第401話 王都・5

 魔物の進攻による王都攻防戦から五日が経っていた。

 俺たちはまだ王都に滞在していた。

 街の近くに魔物の死体の山が出来たから、それの処理に追われたからだ。

 あとはモリガンの体調がなかなか戻らなかったという事情もある。

 先にナオトとミハルだけでも最果ての町に送ろうかと尋ねたら、自分たちも残って手伝うと言って聞かなかったから二人もこちらに残っている。

 ならシュンたちを連れて来ようかと言ったら、ミハルに必要ないと言われた。それもちょっと強めに。

 そのミハルは今日も教会の手伝いに出掛けている。

 魔物の進攻を止めることは出来たが、やはり負傷者は少なくない数出ているため、手が足りないとのことだ。元々教会に顔見知りがいたというのも大きかったようだ。


「ヒカリも今日は解体か?」

「うん、そう」


 ヒカリはルリカたちと一緒に魔物の解体をしている。ナオトもこの際だから覚えたいということで付いて行っている。

 ヒカリと同じ境遇の彼ら……異世界人の血を引く人たちの保護は終了し、今はその多くの人たちが治療を受けている。やはり洗脳など、色々と非道なことをしていたみたいで、治療にはかなりの時間が必要とのことだ。

 ヒカリも気になっているようではあるようだが、なかなか様子を見にいけないみたいだ。

 やはりヒカリにとっても、思い出したくもない嫌な記憶なのかもしれない。

 俺は今日も魔物の回収を行い、冒険者ギルドに届けている。

 死体が腐らないように氷漬けにした魔物をアイテムボックスに入れて必要数をギルドに届けるとの同時に、解体した素材も運んでいる。

 最初の頃は結構な数の人が同じような仕事をしていたのに、いつの間にか俺を含め三人しかいなくなっていた。

 それも何故か俺の担当する量が一番多い様な気がする。その分たくさんお金を支払ってくれているから文句はないけど。あとは行ったり来たりで久しぶりにたくさん歩けるのもいいな。

 転移を覚えたことで移動がスムーズになった分だけ、ゆっくり歩く時間を取ることが出来なくなっている。

 ミアを助けるまでは時間優先は仕方ないと思うが、出来ればもう少しゆっくり景色を楽しみながら旅をしたいものだ。

 旅を生業とする商人たちが聞いたら贅沢なと言われそうだけど、現状生きるためのお金には困ってないんだよな。

 やっぱりウォーキングスキルのレベルが上がって錬金術を覚えたことが大きい。

 ただ魔王問題が一段落したから、ポーション系の価格が落ち着くかもしれない。

 それを考えると新しい金策を考えないといけないかもだ。

 スキルポイントは余裕があるし、生活に便利なものを習得していくのもいいな。


「お、クリスも解体か?」

「あ、ソラ。うん、今日は私も解体に参加しようと思って。土魔法を使えたら私もあれの作業に参加出来たんですけどね」


 クリスの視線の先では、大きなクレーターを埋めるべく魔法使いたちが奮闘している。攻撃系の土魔法の使い手ではなくて、どちらかというと土木関係を得意とする魔法使いが作業を行っているそうだ。


「いつになったら出発出来るのかな」


 クリスとしては辛いことのあったこの国から、早くモリガンを移動させたいと思っているようだ。

 あとはエリスにも会わせてあげたいという想いもあるのだろう。

 一度エリスを連れて来ようかと言ったことがあるが、何か向こうは向こうで忙しいみたいで来られないようなことを言っていた。これはギードが持っていた通信機を借りて会話した。

 ただモリガンのことを伝えた時は、物凄く喜んでいたと言ってた。

 それから俺たちは三日後。王都を旅立ち……というか最果ての町に転移した。

 その際獣王から、貴族の住んでいた家を何軒かもらい受けることになった。

 何軒かというのは、俺だけでなくナオトたちももらい受けたからだ。

 不要なら売ってくれてもいいということで、しばらくは獣王の方で人を雇って管理してくれることになった。

 ちなみに最初から獣王の作戦に参加していたアルゴたちも家をもらっていた。

 ギルフォードたちは物凄く困惑していたけど。こんなところじゃ落ち着いて住めないとか言って。

 確かに元々貴族が住んでいた場所だしな。

 俺? まあフリーレン聖王国では枢機卿の家に滞在したし、竜王国じゃ王城で生活したからな。正直慣れた。

 ナオトの方も王城暮らしで、待遇は良かったから特に違和感はないようだが、あまりここに住みたくないという考えのようだが、それでも何処かを拠点にしないとという思いもあって一応確保したようだ。

 とりあえず俺は転移の魔道具をもらった屋敷の一つに設置すると、救出したモリガンたちと、付いて行くと必死に頼んできたアルゴたちを連れて、最果ての町へと転移した。もちろんギードからの許可を得てだ。

 ちなみにギードたち一部はこの町に残り、他の人たちは別のことをするため王都を旅立っていた。

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