第408話 移住計画・5

 モリガンたち一行は予定通りの日程で戻って来た。

 ナオトたちも無事身分証を発行してもらえたようで、これで町の行き来が自由に出来るようになった。

 もっともしばらくはこの世界の知識を得るために、モリガンに色々と教えてもらうそうだ。

 アルゴが物凄く羨ましそうにしていたが、相変わらずまともに話すことが出来ていないとギルフォードは言っていた。


「とりあえず遺跡を中心に町を作ろうという話になったねえ。それでソラ君、土壌薬を錬金術ギルドの方に頼んで融通してもらいたいんだよ。もちろん対価は支払うよ」

「壌土薬なら俺の方で作ることが可能だから大丈夫ですよ。最果ての町の人たちに自給自足をさせたいってことですよね?」

「そうなるねえ。あとは町づくりをどう進めていくかを彼らと相談したいねえ」


 現在遺跡は警備の人たちが残っているだけのようだが、宿泊施設などはそのまま残っているとのことだ。

 一番の懸念は外部からの襲撃だが、王国がああなった以上今後はそのようなことがないと判断したようだ。

 一応王国と帝国、竜王国を除く三カ国とは情報の共有をしていると、共和国の偉い人から聞いたとのことだ。



 後日。俺はモリガン、エリス、ヒカリとコトリを連れて最果ての町に飛んだ。

 アルゴも付いてきたそうだったが、仲間たちと冒険者ギルドに行って依頼を受けるそうだ。

 ナオトとシュンもそれに同行するようだ。

 カエデとミハルはフィロの手伝いをしつつ、まだ働けない小さな子供たちの相手をしている。

 クリスたちは一足先に遺跡近くに移動して、転移用の魔道具を運んでもらっている。

 遺跡内部に直接転移しないのは、転移のことは秘密にしたいからだ。

 まずは先行する人たちは外から来たように見せ、その後警備隊の人たちが去ったら直接転移して運ぶ予定だ。

 そのためウィンザは連絡員兼護衛としてクリスたちに同行している。


「これはエリス様。どうぞこちらへ」


 スイレンに案内されたのは食堂だった。

 子供たちは現在子供部屋で遊んでいるそうだ。ヒカリとコトリは彼らに会ってくるということで俺も付いて行こうとしたら止められた。

 その後の話し合いで、遺跡内部も整備すれば仮の住まいとして利用出来ることや、材料があれば町の人たちで家を建てることも可能なことから、早速移住しようという話になった。

 ただ一日に全員移動出来るか分からないので、誰が先に行くかの順番は決めてもらっている。

 あとは荷物の整理をしてもらいつつ、大きなものは俺のアイテムボックスに入れている。主に家財道具だが、どれだけ入るのかは俺自身にも最早分からない。

 空間魔法のレベルがカンストしてから、アイテムボックスが一杯になったことがなかったような気がするからだ。

 とにかく必需品を中心に荷物を詰めていく。

 朝早くから作業を始め、お昼を食べ終わった頃にウィンザからの通信が入った。

 まずは六〇人ほどを移動させる。戦闘に特化した人、家事が出来る人、あとは子供たちと、バランス良く選ぶ。主に家族単位での人選だけど。

 俺はとりあえず三往復して、そのまま遺跡へと足を運ぶ。この時モリガンとヒカリも一緒に戻ってきた。

 エリスとコトリはスイレンの手伝いをしたいということで残ることになった。


「話は聞いております! どうぞ中へ!」


 何人か顔見知りも残っていたようで、軽く手を挙げてきたからそれに応えた。

 既に連絡は来ていたようで、引継ぎが終わったら彼らはナハルに戻るとのことだ。

 モリガンは施設管理者から遺跡についての説明を聞き、ウィンザとヒルルクを中心とした男たちは警備兵から周辺地域のことなどを聞いているみたいだ。

 女性陣は今は空き家となっている場所に旅の荷物を置いて、子供たちはヒカリと遊んでいる。あまり遠くにいかないように注意されているし、俺は魔道具をクリスから受け取り遺跡へと足を向けた。

 王国の襲撃を受けて多少の破壊の跡はあるが、元々頑丈に造られていたようで崩れるようなことはなさそうだ。一応修復を施されたようだしな。


「皆を連れて来るのは、警備の人たちが引き払ってからの方がいいかな?」

「そうだねえ。中に入ることはないと思うけど、その方が良いかもねえ」


 最終的に警備兵たちがナハルに戻ったのは二日後だった。


「それではモリガン様、クリス様。あとはよろしくお願いします」

「助かったねえ。私たちも後続の移住組が戻ったらナハルに戻るからねえ。その時に改めて挨拶させてもらうよ」


 どうやら管理者の一人は、モリガンの顔見知りだったみたいだ。

 その翌日。とにかく俺は疲れた。

 転移で送り迎えを何度も繰り返したからだ。

 その中にはイグニス他、数人を除いた魔人の姿もあった。


「ソラよ。悪いがその転移用の魔道具はそのままにしておいてくれ」


 もう最果ての町には来ないだろうと思い魔道具を回収しようとしたら、イグニスにそう言われた。

 不思議に思っていると、


「……たまには戻りたいという者もいるかもしれないからな」


 と言われた。

 故郷を懐かしむ。確かにそう思う者が出てくるかもしれない。あとは忘れも物とか。

 もっとも俺も一段落したら竜王国を目指す予定だから、戻ってきたい時にいるとは限らないけど。

 少し俺も通信用の魔道具を作ってみようかな?

 そんなことを思っていたら、イグニスから通信用の魔道具を創るのに必要な素材をいくつかもらった。もちろん足りないものもあるから、揃える必要はある。

 別になくても創れはするが、やはり成功率が違うからな。

 一度ナハルに戻って、素材が入手出来るから確認してみるか。

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