第390話 罠・4
魔法使いたちの放つ魔法に対して、ゴーレムに盾になるように命令を出した。
俺たちはゴーレムの陰に入るように移動し、反撃のための準備した。
「主、上!」
その時ヒカリの焦ったような叫び声がした。
声に導かれるように視線を上に向けると、そこには飛び降りてくる黒い装束に身を包んだ集団がいた。
確かに天井の高い通路であったが、誰もいなかったはず。
すぐにヒカリたちは前に投擲しようとしていた武器を上に向けて投じたが、それを黒装束の集団は弾いた。
しかしそれは魔法を付与した投擲物。
至る所で爆発が上がり阿鼻叫喚だ。
それには相手の魔法使いだけでなく、ナオトも驚いている。
それでもその地獄を切り抜けた黒装束の数は多く、次々と襲い掛かってくる。
俺たちはその敵と刃を交えることになったが、魔法使いたちの攻撃の手も止まらない。それこそ仲間諸共こちらを殲滅する勢いだ。
「エルフはどうします?」「かまわん。息さえあれば後はどうとでもなる」「勇者様は?」「あれはもう不要だ」
など物騒な言葉が時々聞こえてくるが、まずは目の前の敵を一人ずつ倒す必要がある。
俺は犬型のゴーレムを召喚すると、それをクリスの護衛に回してクリスの近くから離れる。
俺は魔法を魔法使いたちに放ちながら、黒装束の者たちを攻撃していく。
要所に配置されていたであろうことからある程度の腕であるとは思ったが、それでも魔王城で戦った者たちに比べると腕は数段落ちる。
そこにクリスの精霊魔法の援護が始まると、一気に情勢は傾いた。
一人、また一人と倒れていく。
それを引き起こしているのはヒカリ。俺たちと戦っているところに死角から近寄り、麻痺が付与された短剣で斬りつけている。
麻痺に対する耐性がある程度あるのか、効きは悪かったが完全耐性があるわけではないようで、麻痺は十分作用した。
そして残った黒装束たちを戦闘不能にしたら、今度は魔法使いたちの番だ。
ゴーレムはその魔法の殆どを防いだために最早ボロボロだが、魔力を再び注入すれば破壊された部位も瞬く間に再生されていく。
それを見た魔法使いたちは顔色を変えたが、彼らも戦いの手を止めることなく攻撃してくる。
「ヒカリ、これで黒装束たちを拘束してくれ」
俺は創造でモリガンを拘束するのに使用した魔道具と同性能のものを作り出すと、それをヒカリたちに渡して、息のある黒装束たちを拘束していってもらう。
彼らは敵だが、救えるなら救いたいという思いがあった。
彼らもある意味被害者かもしれないから。
残るはあの魔法使いたち。
激しい魔法攻撃も、時間とともに収まっていく。
一人、また一人と魔法を撃てなくなっているからだ。
王城勤めの魔法使いだ。きっと優秀な者が多いのだろう。
だが俺が作ったゴーレムとの相性は最悪だったに違いない。
もっともあと少し火力があったら破壊されていたかもしれないから、ぎりぎりの戦いであったことには変わりがないかもしれない。
「なあ、何であのゴーレムはあれだけの攻撃を耐えられたんだ」
ナオトが不思議そうに聞いてきたから簡単な種明かしをした。
ゴーレムは長時間動けるようにと、魔力の吸収の機能がついている。
今回は魔法を食らいながらその魔力を吸収していたから、魔法を受ける度に破壊と再生を繰り返していたのだ。
それが俺たちが黒装束に集中出来た理由でもあった。
「ある意味無敵じゃないのか?」
ナオトは呆れ果てていたが、そこまで万能ではない。
今回は許容範囲内だったから耐えてくれたが、吸収出来る量を超す魔力が流れていたら暴発して破壊されていたに違いない。
少なくともイグニスが放つ魔法は受け止められないし、本気になったクリスの精霊魔法も持ちこたえらるか分からない。吸収のレベルもまだそれほど高くないしな。
逆に言うと、目の前の魔法使いたちはこの国の中では優秀かもしれないが、それを破るレベルに達していないということになる。
あとは時々ヒカリが魔法を付与したナイフを投擲していたから、それを防ぐために攻撃組と防御組に別れざるを得なかったのも影響しているのだろう。
そしてたぶんだが、この国の殆どが、王に近い者たちの多くが、異世界人の血を引く者たちを利用して生きているから、全体的にレベルが低いんじゃないかと思う。
そんなことを考えていたら、ゴーレムは魔法使いたちの元に到着していた。
最早魔法を撃つ力も残っていない魔法使いたちが、ゴーレムの鉄槌を受けて昏倒していく。
一応殺さないように命令はしてある。やはり罪はしっかり償ってもらった方がいい。決して殺すだけなんて生温いなんて思ってないよ?
最後の一人、あの偉そうな男が昏倒したのを確認したら、俺たちもゴーレムに近付き、気絶した魔法使いたちを拘束したのだった。
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