第405話 移住計画・3
「そんなことも出来るのかよ」
家を造るところを見ていたナオトに、半ば呆れながら言われた。
「なあソラ。家を造れるスキルでも覚えたのか? そもそも戦闘でも魔法とか使ってたけど、どうやって覚えたんだ?」
ナオトが疑問に思うのは仕方ないのかもしれない。そもそもこの世界に来た時の鑑定で、俺のスキルはウォーキングのみが表示されてたわけだから。
むしろ今さら聞くのか! と思わないでもないが。
ただウォーキングの詳しい説明はしない方がいいだろう。
「スキルは後天的に覚えることが出来るものが色々あるからね。ちなみにこれは土魔法をアレンジしたものだよ。魔力操作のスキルが必要になってくるけど」
ちなみに魔力操作は魔法のスクロールを旅をしている時に買って覚えたと言っておいた。
一応ナオトたちも後天的にスキルは覚えたようだが、それほど多くはなかったようだ。
それでも数を聞いてアルゴたちは驚いているし、やはり異世界人はスキル自体が多いのだろう。もちろんどんなスキルを持っているかは、ナオトたちも詳しくは話していない。
「とりあえず部屋の大きさはこれぐらいでいい、のか?」
今回は人数が多いので簡単に個人で利用出来る部屋を作ってみた。プライベートは大事だ。アルゴたち冒険者組は気にしなさそうだけど。
「いやいや、そんなことないから!」
とギルフォードには言われたけど。
逆に長いこと一緒にいるから、宿では部屋を分けて泊まっていたそうだ。
あー、あまり仕事をしている姿を見てなかったこともあって失念していたけど、アルゴたちはAランク冒険者だった。それなりの財力があったということか。
ナオトたちも王城にいた時は個人部屋をあてがわれていたみたいだし。
「けどこれって調理場に風呂? か。もうこのままここで住めそうだな」
ナオトは風呂があることに驚いているが、シュンは嬉しそうだ。
「けど誰が料理をするんだ?」
アルゴの言葉に皆が顔を見合った。
冒険者組は食事は宿や屋台で済ませるし、ナオトたちもこの世界に来てから自分たちで料理をしたことがないらしい。
魔物討伐やダンジョンなど外に出た時も、基本従者っぽい人やカエデやミハルが料理をしてくれていたらしい。
それを聞いたアルゴたちは羨ましいと文句を言い、その矛先が俺の方にきた。
確かにルリカたちと一緒に旅してましたけどね。
「基本料理は俺が作ってるぞ? あとは屋台の料理とかが多かったかな。ヒカリはご当地の料理を食べるのが好きだったし」
嘘だと叫ばれても困る。信用ならないと?
「なら作ればいいのか?」
そろそろ夕食時だし、別に構わないけど。
そういえば食事とかはどうするんだろう? この人数じゃ食堂も手狭になるし、ここで食べた方がいいかもしれないか。
俺はアイテムボックスから食材を取り出すと鍋を作っていく。
その手慣れた様子に驚かれたが、鍋から美味しそうな匂いが漂い出すと皆口を閉じた。
けどこれだけだとお腹が満たされないよな。
なら肉も焼くか。王国でたくさんの魔物肉を入手出来たからな。
鉄板を取り出しそこで肉を焼く。下手な調味料を使うよりも、シンプルに塩コショウで味付けするだけで十分だな。
「主。食事は……」
料理がいよいよ完成するといったところで、ヒカリがやってきた。
料理をしているのに気付くと、黙って隣に座るのだが何か言い掛けてなかったか?
「えっと、ヒカリ。何か用があったんじゃなかったのか?」
「うん、食事をどうするか聞きにきた」
「それは分かったが、俺たちは見ての通り大丈夫だよ。それよりヒカリは戻らなくていいのか?」
俺の言葉に視線が俺と料理の間を行き来している。
「料理ならまた作ってやるから。向こうで皆で食べておいで」
コクリと頷くと、ヒカリは戻っていった。
鍋に関しては残ったらアイテムボックスに収納しておけばいいが、アルゴたちがどれだけ食べるか未知数だからな。多めに作ってあるが、逆に足りなくなる可能性すらあり得る。
料理が完成すると早速皆に配膳したが、誰も口に付けないのはどうかと思うぞ?
目で先に食べろとサインを送ってないで、サッサと食べてくれ。
やがて静かな攻防は終了し、一人が料理を口にした。
その男は驚きの表情を浮かべて固まり、やがて再び動き出すと黙々と食べ始めた。
それを見た他の面々も食べ始めると、椀が空になれば自分たちで鍋から料理をよそい、肉へも手を伸ばした。
「酒があれば最高なんだけどな……」
なんて誰かが呟いたが、残念ながら酒の在庫はない。
そもそも俺のパーティーで酒を飲む人がいないからな。
ないと言った瞬間そんなこの世の終わりみたいな顔をされても知らないよ。
その後食事を終えた面々は、アルゴたちはそのまま休み、ナオトとシュンは風呂を堪能して就寝した。
俺はそれを確認すると家の扉に魔法をかけて、ヒカリたちが自由に扉を開けられるように設定を施すと眠るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます