第286話 ゴーレム核

 フラーメンを発ち、ナハルに向かう道すがら、休憩時間に色々なものを創った。

 まず一つ目がゴーレム核。これは生命付与でゴーレムを動かすようとして、ミノタウロスの魔石を使って作った。

 これは使えば使うほど学習していき、経験が蓄積されていく。

 イメージとしては学習AI?

 ただ壊れたら今まで覚えたものが駄目になるので、核をミスリルでカバーして堅強に作ってある。重量が軽いのもミスリルを選んだ理由だ。

 また他の利点としては、魔力を流すのが俺じゃなくても稼働させられる点か。

 これは生命付与のスキルのレベルが上がって可能になった。 

 ただしこのゴーレムに命令を出来るのは、核に魔力を登録した者だけなので、パーティーメンバー六人以外が魔力を流しても動かせられない。

 登録すれば利用者を増やすことは今後も可能だが、それには今のスキルレベルだと駄目なんだよな。頑張ろう、レベル上げ。

 ……ちょっと無駄に高性能になったが、一つのゴーレム核を創るのにミノタウロスの魔石三つを合成させたからな。

 核となる魔石があればもっと数を増やせるが、残念ながら高ランクの魔物の魔石がない。

 低ランクの魔石でやると、ある程度の学習能力はあるようだが、複雑な命令を……複数の指示を出すと動かなくなってしまった。

 燃費も悪いから長時間稼働させるにはそれなりの魔力も必要になってくるのも問題の一つだ。


「それで次は何をしてるの?」


 ミアとクリスと一緒に作業していれば、ルリカ尋ねてきた。

 今考えているのは、高性能のゴーレム核が二つあるので、それを搭載するゴーレムの形として人型と動物型を作りたいと思っている。

 そこで二人に相談に乗ってもらいつつ、魔物の骨を錬金術で加工して骨組みを作っている。

 学習能力のために今現在はミアが作った特製人形に核を乗せているが、それでは戦闘に使えないからな。

 理由を話せば、「ほどほどにね」と言って見張りに戻って行った。

 確かにこのまま作業に没頭すると、疲れを残したままになってしまう。

 きりがいいし今日はここまでにするか。もしかしてそれを見越して、ルリカは話し掛けてきたのか?


「とりあえず今日はここまで、続きはまた今度な」


 そう言うと、ちょっと名残惜しそうな顔をされた。

 分かるよ。興が乗っている時って続けたいと思うよな。

 けどここで無理をすれば体への負担が心配になる。

 まだナハルまでは順調に歩いても八日は掛かる計算だし。

 街道沿いは比較的安全ということだが、野営は少し道から離れたところで行うのはここでも変わらない。

 馬車持ちだと舗装具合でそれ程離れることは出来ないが、利用者の多い街道だと馬車用の停車場スペースが作られたりしている。

 ただこれにも良し悪しがあり、利用者には便利な反面、襲撃場所にもなりやすい場所にもなっている。

 なので馬車の利用者は襲撃されても防げるように、仲間を募り固まって休んだりする。

 これはあくまで顔見知りがいれば、の話だな。

 見ず知らずの者は追い出されたりするのは、それがはっきりと悪さをしない保証がないからだ。

 もっとも仲間の人数の多い場合は、受け入れたりするようだけど。


「あまり徒歩で移動する人はいないんだな」

「ソラ、現実を見なさい。じゃなくて、いないのよ! 私たち以外は」


 うむ、確かにルリカの言う通りだ。

 正確には、馬車で移動する者も皆無に等しい。

 フラーメンを発って五日経ったが、あれからすれ違った馬車は三台ほど。追い越された馬車は……一台だけだったな。

 人がいないから休憩中にもゴーレム作成の時間をとれるからいいんだけど。

 ゴーレム核も、休憩中に魔力を流しては誰かが動かしている。

 ヒカリなんて的を用意して、それに攻撃させてるからな。

 人型には木片を細く削ったものを与え、獣型は体当たりしている。

 木片は折れ、獣型ゴーレムはポヨーンと音がしそうな感じで跳ね返ってきているが、これはきっと体の素材の所為に違いない。

 それでも指示通り動くのが面白いのか、ヒカリは興味深そうにその様子を見ている。

 セラもチラチラと視線を送っている。

 本当は自分で魔力を流して動かしたいみたいだが、試しにやったときちょっと動いて止まってしまったからな。

 思いのほか楽しみにしてたみたいで、肩を落としていたのを今も覚えている。

 低魔力で長時間稼働。これが今後の目標か。

 本当はある程度自分で魔力を精製出来るようなものが作れたら一番なんだけど、そんなものは今は存在しないみたいだし。

 あっちの世界みたいに太陽光を利用する? それとも……。

 何かスキルが増えて、やりたいことが増えて、ダンジョンのように危険なところを探索しているわけじゃないのに、忙しさはそれ以上になったような気がする。


「ソラは何か楽しそうですね」

「うん、生き生きしてる、ね?」


 クリスとミアからそんなことを言われたな。

 確かにやれることが増えるのは楽しい。それが形になって、目に見えて分かるから実感も湧きやすい。

 それにゴーレムが完成したら、将来的には色々なことに使えそうだからな。

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