第409話 通信機・1
通信機の魔道具作製に必要な素材が手に入るかを、ルリカたちには冒険者ギルドを通じて調べてもらい、俺は商人ギルドと錬金術ギルドに寄って調べてみた。
すると欲しい素材が王国の冒険者ギルドにあるみたいで、ルリカに頼んで俺の王都の家……屋敷に運んでもらうように伝言をしてもらった。
現在屋敷の管理は獣王が手配した人が管理してくれているが、家をそのまま自分のものとして維持するなら、ゆくゆくは誰かに頼む必要が出てくる。
その場合は俺の転移のことを秘密にしてくれる人が望ましいが……秘密を守るという意味では人選は良く考えないと駄目だ。一番簡単なのは奴隷を雇うことなのだろうけど。
その辺りは誰かに相談した方がいいかもしれない。一人で考えても碌なことはないだろうから。
俺たちはフィロたちのために魔物の肉を置いていくと、ちょうど戻って来ていたナオトたちに王都に行くことを伝えた。
やはり王都には戻りたくない様で、ナオトたちは残ると言った。
アルゴたちはと思ったら、一度王都に戻りたいとのことだった。
結構慌ただしく出てきたから、お世話になった全ての人に挨拶してなかったから挨拶をしたいとのことだ。
ある意味根無し草の冒険者は、ふらりといなくなることは珍しくないと思ったが、アルゴたちは長いこと王都で活動していたからとのことだった。
いつものメンバーとアルゴたちを連れて王都に転移し、とりあえず一日ここで過ごすことになった。
「あ、言い忘れてたけど、帰りは遺跡の方になるけど大丈夫?」
大丈夫という返事がかえってきた。ま、遺跡の方には今モリガンもいるから、顔だけでも見たいと思ったのかもしれない。
といってもアルゴは遠くから眺めるだけなんだけど。
屋敷に転移すると、既に素材は届けられていた。
俺は早速通信機を創ろうと思ったのに、ルリカたちに連れられて王都の街を歩くことになった。
別に観光という訳じゃなく、移住した最果ての町の住人から頼まれたものを買うそうだ。
ナハルでも手に入れられるが、腐っても王国一の街。ここの方が大量に、そして安く手に入るだろうとのことだった。
日用品やら衣服。果ては布など、大量に買った物資がアイテムボックスの中に消えていく。
さらには食料に始まり、お酒も購入した。これは女の人たちに頼まれたようで、頑張る男たちへのご褒美とのことだ。
最果ての町でも少量のお酒を造ってはいたが、場所が場所だけに大した量が造れなかったようだ。それなのに酒好きは多かったみたいで、時々喧嘩していたそうだ。
やがて買い物が終わり屋敷に戻って来ると、既にアルゴたちの姿がそこにあった。
俺は屋敷の管理をしている人たちにお酒やらを渡し、その後転移で遺跡に飛んだ。
「そういえばここの町の名前はどうするんだ?」
「お婆ちゃんがエリルって名前にするって言ってました。お姉ちゃんはちょっと嫌そうでしたけど」
クリスの言う通り、エリルとエリスは確かに似ている。何らかの意図があるとは思えないけど、エリス本人としては気になるのかもしれない。
遺跡の中には、まだ物が色々置かれている。
急ピッチで家を建てたりしているが、五〇〇人が住むとなるとまだまだ足りない。もちろん一人一軒というわけではないが、それでも一〇〇軒近い家を建てる必要がある。
特にスイレンの家は大家族だし、ある程度の大きさも必要だ。
「何だいもう戻って来たのかい」
「おばあのために急いで戻って来たんだよ」
ルリカが口を尖らせて言えば、モリガンはやれやれと言った感じで首を振った。
「なら少し手伝っておくれ。力仕事になるけどねえ」
「か弱い女の子に力仕事をしろって言うの!」
「力が有り余ってるから大丈夫だねえ」
モリガンの言葉にルリカが文句を言うが、顔は笑っているから本気ではないのだろう。
ただ純粋に、モリガンとそのような話が出来るのが嬉しいのだろう。
セラも、力仕事の苦手なクリスも手伝いに行く。
なら俺も行かないとな、と思っていたら、俺は外壁の方を頼まれた。
ヒルルクたちが自分たちでやろうとしたが、残念ながらうまく出来ないため、俺が土魔法で造ることになった。
出来る限り自分たちでやることにしているが、やはり苦手なことは多いようだ。
「木の柵なら問題なく作れるんだけどな。ここには結界もないし、防壁はしっかりしたものを造った方がいいって言われたんだ」
農地も町の中に作ってあるからな。最終的には王国の南門都市みたいに内壁と外壁に分けて、その間に農地を作るみたいだが、それはもっと時間が経ってからの予定みたいだ。
俺はヒルルクたちが予定している位置に魔法で土の壁を造っていき、その作業を終わったら今度は食事の手伝いをした。
結局俺が通信機の作製に取り掛かったのは、夜の食後だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます