第188話 マジョリカダンジョン 21F

「さあ、ソラ。今こそ約束を果たす時ですわ」


 今日のレイラは無駄に元気だな。


「それは分かったが、一応そっちの人たちの紹介をしてもらっていいか?」


 今回は二十四階を目指してレイラたちとダンジョンに行くことになっている。

 他にも学園の関係者のパーティーが同行すると言っていた。

 実際レイラの後ろには一〇人近い学生らしき人達が控えている。


「そうでしたわ。えっと、こちら金貨千枚きんかせんまい希望きぼうともしびの方たちですわ」


 凄いパーティー名だ。どう答えたらいいんだ?


「金貨千枚は目標をそのままパーティー名にしたらしいですわ。こちらのパーティーは二十六階が最高到達階になりますわ。今回は希望の灯の付き添いみたいな感じで同行してくれたの」


 顔に出ていたのか、パーティー名の由来をレイラが説明してきた。


「初めまして。金貨千枚のリーダーを務めてるトットです。今回は噂のパーティーと同行出来るということで楽しみにしていました。どうぞよろしく」


 噂? 悪い噂ならたくさん思い浮かぶんだが……楽しみにする要素が見当たらない。


「二十階のボス部屋を少数精鋭で攻略したことが噂になってるのですわ。あ、あとはソラの料理も?」


 その後希望の灯の方からも紹介を受けて、出発することになった。

 この階からはアンデッド系の魔物が階層ごとに出てくる。

 二十一階はスケルトン。武器はスケルトンごとに違うようで統一されていない。

 時々出るという上位種はスケルトンナイト。一際豪華な鎧を装備しているらしく、すぐ見分けがつくようだけど、上位種だけあって動きが素早くなっている。

 スケルトンというと動きが鈍いように感じるけど、実際は……うん、歩いて距離がとれる程度には遅いな。ただ何故か腕の動きだけはそこそこ速い。ちぐはぐだな。

 倒す方法は骨の間に見える核、魔石を破壊するしかない。

 体を、骨をバラバラにした程度では消滅しないで、時間がくるとひとりでに骨が組み合わさっていき復活する。ちょっと見てみたいと思ったが、我慢した。

 ただし聖属性の付与された装備で殴ると骨が浄化されるらしく、魔石の回収が出来る。あとは聖属性の魔法が有効だ。こちらも魔石の回収が可能。

 厄介なのはわらわらと出てくるため、倒していかないと通路が埋まってしまうと思うほど大量に集まること。

 これは長い時間この階で狩りをする人がいない、もしくはしっかり止めを刺さないと起こる現象で、増えすぎた場合はギルドから討伐依頼が出される時がある。

 もちろん依頼が完遂されたかの証明が難しいため、あとで元冒険者のギルド職員の手によってチェックされるらしい。


「レイラたちは今回その依頼を受けたってわけか」

「どうせ行くのですから、ついでに受けた方がお得ですわ。それに金貨千枚と希望の灯だけでは辛いですの」

「なのに先に任せてしまっていいのか?」


 金貨千枚と希望の灯の二つのパーティーが先行して進んでいる。


「何事も経験ですわ。暗くて見にくい罠もそうですの。あとは実際に聖水を使っての戦闘も実際に確かめた方が分かりやすくて良いですわ」


 主に希望の灯の面々のためか。

 最初は聖水なしで殴り、魔石を破壊して倒している。

 次に聖水を武器に振りかけて、スケルトンを斬りつけている。

 剣が触れた骨が消滅し、最終的に頭を消滅させたら残った部位の骨が消えて、魔石が宙から落下してカランと音を鳴らした。


「聖属性の攻撃の場合は頭を消滅させればいいのか」

「それが一番簡単ですわ。他の部位だと、複数破壊しないと駄目ですわ。何故か聞かれても私も困りますの。あ、魔法を使うようですわ」


 見ると金貨千枚の一人がホーリーアローを放った。

 光に包まれたアンデッドが一瞬で視界から消えて、魔石の落下した音を響かせた。

 威力は関係なく、スケルトンに対しては触れたら消滅出来る様だ。


「倒しやすいのに人気がないのは、お金にならないからですわ。聖水の効果時間も短くて、効果がきれたらまた振りかけないといけないですの」


 聖水を使い過ぎると赤字になる。

 だた強さに反して魔石の質は良いらしく、上手いこと乱獲出来たら稼げる狩場らしい。魔物との遭遇率次第のため、難しいということだが。

 もっとも溜まっている時は、倒せさえすれば稼ぎ時とのことだ。

 逆に聖属性の魔法が使える者がいるパーティーだと、その問題が解決出来るらしいけど、魔法を数使えないとマナポーション代で稼ぎが飛ぶこともあるらしい。


「なのでわざと集めて動きをとめたところを、一網打尽することが多いですわ。ホーリーアローの通り道の魔物を、全て浄化することができますわ」


 普通魔法は当たるとそこで効果が発揮されて消えるのに、アンデッドに関しては消滅させてさらに魔法が進む。魔法の効果が消えるまでは、どこまでも進む感じだ。

 もちろん五十メートル先まで通路を一掃なんてことは不可能だけど。射程距離の問題もあるしな。

 今は盾を構えた前衛三人がスケルトンをひきつけて、射程範囲内にある程度溜まってからホーリーアローで攻撃している。


「そろそろ交代ですわ。魔力が少なくなってきたようですの」


 見ると神官の子は肩で大きく息をしている。額には汗が浮かんでいる。


「ソラたちはどう戦いますの?」

「聖水の効果を確かめたいな。見ただけじゃ分からないことがあるかもだし」


 先に素で殴った。力が上がっているからか、大して力を入れていないのに簡単に骨が散らばった。

 一際大きな音がしたからそちらを見ると、セラの一撃で骨が粉々になっている。もちろん頭蓋骨も。

 それなのに骨は消滅しないで留まっている。

 試しに骨に埋まった魔石を破壊したら、綺麗に消えていった。ある意味あんなに骨が粉々になっているのに、魔石が破壊されなかったのが不思議なぐらいだ。

 聞くと避けて破壊したと、事も無げに言われた。

 その後聖水の効果時間の間は普通に武器で倒していき、効果がきれたらミアとトリーシャの聖属性魔法に任せて進んだ。

 相手をしたのがスケルトンだけだったからか、特に疲れることなく次の階の階段を発見した。

 今日は階段近くで野営をして、次の階へは明日挑戦することになった。

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