第425話 アルテアダンジョン 9F・6(クリス視点)
ルリカちゃんとヒカリちゃんの二人が目を覚まさないまま、私たちはダンジョン九階にやってきました。
そこで私は不思議な感覚に襲われて、精霊に会いました。
最初戸惑ったのは、その精霊の纏う魔力が私たちが契約している精霊と違ったからです。
精霊にも個性があって、能力も違います。
それでもお婆ちゃんやお姉ちゃん、コトリちゃんたちの契約している精霊たちも纏う魔力だけは同じなんです。微妙な差、はあるかもですが、ここまで違うことは在りませんでした。
だから最初彼らと会った時は、正直言って驚きました。
ただ私と契約してくれている精霊たちが、彼らも同じだと言ってきます。
聞き取りにくい声を通訳してくれて、その様子に触れて、私も彼らは信じられると思いました。
彼らはそう、純粋なのです。無邪気なのです。
それと食事をしたいと言ってきた時は一番驚きました。
お婆ちゃんからはそんな精霊もいるよと聞いていたけど、それはあくまで蜜とか果物とかの話でしたから。
ソラがステーキを用意しているのを止めるよりも先に、彼らはその肉に
えっと、お肉のような固形物も食べられたんですね……。
その後はその食欲に驚かされたりもしたけど、特に何の問題もなく過ごすことが出来ました。
それどころかこの階には魔物は出ないし、危険もないということでぐっすり休むことが出来ました。
私は緊張が解けて力が抜けたからでしょうか? その日はぐっすり眠ることが出来ました。
眠る間際に、私の契約精霊たちがちょとと遊んでくると言って、彼らと楽しそうに飛んでいくのを見送りました。
その翌日も、変わらず彼らと行動しました。
料理の手伝いをソラがして欲しそうにしていたから食材をカットするのを手伝いましたが、それ以上はしません。
別に自分の料理が下手だとか、そういう理由じゃありませんよ?
その、契約している精霊から止められたからです。
どうやら料理をするソラに群がるその様子を見て、私がそんな風になるのが嫌だったみたいです。
もしかして彼らにとられちゃうと思ったのかもしれません。その可愛らしい反応に、頬が緩むのが自分でも分かります。
これから先、私も新しい子と契約を結ぶかもしれません。
契約した時期で差別をするつもりはありませんが、それでも幼少の頃より長い間一緒に苦労をしてきた彼らを特別だと思うのは仕方ありませんよね?
そのことを伝えたら、嬉しそうに私の周りを踊るように舞っていました。
けど、料理をするのはやっぱり禁止みたいです。
譲れないものがそこにはあったようです。
ソラ、ごめんなさい。頑張ってください。
そして私たちは九階に降りてきて二日目。彼らが普段拠点としている場所に到着しました。
そこで見たのは眠る精霊たちでした。
違う。眠っているというのは正しくありません。
だって彼らからは魔力が……生命の息吹が感じられないのですから。
私は心に騒めきを覚えました。
このような状態の精霊を見たのは初めてでしたから。
精霊の死。私はそれをお婆ちゃんからも聞いたことがありませんでした。
けど今目の前に横たわる精霊たちは、まるで死んでいるように見えました。
私は気分が悪くなり、立っているのも辛くなって横になりました。
セラちゃんが眠るまで付き添ってくれていました。
一眠りした私が目を覚ますと、セラちゃんが横に寝ていました。
心配してついていてくれたようです。
私はセラちゃんが目を覚まさないように気を付けながら起き上がると、ソラのもとに行きました。
ソラは私にスープを差し出してきました。
私はそれを飲んで一息吐いて……何と話せばいいか分かりませんでした。
「ありがとう、ソラ。それとソラも少し休んでください。料理も大変だったと思うし、疲れているでしょう?」
ソラにはあの不思議な
それなのにソラは気を遣って別の場所に移動してくれようとしたのに、無意識に手が伸びてソラを困らせてしまいました。
何をしているんだろ、私。顔が熱くなるのが自分でも分かりました。
ソラはそんな私に何か言う訳でもなく、黙ってその場で横になって眠りました。
私はそれを見て、駄目だな、と思いました。
全然成長出来ていないとも。
そんな私を精霊たちが慰めてくれます。いつの間にか戻ってきたようです。
「本当に大丈夫なのかな?」
思わず呟いた私に、精霊たちは彼らに話を聞いてくれたようです。
彼らの話をまとめると、彼らは今は休んでいるとのことです。
悲しい別れがあったため、今は休んでその心を癒しているとのこと。
休んでいる彼らは、契約者たちと悲しい別れをした精霊だと言います。
その話を聞いて、ふと私と契約したこの子たちのことを考えました。
私はソラたちとは違い、長寿の種族です。それでも精霊は悠久の時を生きているとお婆ちゃんから聞いたことがあります。
いつになるかは分からないけど、いずれその時は私たちにも訪れることでしょう。
その時この子たちは、どうなるのかな?
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