第234話 相談
「ヒカリはもう寝たのか?」
お腹一杯になってうつらうつらしていたから、ミアが寝室に連れて行った。
程なくして戻って来たから尋ねたら、ぐっすり寝ているらしい。
「山の中をあれだけ走れば疲れるさ」
と、セラが苦笑する。
食材を求めて、右に左へと大忙しだったらしい。ルリカも頷いている。
クリスが不思議そうにしていたが、
「昨日はクリスを気遣って抑えていたみたいさ」
と、セラが今日一日の行動を詳しく説明している。
確かにハードだな。駆けて追ったら間違いなく俺は息切れをするな。
「それで話って何なの?」
おっと、横道に逸れたな。
「今後の方針についてだけど、どうしようかと思って」
このまま足止めを喰らって時間を潰すなら、別の方法を検討する必要がある。
例えば月桂樹の実が入手出来ないのなら、ひとまず延命処置として俺が作る石化治療薬を増やすために、コカトリスの素材を集めてもらうなど。
それで時間を稼いで、月桂樹の実が手に入ったら改めてそこで治療薬を作るなどだ。
ただクリスたちからすれば、島に渡って奴隷商の確認はしたいと思っているかもしれない。
いや、マルテにも奴隷商があるし、そこで聞けば調べることは可能だろうか? 守秘義務などあって無理だとアルテアだけでなく、竜王国内の他の町にも足を延ばさないといけなくなるかもしれない。
「確かにコカトリスの素材に関しては、頼んでおいた方が良いかもしれません」
「そうね。あとは奴隷商だけど、それに関しては既に頼んであるわ。エリス姉は……エルフは目立つし、マルテに戻った頃には分かると思う」
クリスに続いて、ルリカが説明をしてくれた。
なら奴隷商に関してはそれで問題ないか? 本当なら自分の目で確認したいところだけど、それが無理なら仕方ないだろう。
相手が嘘を付いているかは、クリスがいれば分かるらしいし。
「それで、だ。話は次に向かう場所を決めたいと思って。エルド共和国に戻るか、それとも王国を目指すかだ」
「一度報告に戻れたらとは思うけどね」
ルリカはチラリとセラを見たが、その案をセラが拒否した。
「村に戻ると王国に向かうのが大変さ。それに魔導国にも行かないといけないとなると、時間がどれぐらいかかる分からないさ」
「けど、コカトリスの素材だってすぐに手に入るわけじゃないのよ?」
「それでもさ……それに、王国に行くならしっかりした準備は必要さ」
四人の目が俺に注がれる。
確かに王国に近付くのは俺にとってもリスクがある。ヒカリの顔を知る者だっているかもしれない。
仮面だけじゃない、それこそクリス並の変装……変身が必要になってくるかもしれない。
「仮になんだけど、もし王国内にエルフとかを監禁出来る場所があるとしたら、何処にあると思う?」
「王国は広いからね……怪しいと思えば何処だって怪しく見えるし……」
「あ、あの。ヒカリちゃんに聞いても駄目なんですか?」
腕を組んで唸るルリカの横から、ミアが質問してくる。
「ヒカリの記憶はあやふやだからな。それに変に刺激して辛いことを思い出して欲しくないってのもあるんだ」
「そ、そうですよね。ごめんなさい」
「いや、確かにそれは俺も考えたからさ」
縮こまるミアに俺も同じことを考えたことを伝える。
それほど手掛かりがないんだよな。単純に考えれば、王都だと思うけど、そんな単純だろうか?
「クリスはどう思うのさ」
「……私は、王都だと思います。私の精霊が、王都の中心に近付くと酷く怯えたというか……警戒したから。何かはあると思います」
「……それに召喚されたのが王城、だからか?」
「……はい」
最悪の考えが思い浮かぶが、クリスははっきりと答えた。
目を逸らしても仕方がない、か。
見ればクリスの手の中には精霊のお守りが握られていた。
セラのこともある。根拠のあることじゃないが、それでもそれが心の拠り所になっているような気がする。
「それじゃ戻ったらまずは……錬金術ギルドを通してボーゼンとウィルさんにコカトリスの件を頼んでおくよ。あとは数日様子を見て、無理そうなら魔導国経由で王国に行こう」
しかしマジョリカを出た早々戻るのか……どんな顔をして戻ればいいんだ?
まぁ、月桂樹の実を手に入れることが出来なかったことを話して、王国に行くということを伝えればいいとは思うけど。
「けど王国に行くなら、魔導国から聖王国経由の方が楽かもしれませんね」
クリスの言葉に地図を思い出す。
確かに魔導国から王国に入るには山越えか……一応馬車で移動は可能なようだけど、天候次第では時間がかかるという話だったな。
それなら聖王国経由で王国に入った方が予定は立てやすいかもしれない。
魔導国の首都を見てみたいと思うが、そこは時間的な余裕が出来てからでもいいしな。
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