第360話 神界・5
強力な魔法ということで、ファイアーストームとストーンシャワーを合成した。
単純に火と土の魔法の両方のレベルが10だったからそれを選んだが、完成した魔法はメテオだった。
何故これが出来たかは謎だが、強力なようだから使わせてもらおう。
翁をはじめとした数人の魔人たちも一緒に攻撃するようだ。
「準備はよいかのう?」
翁の問い掛けに俺を含め皆が頷くと、翁は杖を掲げて合図を送った。
「ファイアーランス」「メテオ!」「サンダーストーム」「ダークフィア」「…………」
それに従い口々に魔法名が飛び交う。
同時に魔法が発動し、殺到して箱へと向かう。
箱に届くかと思った瞬間。魔法が次々と消えてなくなっていく。
中には結界のようなものに引っ掛かり激しい火花を散らすものもあったが、その結界を破ることは出来ずに爆発した。
激しい振動に襲われよろけたが、どうにか倒れずに踏ん張った。
「……弱い魔法は吸収された感じじゃのう。もしかしたら結界のエネルギーになっておったかもしれぬ。坊主と……だけ再度魔法の準備じゃ。他は警戒及びイグニスたちの援護を行うのじゃ」
翁の言葉が終わる前に、エリザベートからの魔法攻撃を受けた。
それを攻撃の準備に入っていない魔人たちが魔力のシールドを張って防いでいる。
それを見たエリザベートがこちらに向かって来ようとしたが、イグニスたちが間に割って入ってそれを妨害する。
「第二射じゃ!」
翁の合図に今度は四人の魔法が放たれた。
その中には俺の魔法も含まれている。
しかし今度も箱の前に展開された結界を打ち破ることは出来なかった。
ただ最初と違うところは、結界に亀裂が入ったことか?
それを見てエリザベートが焦りの表情を浮かべた。
「畳み掛けるのじゃ!」
翁の言葉よりも先に魔法を既に放っていた。
するとパリンという音を残して結界が砕けた。
「今じゃ集中攻撃!」
ここぞとばかりに周囲の警戒していた魔人たちも魔法を放った。
翁の突然の言葉に誰一人戸惑うことなく、迅速に魔法を撃っている。
今度こそ破壊出来る! と誰もが思ったのに、魔法が着弾する寸前強い魔力の発動を感じた。
それは結界の再構築。
消えたはずの結界が目の前で復活した。それこそ肉眼でも見えるように。
その時、確かにあの透明の箱から魔力の揺らぎのようなものを俺はしっかりと確認した。
やはり翁の言う通り、あの箱に溜まった魔力が何かしら働いているんだ。エリザベートのあの超回復も、きっとそれが原因だ。
エリザベートの方を見れば、こちらの唖然とした反応を楽しそうに見ていた。
最初から俺たちの魔法を防ぐことが出来たのに、あえてあんなことをしたということか?
他にもイグニスたちが優勢だったはずなのに、徐々に押され始めている。これは長時間の戦闘による体力の消耗が原因なように思える。
同じようにエリザベートの体力も消耗しても良さそうなのに、衰えは全く見えない。
「残念だったわね? あれで私に勝てると思ったの?」
余裕の表情を浮かべるエリザベートは、イグニスや囲んでいた魔人を槍の一振りで弾き飛ばすと、疲労の見えるこちら側を睥睨した。
万策尽きた。
そんな絶望的な空気がこちら側に流れた。
翁もワナワナと震えるだけで、言い返すこともない。ただただ肉眼でも見えるようになった結界の膜を見ている。
俺はそんな中、何故わざわざエリザベートが結界を肉眼でも見えるように展開したのか疑問に思った。
力の差を明確にするためか? 心を折って、こちらの反応を楽しむためか?
けど気になる点が一つあった。
確かにあの時、エリザベートは焦ったような表情を浮かべた。
あれが演技だとは思えない。あれが演技だったら、最早女優だ。
それに魔力の揺らぎを感じるごとに、箱の中に溜まったものは確実に減っていっている。
完全に消費させれば、その時こそエリザベートは終わる。
もっとも現状、かなりのストックがあるのは間違いない。
結界を再構築する時もそれほど減少したようには見えなかったしな。
なら直接エリザベートを傷付ければどうか? いや、俺が剣で斬りかかっても相手にならない。せめて使う武器が槍じゃなく剣だったら……と思い、なら俺が武器を替えればいいのか?
槍の間合いに入らず使える武器。数々? のピンチを救ってくれたそんなものが一つだけあった。
俺はアイテムボックスから銃を取り出すと、そこでまた一つの作戦を思いついた。
俺はそれを複製出来そうかを確認し、それが終わったらエリザベートから見えない掌の中でミスリルを複製して、さらにそれを弾丸に加工してみた。
問題なく出来たが、維持できる時間は短そうだ。
あとは物が物だけに、消費MPが高い。
それでもこれなら効くはずだと思い、俺は念話を飛ばした。
『俺に作戦がある。悪いがエリザベートの注意を惹いてくれ』
俺の念話を受けたイグニスが、再び静かに動き出した。
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