第400話 再会・7
冒険者ギルドへは、いつものメンバーでやってきた。
ルリカは魔物の防衛線には参加していなかったが、王都のギルドに行くのは久しぶりということでついてきた。
だからモリガンへの付き添いはカリナとナオトたちに任せてある。
アルゴも残りたい感じだったが、ギルフォードたちに引きずられて既に冒険者ギルドに到着している頃だろう。
王都の冒険者ギルドは以前来た時と……騒動があったからか、慌ただしさはあるが雰囲気はなんとなく変わっていないように見えた。
ただ俺がいた時に多くあった雑用関係の依頼票の数が少なく、以前は隙間なく貼られていたのに今は下地の壁が見えるほど減っている。
「ルリカさんにクリスさん! それと……え、ソラ?」
受付の方に歩いて行くと、ちょうど一人のギルド職員と会った。
それは俺の冒険者登録の手続きをしてくれた受付嬢のミカルだった。
ミカルはルリカたちのことを覚えていたようで懐かしそうに声を掛けてきて、次いで俺の方を見て驚きの表情を浮かべている。
その声が大きかったのか、なんか目立ってしまった。
周囲から、
「ソラ?」「なんかどっかで聞いた名前だ」「ほら配達の」「死んだんじゃなかったか?」「誰だそれ? 有名人か?」
などなど色々な声が聞かれた。
見知った顔もあるようだし、知らない顔もあるようだが、正直言ってあまり覚えていない。
俺の記憶力が悪いんじゃないよ? 王都にいた時は今を生きることに必死だったし、サイフォンとか、アルゴを中心とした受付嬢をナンパしていた男たちの方が印象が強く残っていたから、その他を覚えている余裕がなかったんだよ。
「えっと、それで今日はどうしたの?」
「昨日の討伐で、アイテム袋で魔物の回収をしたから届けにきたんだ。それで何処に行けばいいのか分かるかな?」
俺が答えると、ミカルは一度受付の方に走り年上の女性と何か会話を交わしてこちらに戻ってきた。
「案内しますね。付いてきて下さい」
ミカルを先頭に倉庫の方に案内される。
何度か配達の荷物を受け取りにきたことがあるが、今回はさらに奥の方へと行くようだ。
聞けば魔物の素材や、解体する魔物の保管庫のようなものがあるらしい。
初めてくるからついキョロキョロと周囲を見回してしまい、ふとその視線がミカルとぶつかった。
先ほどからミカルがチラチラとこちらを見ていることは分かっていた。
きっと何で生きていたとか色々と聞きたいのだろうけど、説明は正直難しい。いや、王族……エレージア王国の悪行が暴露されたこの時ならむしろ言っても大丈夫なのか?
そして俺たちは保管庫に到着すると、俺だけが中に入ってそこで別のギルド職員の指示に従い魔物を出していった。
さすがにその量は多かったようで、全ての魔物を出すことは出来なかった。
「ま、まだあるのか?」
と驚かれたが、まだアイテムボックスの中には魔物が眠っている。結構大型の魔物が多かったのも、場所をとっている原因になっているんだろうな。
そこに上役のような人が来て、俺の方のアイテム袋がすぐには腐敗などしない高性能のものだと教えたら、また明日置きに来てくれと言われた。
職員の一人が慌ただしく駆けて行ったのは、魔物の解体が出来る冒険者に緊急依頼を出しに行ったようだが、すでにその殆どが街の外で作業を行っているから、集めるのは難しいかもと言っていた。
「今日も徹夜か……」
解体作業をしている職員の誰かの呟きに、場の空気がちょっと重くなったような気がした。
「あ~、良かったら少し時間を空けてから来ますよ? 俺の持ってるアイテム袋はそこそこ高性能なので」
思わずそう口にしてしまったが、俺は悪くない、はずだ。
結局話し合いの結果。三日後に置きに来ることになった。
今度は俺がクリスたちに事情を話して謝る番になったが、そこは寛大な心で許してもらえた。
むしろ解体の依頼を受けて、街の外に行こうという勢いだった。
「あ、ほら。お金は大事だから……」
「うん、その通りさ」
「あるに越したことはないからね」
クリス、セラ、ルリカの素直な意見だった。
ヒカリもお肉のために頑張ると言っている。
それに大丈夫だと思うが、モリガンを転移で運ぶにしても、もう少し体力が回復してからの方がいいだろうとの意見だった。
その後解体の依頼を受けた四人は外に飛び出し、残された俺はミカルに事情を説明することになった。
正直どう話せばいいか迷ったが、真摯に見つめてくるミカルには嘘を話せず、自分が異世界から呼ばれたことや国からの監視を受けていたこと。その関係で逃げるために死を偽装したことを説明した。
「そっか。そんなことがあったんですね……それで、ソラさんはこれからどうするんですか?」
「ここでの用事が終わったらまた旅立つ予定かな。やらないといけないことがあるから」
そう、ミアを助けるために竜王国に行く必要がある。
竜王の話では、そこにエリクサーを作るための材料があるという話だから。
「そう、なんですね」
ミカルは少し寂しそうだったが、
「頑張ってくださいね」
と応援をしてくれた。
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