第250話 閑話・11

「どうなってんだよ。ええ!」

「まぁ、落ち着けって」

「落ち着けだ? これが落ち着いてられるかってことか!」

「……なぁ」

「あ?」

「少し黙れよ」

「⁉ …………」

「それで、どうなんですか実際のところは?」

「は、はい。もちろん全力を尽くします」

「それは当然でしょう? それよりも、そもそもあの襲撃は防げなかったんですか?」

「そ、それは……」

「……もしかしたら内通者がおったかもしれん。それについては調査するように話しておる。もちろんあの国に対して圧力も掛けておる。それとお二人に関してだが、魔導国で効果の高いポーションが発見されたとのことだ。それを入手するために今動いておるところだ」

「そう、なのか……確かこの世界にも聖女がいるという話だったが、その人に頼むことは出来ないのか?」

「……言いにくいことなのだが、実は聖女は今不在なのだよ」

「不在?」

「は、はい。実は、その、魔人に殺されたとの報告を受けています。はい」

「……分かった。とりあえず治療の方を早急にしてくれ」

「も、もちろんです。はい」

「……おい、行くぞ」

「…………」

「……剣聖様。少しだけお時間よろしいですか?」

「……分かった。先に戻ってな」



「それで何処に向かっているんだ?」

「……実は剣聖様に試して欲しいことがありまして……こちらになります」

「ここは?」

「こちらは限られた者しか入れない封印の間になります」

「限られた者しか入れない?」

「はい、王家の血を引く者と……どうぞこちらに」

「……ああ」

「……勇者様のみ入ることが可能となっております」

「…………」

「やはり、勇者の称号を得たのですね剣聖様」

「ああ、まあな」

「ではこちらに……」

「…………これは? 剣?」

「はい、勇者様のみ使うことが出来ると言われている聖剣です。どうかこれを使って、魔王を滅ぼして下さい」

「…………分かった。ならこちら……」

「分かっております。パラディン様……及び聖女様の治療は任せて下さい」

「それでいつ出立するんだ?」

「今各国に呼び掛けているところです。準備が出来次第総攻撃を仕掛けます。勇者様たちもその時に同行をお願いします」

「……分かったが……役に立つのか?」

「腕の立つ者を集めております。それに騎士団も出る予定です。出来るだけ勇者様たちへの負担を減らすつもりでおりますので……」



「終わりましたか?」

「ああ、まったく五月蠅い餓鬼共だ」

「……いかがいたしますか?」

「当初の予定通りポーションの手配を急げ。まだあの二人には働いてもらわないとだからな。奴らを使うための餌は必要だ」

「……ですが、その。看た者の報告では、聖女の方は難しいという話ですが……」

「ああ、それは構わん。パラディンの奴が治れば勇者も働くだろう……そうだな、治療の時に少し洗脳を施しておいた方が良いかもしれんな。あれはかなり自我が強いようだが、今の弱った状態なら通用するだろう。完全には無理でも、こちらに有利に動くように誘導できる程度にはしておけ」

「……分かりました。そのように手配します」

「それと聖女の方はそうだな……結界を発動させるための予備として置いておくか」

「……宜しいのですか?」

「もったいないが、万が一の備えは必要だからな。剣王が何か言ってきたら、戦える状態でないため保護をしたとでも言っておけ。それで魔導王はどうなっておる?」

「かなり錯乱しているようです。精神状態もかなり不安定なようです」

「なら術が掛かりやすいかもしれんな。魔導王は魔王に対して役にたたんだろうが、魔物の露払いには使えるだろうからな」

「……御意に」

「まったく。魔王を討伐した後の方が大変だと言うのに、今回の召喚者たちは使えない者が多くて困ったものだ」

「…………」

「あとは各国への通達だな。果たしてどれぐらいの国がその重い腰を上げるか……」

「……動かなかった場合はどうするつもりで?」

「……どうなろうが結果は変わらんよ。魔王は勇者の手によって滅ぼされるのさ。今までも、そしてこれからも、な」

「…………」

「非協力的な国には、あとでその代価を支払ってもらえばいいのだからな」



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