第438話 帰還

 目を覚ましたら、何故かミアまでエリアナと仲良くなっていた。

 そしてエリアナが、ミアがエリザベートに憑依される前に鑑定したことがあったかを突然聞いてきたから頷くと、矢継ぎ早に俺に質問してきた。

 それを聞いたあとは少し深刻そうな顔をしていたが、やがて俺だけに聞こえるように耳打ちしてきた。

 その話によると、今のミアの種族は「神人」らしい。


【名前「ミア」 職業「聖女」 レベル「100」 種族「人間」 状態「——」】


「普通に人間になってるぞ?」

「私の力で鑑定されても分からないようにしているからだよ~。少しだけそれを解くから確認して~」


 言われて再度鑑定を使ったら、種族が「神人」になっていた。


「私の力も万全じゃないから~、見破る子もいるかもだから注意だけしてね~」


 とエリアナに念を押された。

 これはミアをしっかり守れという意味なのだろう。

 それから朝食の準備をミアたちに手伝ってもらい、食事を済ませていよいよ戻ろうかというところになって、エリアナに呼び止められた。

 なんかクリスとミアに目配せして何やら合図を送っていたのだが……。


「ソラ、話があるの」


 とクリスが声を掛けてきた。


「少し長くなるかも……」


 という前置きをもらったので腰を下ろしてその話を聞いた。

 それはクリスからのダンジョン攻略について……一緒に行ってくれないかというお誘いだった。

 その説明の中でエリアナが時々補足を入れたりしてきたが、その内容が重要な案件であることは良く分かった。


「私はクリスの手伝いをしようと思うんだ。ソラはどうする?」


 ミアの問い掛けに、俺は迷うことなく言った。


「俺も手伝うよ。く……マジョリカのダンジョンも途中だったしさ、最奥がどうなっているか気になるし。それにダンジョンって色々な国にあるんだろう? なら今度はダンジョンを巡りながら旅するのも悪くないしな」


 深刻な問題に対して軽めな言葉で返したのには一応理由がある。

 クリスたちに負い目のようなものを感じさせないためだ。

 実はこれ、エリアナから耳打ちされた時にクリスが随分悩んでいたと聞かされたというのもある。

 思わずクリスのためなら……なんて言おうとして、慌てて別の理由を話した訳ではない。

 そんなこと口走ればやっぱ恥ずかしいし、クリスが逆に気にしすぎると思ったんだよな。


「主がいくなら行く」

「ボクも行くよ。今度はボクがクリスを助ける番さ」

「私だって行くわよ。クリスたちだけじゃ心配だしね」


 俺が頷けば、ヒカリたちも口々に行こうと声を掛けていた。

 ルリカはちょっと素直じゃなかったけど、クリスはそれを聞いた時が一番嬉しそうにしていたような気がする。

 二人は長い間一緒に旅をしてきた、相棒みたいなもんだしな。


「それじゃお願いね~。私からはこれ以上あげられるものはないけど~」


 エリアナの言葉を背に受けて、俺たちはダンジョンを後にした。



「そんなことが……」


 ダンジョンから出て、その最奥にいたエリアナのことをユイニたちに話すと驚いていた。

 どうやらそのことはアルザハークから聞かされていなかったようだ。


「それでは皆さんはダンジョンを回るのですね」

「そのつもりだ。それで一つお願いがあるんだが、家を買いたいんだが可能か?」

「家ですか? 滞在するならここを使ってくれたらいいと思いますけど?」


 ユイニの言葉にサークが勢い良く頷いている。

 ダンジョンのことでエリアナに相談することがあるかもしれない。

 そのため転移するための拠点をアルテアで確保したいと思ったのだ。

 たださすがにお城にそれを設置するわけにはいかない。

 そのくらい俺でも分かる。


「いや、街中で頼む」


 俺は転移のスキルについて話した。

 秘密にすることも考えたが、アルテアには船を利用する必要があるから、船を利用しないで突然現れたら不審に思われるはずだから話した。

 さすがにそれを聞いてユイニも納得してくれた。

 サークはまだ分かっていないような顔をしていたため、サハナが呆れた表情でそれを見ていた。


「なら空いている家を探してみますね。ですが……」

「無理な様ならマルテで構わないよ」


 アルテアは土地が限られているから、ない可能性も考えていた。

 他国からの奴隷の保護をしていて、入ってくる人で人口は増える一方だからだ。

 そこにはアルテアで保護されると、殆どの人がそのままここに住むことを選択するからだ。

 もっとも奴隷の扱いが酷い王国も変わっていくだろうし、帝国も帝都が崩壊したそうだから、その数は減ると思う。

 話し合いが終了したら、今日はそのままお城の方で休むことになった。

 目を覚ませば既に家を見付けてくれていたようで、俺たちはユイニに案内されて家に向かった。

 何故ユイニがわざわざと思ったが、本人もたまにはお城の外を出てアルテアの街を歩いてみたいという思いがあったようだ。もちろん万が一を考慮して親衛隊長も同行している。

 そして俺たちは案内された家を掃除しながら一日過ごすと、次の日には転移の魔道具を設置して、スイレンに連絡を入れてからエリルへと転移した。

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