第233話 エクストラマナポーション
大量に積まれた魔力草を前にして、俺はせっせとマナポーションを作る。
傍らではミアとクリスがお昼の準備をしている。
ヒカリたち三人はお弁当を持っていったから戻って来ないと思うので、作るのは三人分だ。
まとめて皆の分のお弁当を用意しても良かったが、ミアがお昼を作りたいということでこちらに残る三人分はあえて作るのをやめたのだ。
俺は全ての魔力草をマナポーションにしたら、今度はそのマナポーション同士を掛け合わせて合成する。
最初の一回は二つのマナポーションが一本になったが、効果に差は殆どなく、少し量が増えたちょっと大き目な奴が手の中に残った。
今度は魔力を籠めながら、より明確なイメージをしながらスキルを使う。
イメージするのは濃縮。より濃厚に、より効果を高めるように。
すると今度は一回り小さなポーション瓶が手の中に残った。
鑑定すると、【エクストラマナポーション】と名前が付いている。効果に関しては飲んでみないと分からないか。
少し休憩すれば時空魔法を使える分のMPが回復するから、それを使ってからだな。MPがない方が効果が分かりやすいだろうし。
「完成したのですか?」
見慣れぬ形のポーション瓶を見て、クリスが聞いてくる。ミアもこちらを見ている。
「ああ、一応完成かな? あとは効果の確認だけど……クリスたちも試してみるか?」
数値化されていないから、クリスたちが使った場合は感覚的なものになってしまうが、それでも魔力の流れを感じられるようになってからは、体内の魔力をより強く感じるようになっているみたいだ。
二人は互いに顔を見合わせてから、同時に頷いた。
ならもう二本追加で作らないとだな。
その後食事を摂ってから、二人は出来るだけ魔力を消費するため魔法を唱えている。
俺も二人に合わせるように時空魔法と……重力魔法を使ってMPの残量を微調整する。
「それじゃ飲むか?」
順番に飲んでも良いと思ったのに、何故か同時に試すことになった。
三人で向き合い、その手に持つのはポーション瓶。飲み会か、怪しい儀式か、傍から見たら変な絵面かもしれない。
頷き、一気に
ステータスを見ていたら一気に半分ぐらいMPが回復した。
「おぉ~」
と、その回復量を見て驚きの声を上げたが、ここで一つ失敗に気付いた。
これが単純にMPを五〇〇近く回復する効果があるのか、総量に対して約五割回復する効果があるか分からないことだ。
そこでふと思い出し、魔力察知を使って二人を視た。
するとどうだ。二人の魔力量が一気に回復している。特にミアは全回復しているような気がする。
そこから出る結論は、固定で五〇〇近くのMPを回復する効果か?
俺はもう一本エクストラマナポーション(EXマナポーションと命名)を手早く作ると、それを飲んだ。
うん、間違いないな。
「凄いです。今まで使っていたポーションと全く違います」
クリスが興奮して言ってきた。
珍しいな。と思ったが、クリスは精霊魔法の影響で、結構MP管理に苦労しているからかな?
「これがあれば、たくさんの人が助けられそうです」
ミアはミアで感動しているが、飲み過ぎ注意だぞ?
「とりあえず量産しておきたいから、魔力草を頑張って採るとするか」
二人には、とりあえず枯れていなければ採取してくれるように頼んだ。
今回使ったEXマナポーションは、高品質のものだった。
だから少し品質の落ちるものも作って、その効果を確認しておきたい。
「しかしこれだと売ることは難しいかな?」
クリスに尋ねたら、分からないと言われた。
特に濃縮する技法や、魔力を籠めるとか、既存の錬金術の方法にあるか分からないからな。
フルポーションの時とは、少し手順が違うから、下手に錬金術ギルドに相談すると、魔力だ何だと説明しないといけなくなりそうだ。
まだボーゼンみたいな感じの人ならまだいいけど、下手な人に当ると何かと面倒に巻き込まれる可能性もある。
これはマジョリカに行った時に相談かな?
「当分は身内で使うために作成するよ」
「その方が良いと思います。それに私は無茶な魔法の使用をしなければ、既存のマナポーションで十分ですから」
クリスは基本的にMP管理をしっかりしているからな。
昔からMPが切れると変身が解けてしまうから、魔法の運用には特に気を付けていたみたいだし。
「ならいざという時の保険用にEXマナポーションを数本作って、あとはマナポーションを作るとするよ」
EXマナポーションは、当分の間熟練度を上げるため用だな。何とも贅沢な使い方か……。
それでもスキルのレベルが低い間は、現状急を要する以外はスキルを使って熟練度を稼いでいく方がいいからな。
特にヒカリに襲われた時のように、戦闘中に急にスキルを覚えないといけない状況だって今後陥る可能性もあるから、レベルがこれ以上上がりそうもないから、使用を控えてとっておきたいし。
それにこの旅が終われば、料理みたいな、生活で役に立つスキルを覚えたいとも思っているからな。
「それじゃヒカリたちが戻るまで、頑張って採取を続けるか」
やる気に満ちた俺の言葉に、二人は何故か生暖かい目を向けてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます