第410話 通信機・2
通信機と言っても、あくまで俺が創った物同士で連絡を取り合うことが出来るようになるというものだ。
だから俺の通信機を使って、イグニスたちに連絡を取りたい時は、俺が創った通信機を持っていないと連絡することは出来ない。
「それで何を悩んでいるの?」
「いや、幾つ通信機を創ればいいのかと思って……」
俺はクリスに悩んでいることを話した。
正直アルゴたちに連絡を入れるなら冒険者ギルドに伝言を頼めばいいし、そもそも王都では共闘したがこれから先も一緒に行動するかと言えばそんなことはない。
クリスたちのことを考えればモリガンかエリスに一つ渡せばいいし、あとはナオトたち……というかコトリに一つ渡しておけばいいか?
この通信機、創ってみたのはいいが使うのが結構大変。簡単に言えばある程度魔力がある人じゃないと使えない。
一応魔力が少ない人でも魔石をセットすれば使えないことはないが、燃費がはっきり言って悪いのだ。
本当はゴーレム核のように外気から魔力を吸収出来るようにしようと思ったが、それだと結局通信が切れてしまうから諦めた。
吸収のレベルがもっと上がって、一度に吸収して回復する魔力量が増えればもしかしたら可能になるかもしれないが、現状ではどうしても無理だったのだ。
だから俺たちの分を含めて三つは決定しているのだが、あとはクリスたちにも個別に創るかを悩んでいるのだ。
「なら一つ、クリス用に創ってもらっていいかな?」
「クリスだけでいいのか?」
「魔石ももったいないしね。それに一人になって一番危ないのはクリスだと思うし」
ルリカの言葉にセラも頷いている。
けどクリスは不満だったみたいで反論していたが、結局言い負かされてしまった。
いや、俺もクリスが一番心配だしな。精霊魔法を自由自在に使うのを考えると、一番強いかもしれないが、やはり一番最初に会った時のイメージが抜け切れていない。
ならひとまず四つ、いや材料があるから六つ創っておけばおけばいいか。
あとは魔力によって音量調整出来るようにして、複数の人が同時聞こえるようになるスピーカー機能みたいのを付ければ、ルリカたちも気軽にエリスたちと話せるようになるかな?
俺は早速創造のスキルで通信機を創っていく。
スマホとかイメージして創ったからか、イグニスたちが使っていた通信機よりもコンパクトになった。これを見た人は何の魔道具か分からないだろう。
一応これには使用権限みたいのをつけておいた方がいいかな?
使えなければ仮に落とした場合でも、使えない小さな箱だと思うことだろう。
これは渡した時に魔力を視て調整すればいいだろう。一概に魔力と言っても、指紋みたいに個人個人微妙な違いがあるみたいだから。
「へえ、これが通信機ねえ」
「スイレンさんたちが使っていたのとはまた違いますね」
翌日モリガンたちの元に訪れて、通信機を渡した。
結局モリガンとエリス用に一つ、スイレンたち用に一つ渡すことになった。
ちなみに登録はスイレンと一緒に住んでいるエルフたちが登録した。
『あーあー、聞こえるかい?』
『モリガンさん聞こえますよ』
『うん、お婆ちゃん、こっちも聞こえるよ』
ちなみに複数の通信機を同時に繋げることも可能だ。いわゆるグループ通話?
それと連絡があったことが分かるように履歴機能みたいのも付けた。
例えばクリスの通信機からモリガンの通信機に連絡を入れた場合。その時に繋がらなければ魔道具にクリスの通信機から連絡があったと分かるように、ディスプレイに数字が表示されるようになっている。
またその番号を選択することで、通話相手を選択出来るようになっている。
「ただ相手との距離が遠いほど魔力が多く消費されます。また通話中は魔力が消費され続けるのでそれも注意して下さい」
MP消費軽減なども組み込まれているが、これは実際に使い続けないと分からない。
「便利な世の中になったもんだねえ」
「おばあ。これは普通に普及してるものじゃないからね。エリスお姉ちゃんたちもその辺り注意してよ? あまり人のいるところでは使わないようにね!」
のんきなモリガンにルリカが注意している。
確かに通信機なんて持っている方がレアだ。というか、個人で所持している人がこの世界にどれぐらいいるかだな。
一応冒険者ギルドには似たようなものがあるみたいだから、全くないとは言い切れない。
ただ不用意に目立つところで使って、奪おうとする輩がいないとも限らない。
モリガンじゃないが、エリスやスイレンたちはイグニスたちが普通に使っているだけでなく、スイレンもそれ用の魔道具を預かっているから、その点の常識がないかもしれない。
そのことを完全に失念していた俺も人のことは言えないけど。
「それじゃ俺たち通信機をコトリたちにも渡して、そのまま旅だとうと思います」
ある程度の手伝いは終わっているし、あとはスイレンたちで少しずつ町の形にしていけばいいのだろう。
本当なら転移用の魔道具を魔人に竜王国まで持っていってもらえば楽だが、どうも竜王国は魔人でも気軽に行けるような場所じゃないようだ。
「イグニスやギード、あとは翁なら問題ないんだけどな」
とはウィンザの言葉だ。
その後俺たちはアルゴたちにも別れを告げて、コトリたちのいるナハルへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます