第324話 最果ての町・4
「クリスの容態はどうだ?」
俺は看病しているミアの分の料理を運びながら、二人がいる部屋を訪れた。
ルリカとセラもクリス程じゃないが、やはり落胆しているから先に休ませた。
「まだ眠っているよ。熱はないから大丈夫だと思うけど」
神聖魔法では風邪に似た症状や疲労の回復は出来ないからな。
とりあえずミアに倒れられても困るから、まずは食事を食べるように勧めた。
ミアは恥ずかしそうに実はお腹を空いてたの言って、けど慌てずにゆっくり咀嚼しながら料理を食べた。最初に持ってきてやるべきだった。
俺はクリスの分のスープをアイテムボックスに入れて、遠くから鑑定した。
【名前「クリス・エルフィール」 職業「精霊魔法士」 種族「ハイエルフ」 レベル「63」 状態「衰弱」】
やはり体調が良くないようだ。
ここであのことをミアに話すのは良くないな。下手にクリスの耳に入ったら、無理をしてでも行くといいかねない。
「ミアは休まなくてもいいのか?」
「あとでスイレンさんたちが交代で来てくれることになってるから。それまでは私が看ていますよ」
「そっか……」
「……これからどうするんですか?」
「そうだな……とりあえずクリスの体調が回復するまでしばらく滞在かな。コトリから向こうの話も聞きたいし、さっき一緒に料理をした人から、野菜をいくつか譲ってくれって頼まれたしさ」
俺の言葉に不思議がってるミアに、理由を話した。
どうやらこの町にはない野菜を俺が持っているから、それを使って栽培出来るか試したいとのことだった。
「育つんですか?」
「どうだろうな。種じゃなくて苗だったら育てやすいとは思うんだけどな」
勝手な想像だから、種からでもしっかり育つとは思う。そこは農作業の専門家がいるということだから、任せればいいしな。
それから交代の人が来るまでミアと他愛もない話をして、その日は休むことになった。
「なるほどな。コトリたちもダンジョンに行ってたのか」
「もってことは、お兄ちゃんもダンジョンに行ったことあるの?」
「ああ、俺たちはエーファ魔導国家のマジョリカでダンジョンに潜ってたよ。エーファ魔導国家ってのは分かるか?」
「それぐらい分かりますよ。私たちは魔導国家のプレケスってところのダンジョンに行ってたんですから」
俺の言葉にコトリは口を尖らせた。
あまりこの世界のことを知らないから分からないかと思ったら知っていた。
ただ他の国の名前は知らないみたいだから訪れた場所だからのようだ。
そしてコトリからはダンジョンに向かった経緯も聞けた。
もともとは黒い森で魔物を狩っていたようだが、レベルが上がりにくくなったためダンジョンに行くことになったそうだ。
「黒い森の奥には入らなかったのか?」
「はい、禁止されてました。えっと、結界の外に出るから危ないとか難しいことを言ってました。それでダンジョンに行くことになったみたいです」
結界? そんなものがあるのか。もしかしてイグニスが王国内にいたのにもかかわらず王都に近付かなかったのに何か関係があるのか?
それとどうやらコトリたちがダンジョンに行っていたのは、ちょうど俺たちがダンジョンに行っていた時期と重なる。
そう言えばサイフォンがプレケスのダンジョンに入れなかったとか言ってたけど、もしかしてコトリたちが関係していたりして。
「本当に大変だったんですよ。日に日にシュンさんは怖くなるし、それで騎士さんと喧嘩して……カエデお姉さんがいつも間に入って大変だったんです。けどお兄さんの話が本当なら、シュンさんがおかしくなったのは王国の人たちが何かしたからなんですよね?」
「その可能性が高いな。というかそれ以外考えられないな」
コトリも嫌な気持ちになると、どす黒い感情が湧いたりしたようだが、その都度カエデたちと話すことで気持ちを落ち着かせることが出来たそうだ。
「けど納得です。カエデお姉さんがお兄さんのことを心配して、何度も偉い人にお兄さんと会わせてと言ってたんですけど、ずっと拒否されてたんです。お兄さん、もうその時にはお城にいなかったんですね」
「召喚された日に追い出されたからな」
「それは酷過ぎです。けど、そういうことを昔からやってる国なんですね。それでお兄さんはこれからどうするんですか?」
「そのことだが、コトリが会ったっていうエルフのことについて知りたかったんだ。会ったのは一人だけか? それとも他にもいたか?」
「私が会ったのは一人だけです。他にいたかはわかりません」
精霊魔法を教えてもらうために会ったという話だし、教えるだけなら一人で十分だと思ったはずだ。
もしくは魔力がある者……俺たちを召喚するために生贄にされて既にいないかだ。
けどはっきりしたことは分からないし、やはり自分たちで確認するしかないか。
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