだからねえ」
俺はその言葉に頷くと、これ以上変なことを話されたら大変だと思ったのか、クリスに背中を押されてモリガンの部屋を後にした。
楽しそうな笑い声が、その背後から聞こえてきた。
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