第213話 マジョリカ・23

「なるほど、なるほど。……その情報料とすると白金貨五枚ぐらいだろうか? 一括は難しいから分割でも良いかな? 振込になるが、錬金術ギルド用のカードのが良いかな? 錬金術ギルドからは特に干渉はないし、文句を言ってくるようなとこがあれば、吾輩が黙らせよう」


 結構目が本気だな。ただ相場が良く分からないから適正かどうかの判断がな。

 ウィルに視線を向けると頷いているから妥当なところなのかもしれない。

 そもそも俺の作り方が特殊だから、それで出来るかどうかは分からないしな。


「ここで話していいのか? それとも別室の方がいいか?」


 ボーゼンに聞いたらここで構わないと言う。そもそもダンジョンで俺の作り方を見ているものがいなかったかと思うが……良く覚えてないな。


「とりあえず作り方なんだが……」


 ボーゼンからポーションを受け取り、作って見せる。ただ単に三つのポーションを混ぜるという単純な方法だが、今まで誰かが試したことがなかったのだろうか?

 実際ボーゼンはそれを見て大層驚いていた。

 ただその理由は予想外の答えだった。


「な、何故それで成功するのだ⁉」


 どうやら以前から試したことはあるようだが、一度として成功したことがなかったとのことだ。しかも誰一人として。


「ん~、まず俺の作った感じの意見としてだが……」


 俺は先ほど作ったフルポーションを取り出し三本を机の上に並べた。

 それぞれ品質が違うため、その色の濃さも違う。二本は品質・普で同じだが、それでも色に微妙な差がある。


「まず第一に、使用するポーションは品質の良いものが望ましい。さっき試しに色の薄いモノと濃いモノを混ぜて作ったら、成功率が悪かった。四本試して成功したのは一本だった。そして出来上がったのがこれだ」


 一番色の薄いモノを指して言う。


「あとはもしかしてだが……用意する三本のポーションは、同じ製作者のもので作った方が良いのかもしれない」

「どういうことであるか?」

「少なくとも、だが。俺は自分で作ったポーションでフルポーションを作った場合、今まで失敗はなかったってだけだ。ちなみに俺がポーションを作る時は、品質の良い薬草を使って作ってる。残念ながら俺のポーションの手持ちは今ないから、どんなものかを見せることは出来ないがな。ただ色の濃さから、品質は悪くないと思う」


 実際に鑑定すれば、回復効果・大。品質・良となってるわけだが。


「なるほど、なるほど。検証し甲斐がありそうであるな」

「そうだ。それで追加で悪いんだが、品質の良い薬草を、魔力草と活力章の三種だが、それを各五百枚も要求したい」

「自分でも作るのであるか?」

「そうだな……今の所、ケーシー。まだ石化が治っていない者に効く治療薬は俺しか作れないようだからな。ある程度作っておきたい。と言っても、数はそこまで作れないと思うが」


 ついでだから俺が作った石化治療薬のレシピも伝えておいた。流石に材料を言ったら眉を顰められた。あとはあるアイテムの情報を尋ねたら、分からないと言われた。一応情報は収集してくれるとのことだが。


「了解したのである。う~む、今日は有意義な時間を過ごせたのである。では早速……商業ギルドに殴り込みに行ってくるのである。薬草は明日……は無理かもだが、近日中に送るのである。ただカード作成はギルドに来てもらわないとだから、一度来て欲しいのである」


 それだけ口早に言って、用は済んだと駆け出していった。


「あれで良かったのかな?」

「まぁ問題ないだろう。ポーションに関してはギルドで作れるならそれに越したことなはい。便利だとは思うが、実際にそこまで需要があるとは思えないしな」

「それは興味深い。何故そう思うんだ?」


 それまで黙っていたジェイクが聞いてきたから俺の考えを伝えた。


「なるほど。確かに緊急時にはいいが、普段使いとしては難しいかもしれない。値段次第だと思うが」

「俺としてはそれをベースにして、新たなポーションを作ろうとしてると思うけどな。あとは三種類じゃなく、二種類を混ぜ合わせたポーションとかな。そっちの方が需要がありそうだけど」


 HPとMPを。HPとSPを同時回復という奴の方が需要があると思う。

 そんな俺の話を、黙ってジェイクは聞いていて、時々疑問に思ったことを質問してくる。

 アッシュの言う通り、少しジェイクの印象が変わったような気がする。環境に慣れてきたのか、それとも別の要因か。ギルドで顔を突き合わしていた頃と比べると、険がとれたような気がする。

 そんな俺の視線に気付いたのか、


「悪かったな。会った当初は少し、いや、かなり気分が悪い対応をとっていたと思う」

「ああ、そのことはアッシュから聞いてるからいいよ。それに仲間を信じたかったというその気持ちは分からないでもないからな」

「そう言ってもらえと助かる。何か力になれることがあれば言ってくれ」

「そうだな。ボーゼンに言ったように、月桂樹の実が欲しい。あとはそうだな……高品質の魔石があれば、少し譲って欲しいかな?」


 その言葉が予想外だったのか苦笑していた。もっと無理難題を言われると思っていたのかな?


「とりあえず私の方からも冒険者ギルドや商業ギルドに話しをしておこう。優秀な冒険者? が活動出来ないのは不利益以外の何物でもないからな」


 そう言ってジェイクはウィルに一礼して去って行った。

 変われば変わるものだな。それがジェイクに抱いた素直な感想だった。

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