第198話 マジョリカダンジョン(ヨシュア視点)
ダンジョンの攻略に迷っていた時に、レイラ様が二十一階から二十五階前の登録まで行くパーティーを募っていることを聞いて立候補しました。
他には金貨千枚と外部のパーティーが参加するということでした。
そのパーティーのメンバーは学園の見学をしていた子たちで、一度学園で見たことがありました。男の方がさらに一人いましたが、レイラ様が心を許して話しているのを見て、少し関係が気になります。責任感が強く、常に凛としているイメージがあったのに、コロコロ変わる表情に少し驚きました。
実際ダンジョンに入っての力量は……正直言って負けたと思います。
僕たちもそれなりにダンジョンを潜っていたので自信を持っていましたが、その戦い方を見て差を感じました。特にセラさんという獣人の方は、もしかしたらレイラ様以上かもしれません。
聞くと二十階のボスを六人で倒したと言います。信じられません。
その後予定通り二十五階の登録が終了し、休んでいたところにレイラ様がまたやってきました。
ソラさんたちのパーティーが二十五階に挑むという話でした。
レイラ様たちと金貨千枚はさらに下の階に行くので、今回行くとしたら二つのパーティーでということになりました。
メンバーと相談して、悩んだ末行ってみることになりました。無理なら話し合って引き返せば良いと思ったのが一つ。もう一つはそろそろ進級が近いので、少しでも下の階に行きたかったという下心もありました。
探索は危なげなく進み、順調すぎました。そう、順調すぎたのです。
特に夜にオークゾンビとの戦闘が回避出来ているのが大きいです。夜だけでなく、昼間の戦闘も少ないような気がします。セラさん、ルリカさん、ヒカリさんの索敵能力が高いためだと思います。僕らだけでは、たぶん学園の生徒だけのパーティーではもっと戦闘回数が増えていたと思います。
ただその弊害が途中で起きました。オークゾンビと戦わないままだったので、相手の強さが分からないということ。
ここの階とオークゾンビの習性を考えると、必ず戦う時は来ます。その時相手の強さが分かっているのと分かっていないのとでは心構えと戦い方が変わります。
問題はここで戦うと、かなりのオークゾンビが寄って来て消耗させられてしまうかもという点。そこで話し合いの結果、夜明け前に戦うということになりました。
ダンジョンの特性を利用して戦うという意見は、実に理にかなっていると思いました。目の付け所が違います。
早めに目を覚まし、準備をして戦うという段階で頭を抱える問題が生じました。そんな理由で反対するとか……今後のダンジョン探索に不安を覚えます。あとソラさん、ヒカリさんに甘くありませんか? 僕も確かに弟や妹を甘やかすことがあるので分からなくもありませんが、時と場所は選びますよ? たぶん……。
あと確かにソラさんの作る料理は美味しいですし、ついここがダンジョンの中だと忘れてしまう時があります。今後の食事事情を思うと胃が痛くなりそうです。大丈夫かな?
そしていよいよ目印の像を発見しました。
ここまで来れば階段まであと少し。ですがここからが本番とも言えます。
資料によりますと、階段までの距離は一日で移動できる距離ではありません。一日中走り切ればいけるかもしれませんが、現実的ではありません。
そこでオークの集落を攻撃して、そこで夜になる前まで休むことになりました。
ここでもオークの縄張りに対する習性を利用しました。皆で話していると、次々と意見が出て来てアイデアが浮かびます。これは今後、僕たちだけになった時も取り入れていきたいです。
夜の戦闘は、正直言ってもうやりたくないと思うほどの激戦でした。
神聖魔法の使い手のミアさんがいたのは大きいと思いますが、ソラさんが提供してくれた聖水や回復薬がなければ持たなかったと思います。
何より基本的に料理をしているイメージしかなかったソラさんがあそこまで戦えるのに驚きました。商人と言っていたのに剣も使うし魔法も使う。
確かに多少は戦う姿を見ましたが、夜通し戦える体力があるとは正直思いませんでした。
しかも慌てることなくゆっくり歩いて間合いに入り一刀両断。もちろん歩いてるだけでなく走る時もあるようですが、慌てずじっくり対処している方が多いように見えます。
ふと思い出すのは無防備なレイラ様の姿。信頼というか、どこか頼りにしているような感じ。きっとこの姿を知っていたのだと思います。
全てが終わり日が昇りました。
もうくたくたで動けません。
見るとパーティーメンバーも、ソラさんたちのパーティーも同じような感じです。
それなのに平常運転の人がいます。
ヒカリさん。確かに物凄く激しい動きをしていましたけど、終わった直後にご飯を要求するとか……。ソラさんもそれを受けて当たり前のように料理を始めるのは、流石にどうかと思いますよ。
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