第270話 アルテアダンジョン・9
ブラッドベアーの血抜きをしつつ食事をすることに。
血抜きする光景にもすっかり慣れてしまったな。
最初の頃は血を見るだけで気持ち悪くなったというのに。本当に慣れとは恐ろしい。
「結局何が原因だったんだろうな?」
「あんなに興奮していた理由?」
クリスの言葉に頷く。
魔物の考えなんて分からないから、何があってそんな状態になったかなんて分からないだろうけど。
あんなに血をまき散らしていたから先に何かと戦って興奮状態になっていたのかと思ったら、調べてみると外傷は特になかった。
「とりあえず今はしっかり休む方が良いさ。そしてミノタウロスをどうするか考える方を優先するさ」
セラの言う通りか。
ブラッドベアーと戦うために移動したことで、MAPの外周に複数の反応を捉えた。
位置的にもミノタウロスの集団だと思う。
もう少し進めば詳しい数を調べることが出来ると思うが、問題は何体いるかだな。
「魔法で倒せると思うか?」
「ミノタウロスは魔法の効きにくい魔物ですから難しいかもしれません。あとは月桂樹の木のことを考えると、戦う場所も考える必要があるかもです」
クリスの言う通りだ。
戦いの余波で木に被害が出るのは避けなくてはならない。
そもそもダンジョン内の木とか、どうなるんだ?
外と同じように成長するのかな?
マジョリカダンジョンだと変遷でリセットされてたけど、ここはあれとは違う感じみたいだし。
農業をやって野菜を栽培してるんだから、自然と成長する感じかな?
それを考えるとここの惨状は……帰ったら報告だけしておいた方がいいかな?
ちなみに伐採された木は、その後小さく加工されて今は俺のアイテムボックスの中だ。木は色々と使える貴重品だからな。
もっとも俺たちパーティーだと食事に使われることが一番多いけど。
「理想は相手の力量を確かめることが出来たら一番なんだけどな。こんなことならマジョリカでミノタウロスと戦ったことのある奴に話を聞くんだったよ」
「けどギャバンだったっけ? 彼の実力を元に考えるなら、ボクたちなら戦えそうさ」
「それは違うと思うよ。個ではセラは強いけど、何も一対一で戦うわけじゃないでしょ? 状況次第では色々戦いようはあると思うし」
ルリカの言う通りなんだよな。特に下層に行くパーティーは、それなりの人数を揃えていく。
さらに迷宮の特性……ぶっちゃけ通路の広さ次第では、一度に戦う数を調整することが出来るだろうし。
やはり当初の予定通り、まずは相手の
「一応鑑定でミノタウロスのレベルを調べて見るよ。それを確認してからどうするかまた話し合わないか?」
「それが一番なのかな」
ということで早速移動開始。
大人数で移動しても見つかるリスクがあるため、ある程度は皆で進んで拠点を決めたら、そこからは俺とヒカリの二人で移動した。
単独行動はさすがに駄目だということで、気配を消すことが上手いヒカリと一緒に行くことになったのだ。
ミノタウロスの目視確認は、森の外縁からでも出来た。
ちょうど二体が一緒に行動して比較的近くまで移動していたからだ。
俺はそれを木の上から見下ろしている。
木登りなんて初めてだったが、高いステータスとヒカリの指導のもと登ることが出来た。
「主、わかる?」
ヒカリの言葉に鑑定をミノタウロスに使った。
【名前「————」種族「ミノタウロス」Lv「83」状態異常「なし」】
【名前「————」種族「ミノタウロス」Lv「87」状態異常「なし」】
そのレベルはセラよりも高い。
さらには個体差があるのか、レベル差がある。
「ヒカリ一度戻ろう」
何かを察したのかヒカリが頷くと、隣の木に飛び乗った。
俺はそれを見て、素直に下に降りた。
は~、やっぱ地面の上は落ち着くな。別に高所が怖いわけじゃないよ?
ヒカリもそれを見て降りてきた。
「どうだった?」
拠点に戻るなりルリカに聞かれたから正直に答えた。
「セラよりも強いのですか?」
あ、ミアは顔を青ざめている。
「単純にレベルが高いと強いってわけじゃないよ」
安心させようとしたが無理だった。
そうだよな。人だったらそこに経験のあるなしで強さが決まるが、魔物は生まれた瞬間から戦い方を知っているような感じだ。
だから生まれたてでも普通に戦える。そこから経験が加わりさらに強くなる感じだから、単純に魔物は強い。
もちろん種族によって弱い魔物だっている。ゴブリンとかスライムとか。
ではミノタウロスはどうか?
普通に強いみたいだよな。身体能力もそうだが、何より耐久力が高いのが厄介だ。
魔法は効きにくいだろうし、直接攻撃はミスリルの武器だから通用すると思うが油断は禁物だ。
「一番の問題は九体のミノタウロスを確認したことだ。あのレベルで複数同時に相手をするとなると、正直言って辛いと思う」
「理想は個別に撃破さ」
セラの言う通りだ。
一気に勝負を決めようとしないで、時間を掛けて少しずつ誘い出して倒していくしかない。
「なら作戦を考えよう」
俺の言葉に、頭を突き合わせて意見を言い合うのだった。
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