第265話 アルテア・8
食事が終了したら、食後のお茶を飲みながら話の続きをすることになった。
「うむ。ヒカリを保護したとはやるじゃないか」
とはサーク談。
ヒカリはとある村の生き残りで、行商をしていた時に保護したという作り話を信じている。
さすがに元
それを話せば俺のことも色々と話さないといけなくなるし。
「ミアさんとセラさんとは聖王国で出会ったのですか」
「ああ、セラは奴隷商館にいた所を購入した。ミアとはちょうど降臨祭の時にごたごたがあって、その縁で一緒に行動することになったんだ」
「降臨祭と言えば、聖女様が殺されたという噂を聞きましたが本当ですか?」
サハナの問いに厳かに頷いた。
それを見ていた仲間が笑みを我慢しているのが見えるんですが?
「それで事情を聞いたソラさんが、ルリカさんとクリスさんに連絡を取ってマジョリカで合流した訳ですか」
ユイニが縁とは不思議なものですねと呟いている。
ちなみに俺とルリカたちの出会いも、冒険者としてでなく行商の途中で助けられたということにして話している。
その恩を返すために奴隷商館で見つけたセラを買ったことにしてある。
「マジョリカでダンジョンに挑戦したのは何故ですか? すぐにエリスさんを探しに行こうとは思わなかったのですか?」
ぐいぐいサハナは聞いてくるな。今にも身を乗り出しそうな勢いだ。
「さすがに路銀が心許なかったというのもあるが、俺は錬金術を使うことが出来るんだ。それでダンジョンで貴重な素材や魔石を手に入れたいと思って、少しダンジョンで素材集めをしたいと頼んだんだ」
「ボクを奴隷から解放するための、資金を稼ぐって目的もあったのさ」
セラが付け加えるように言ってくれた。
かなり俺の話は脚色されていて、さらに今初めて話す内容も多いのに、皆上手いこと話しを合わせてくれて助かる。
嘘を言うのが苦手そうな子たちは口を結んで聞き手に回っているけど。
「それで知り合いの、レイラさんでしたっけ? マジョリカの領主様の娘さんの親友を助けるために、月桂樹の実を求めてここに来たわけなんですね」
「そうなるかな。七階まではもう少しだから、あとは無事手に入れられるかどうかだな」
ユイニは「手に入ると良いですね」と言ってくれている。
「しかしミノタウロスですか。昔アルフリーデが倒すのを苦労したと話していましたね」
アルフリーデというとダンジョンのことを説明してくれた隊長さんか。確かセラよりもレベルは高かったんだよな。
「ちなみにお姉様。それはいつの話ですか?」
「三〇年ほど前だったような気がします」
その言葉に「えっ」となった。
ヒカリ以外の面々も驚いている。
「どうしたのですか?」
ユイニが首を傾げて聞いてくる。
「お姉様、たぶんソラさんたちは年数の話で驚いたのだと思いますよ」
「なるほど。確かに周囲の人たちもそうなので忘れていました。私たち竜の血を受け継ぐ者は、エルフと同じように長命の種族になるのでした。あ、ちなみに私は一二五歳になります」
あっけらかんと言うユイニの言葉に、開いた口が塞がらないとはこのことだと思った。
確かドゥティーナも長命とは言っていたが、それにしてもユイニの見た目はどう見てもルリカたちと変わらない。
しかし三〇年前だと、その当時と今とではレベルの差がかなりついてそうで参考にならないな。もっともレベル=強さかというとそうでもないのだが。
「しかし、隊長さんならミノタウロスをどうにかできたりしないのか?」
「複数いるみたいですから。それに今のアルフリーデは、あまり自由に動けない事情もあるので……どうしようもないと父上が命を下すと思いますが、先日も話した時は今はその時ではないと言ってました。意味はわかりませんが」
ユイニの言葉からは、王には何か考えがあって放っているような感じを受ける。
例えばミノタウロスと部下であるアルフリーデたち? の力量を比べて、被害が出ないようにしているなど。考え過ぎか?
いっそアルフリーデと手合わせをお願いして力量を見てもらうのが一番かと思うが、それも難しいだろうしな。
その後は再び雑談になり、普段ユイニたちが何をしているのか話を聞いた。
サークが元気よくダンジョンで鍛えていると言ってたが、ユイニからは
「もう少し勉強も頑張りましょうね?」
と言われていた。
落ち込むその姿を見て、少し慌てた様子で、
「サーク君は私よりも強いのですから」
と付け加えていた。
しかしサハナの、
「お姉様は魔法の方が得意なんですから」
という言葉に、元気を取り戻したサークが再び撃沈していた。
それは魔法があればユイニの方がサークより強いという意味なのか。それともサークは魔法が苦手なのか。撃沈した理由が分からないな。
しかし本当にこの子、サークには容赦がないな。双子だからというのもあるのだろうか?
楽しく話していたら、かなり遅い時間になっていた。宿とかだと、既に寝ていてもおかしくない頃合いだ。
「ソラさんたちは明日はどうするのですか?」
「ドゥティーナの都合もあるし、一日休んで翌日に六階に挑む予定だ」
「……なら明日は半日、この子たちの面倒を見てもらってもいいですか? 特にサーク君が剣の稽古をしたいみたいですので」
ユイニに頼まれてサークを見たら、視線を逸らされてしまった。
思うところはあるが模擬戦をやるのはいいかもしれない。
了承の返事をしたら、明日は親衛隊の訓練があるからそれに参加すると良いと言われてしまった。
もしかしてアルフリーデも参加したりするのかな?
サークを出汁に、気を遣われたのかもしれないな。
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