第181話 マギアス魔法学園・1

 帰宅後に話をしたら、ヒカリが食い付いた。意外なことに、クリスも興味を示していた。

 その言葉を聞いて早速手配しますね、とレイラは嬉々として帰って行った。

 そんな簡単でいいのか? というか、学園訪問は既に決定事項なのか?

 ひとまず学園に行った際に、俺が教えた魔力云々の話は一般的じゃないと思うから、学園の人たちには話さないようにとだけ注意しておいた。特にヒカリに。

 二日後、レイラ自らが迎えに来て学園に。以前近くを通ったことがあったけど、改めて正面から見ると年季が入っているけど、決して古臭い感じを受けない佇まいに見えた。何故だろう?

 ただ学校指定の制服のようなものを着た生徒が溢れる学園内に置いて、バラバラの服を着た俺たちは注目の的になっているようだ。奴隷も注目を集めている要因だと思うけど、その半分以上はレイラの存在だったような気がする。……俺の仮面も原因かもだけど。

 授業を受けるというよりも、どのように魔法を教えているのかを見学したと言った方が正しかったかもしれない。もちろん体験もしたけど。

 魔法学園では一般教養として、文字の読み書きの授業もある。それが終わってから本格的に魔法の授業を行うようだ。

 文字を読むことは皆ある程度出来るようだけど、怪しいところもあるな。

 特に重要なのは文字を読むことで、教師が教壇に立って魔法に必要な言語を書きながら説明をしている。少し専門的な文字もあるようで、ルリカたちはレイラに小声で質問したりしていた。

 何故レイラがまだいるかと思ったけど、そのためにいたのかな?

 他には魔法を使用する際に使用するグランドのような場所に行き、実際に魔法の練習を行った。入学して百日ぐらいのクラスのようだけど、なかなかどうして、魔法を使えるのは二〇人中半分もいなかった。

 もちろんメンバーの中で使えたのはクリスだけ。魔力を扱うことと、実際に魔法を詠唱して放つことは別のようだ。

 まぁそうだよな。魔法なんてスキルのアシストあってのものだし。無属性魔法なんてものがあって、魔力を放出するなんてものがあれば別かもだけど。

 普通に魔法を使うクリスに驚いたようだったけど、冒険者として活動していると説明したら納得していた。きっとそれがスキルの恩恵によるものだと察したのだろう。

 中には羨ましそうに見てくる子もいた。魔法学園に入学するほどだ。やっぱり魔法には憧れを持っているんだろう。

 お昼は学食のようなところで摂ったけど、その際ヨルたちも合流したため悪目立ちしたような気がする。何事かと興味深そうに見てくる者が増えたような気がする。

 午後は学園の施設を見学。普通なら先にこっちじゃない? と思ったら、午後は上級者の授業が多いからという話だった。


「なあ、あれは?」

「図書館ですね。冒険者ギルドで言う資料室みたいなところだと思ってですわ。もちろん比べ物にならないほど充実していますわ」

「どんな本、資料があるんだ?」

「色々ありますよ~。ここには世界の英知が眠っていますから~!」


 って誰だ? 突然眼鏡を掛けた女性が現れた。テンション高いな~、おい。


「セリスさん。何をしているのですの?」

「お客さんが来なくて暇で暇で~」


 レイラが呆れている。

 なんか見た感じフワッとしているけど、ピシッとスーツを着たら似合いそうだ。そう思わせるのは少し長身でスタイルがいいからかもしれない。ウェーブのかかった流れるような髪は、動くごとに目を惹く不思議な動きをするな。けど一番は……。


「見ない顔の子が、というか学園の生徒じゃないわよね~?」

「体験というか、見学ですわ」

「ふむふむ、それでそっちの男の子……が、本の興味を持った子ね~。どう? 良かったら見ていく~?」


 一瞬こちらを見て、動きが止まったような気がする。気のせいか?


「どうしますソラ。というか、ソラは文字を読むのは大丈夫ですの?」

「大丈夫だと思う。一応商人として色々勉強したからな。ただ読めない本はあるかもしれないけど」

「……皆さんはどうしますの?」

「どんな本があるんでしょうか?」

「ここは主に歴史とか資料関係の本ね。魔法関係の本はフォルトゥナだから。あ、もちろん少しはあるわよ~? ……ほんと、少しだけど~……」


 自信無げな声色から、あまりない事が伺えるな。

 本か……エルフとか魔人とかのことが書かれている本とかあれば見てみたいな。

 けどこういうところって、閲覧禁止とかなっているような本とかありそうなイメージだけどどうなんだろう。


「それなら私たちはレイラに案内されて他を見てくるよ。けど、ソラ一人で大丈夫?」

「ここで本を読んでるよ。こんな機会はそうそうないだろうし、色々見てくるといいだろう。レイラ頼んだ」

「分かりましたわ。少し心配ですが、セリスさんくれぐれもお願いしますわ」

「任せて~、というかレイラちゃん、そんなに私って信用ありません~? って、何で目を逸らすのですか~? って行ってしまいましたね~」


 こちらを見られても困るんだが。


「まあいいわ~。結構な蔵書だから、希望する本があるならお姉さんが教えちゃうわよ~」

「分かりました。改めてソラと言います。よろしくお願いします、セリスさん」


 なんか調子が狂う、独特なテンポを持つ人だ。最初に持った第一印象は、既に崩壊しているのは言うまでもないが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る