第436話 理由(クリス視点)
私が目を覚ますと、ソラたちはまだ眠っていました。
私はエリアナ様がいないことに気付き、大樹の方に足を進めます。
エリアナ様と契約したからでしょうか? 何となくいる場所が分かるのです。
私は契約した時のことを思い出しました。
あの時、契約した時にエリアナ様の想いのようなものが私に伝わってきました。
それは大変な記憶であり、深い悲しみでした。
エリアナ様がこの地に留まる……ううん、動くことが出来なくなった理由とか、色々なものが断片的ですが私の中に流れてきました。
だからエリアナ様の頼みを聞くことにしたのです。
ダンジョンの攻略……それも七つあるということでした。
ダンジョンの攻略は確かに難しく、ソラたち人種の寿命では、全てのダンジョンを攻略するにはそれこそ人生を犠牲にしなくてはいけなくなるかもしれません。
その点私はエルフです。少なくともソラたちの一〇倍以上は長く生きられるので、適していると思いました。
そのことを少し考えると胸が痛みました。何故でしょう?
「エリアナ様、大丈夫ですか?」
「……クリスちゃんですか~。どうしたのですか~?」
「……詳しい話を聞きたくてきました」
私の言葉にエリアナ様は首を傾げています。
泣いているように見えたのは私の気のせいだったようです。
私は契約した時に伝わってきたことをエリアナ様に伝えると、大層驚いていました。
「そっか~。そうだね~。ダンジョン攻略のお願いを聞いてくれたんだし~、クリスちゃんにはしっかり話しておきますか~」
エリアナ様が語ったことに、私は驚きました。
神様同士の戦いとか、神様が行方不明とか、正直信じられないことばかりでした。
「それで私はダンジョンに行って何をすればいいのですか?」
「ダンジョンの最奥の調査かな~。以前アル君とケル君が話していたのを聞いたんだけど~、どうも私たちが入れなかったダンジョンの一つに~、あるべきものがないって話で怪しいって言っていたんだよ~」
「それは何ですか?」
「私も良く分からないだけど~、ダンジョンには普通~、最奥の部屋にコアがあるらしいんだ~。けどその調査したダンジョンには~、それがなかったって話なんだ~」
私はその言葉に首を傾げました。
私の知る限り、ダンジョンは七つしか存在していません。いえ、ここのダンジョンを合わせれば八つになるのかな?
もちろん私が知らない、または見つかっていないダンジョンが他にもあるかもしれませんが。
そしてダンジョンの最奥にコアがあるという話も、私は聞いたことがありません。
もっともこちらは、ただ単に私の情報収集不足かもしれませんが。
「一ついいですか?」
「なにかな~?」
私はひとまずコアのことは置いておいて、一つ疑問に思ったことを聞いてみました。
「それが分かっていて、今まで調査をしていなかったのですか?」
「あ~、その話をしていてすぐに
調査を始めようとした時期にちょうど妖精神の襲撃を受けてそれどころじゃなくなったのですね。
一応ダンジョンのことは戻ってからお婆ちゃんにも聞いてみようかな?
それからエリアナ様は契約した時に、私にエリアナ様の力の一部を使えるようにしたことの説明を受けました。それが元で、もしかしたら私にエリアナ様の考えが伝わったのかもしれないとも言っていました。
私が渡された力は魔法の力が上がるとかではなくて、ダンジョンを調査するのに必要な力のようです。
使い方は簡単で、ダンジョンの最奥でその力……神力を行使するだけとのことです。
ただダンジョンに襲った神々を封印したことに関しては、妖精神が嘘を言っていた可能性もあるとのことです。
どうやらエリアナ様はあまり妖精神のことを信用していないようです。
確かにやったことを考えれば、自慢げに話していたことを鵜呑みにしないのは正しいと私も思います。
それでも手掛かりがないため、まずは探索の場としてダンジョンに狙いを定めたようです。
もちろんエリアナ様たちがダンジョンに入れなかったという理由もあるようですけど。
「それなら仲間を探してダンジョンに行ってみようと思います」
「? ソラ君たちには頼まないの~?」
「……時間がかかりますから……」
「そうね~、人の子の寿命は短いですからね~」
「はい……」
エリアナ様は私の考えをすぐに理解してくれたようです。
ソラにはセラちゃんやお姉ちゃんを探すために、十分手助けしてもらいました。
これ以上巻き込むと、ソラのやりたいことが出来なくなってしまいます。
出会った頃にソラは、この世界の色々なところを歩いて見て回りたいと言っていました。
あの頃私たちはお姉ちゃんたちの手掛かりがなかなか見付からず焦っていたから、 実は少しだけそれを聞いて、呆れと妬みのようなものを覚えました。
後にソラがこの世界に無理やり呼ばれたことを知って、私は自分が抱いた感情を恥じたりしましたけど……。
だから私に付き合うということは、それが出来なくなってしまいます。
「一度お姉ちゃんたちに相談してみようと思います」
モリガンお婆ちゃんやエリスお姉ちゃんに相談すれば、どうすればいいか私を導いてくれるはずです。
けどそんな私の言葉を否定するように、その声が聞こえてきました。
「遠慮する必要なんてないと思うな。私だったら、素直にソラに頼むよ?」
そこにいたのは、先ほどまで眠っていたミアでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます