第176話 マジョリカダンジョン 20F・2
キングなら後ろにどっかりと構えて、もう少し部下の戦いを眺めていろよ。
思わず悪態をつきたくなる状況だけど、その余裕はない。
討ち合いでは力負けしないけど、それ以上に取り巻きが邪魔で仕方ない。
致命傷こそ受けていないけど、擦り傷が増えていく。防具も浅い攻撃は防いでくれていたけど、それも徐々にボロボロになってきている。
何度か危ない場面もあったけれども、そこはヒカリとルリカによる投擲による援護で事なきを得ている。
「ソラ!」
防戦一方の中、クリスから合図がきた。
俺は魔法を準備しながら防御を繰り返す。
少し多めに魔力を籠めて、威力よりも発動している時間を長くするイメージで魔法を放つ。
「ストーンシャワー」
宙に石礫が出現し、それが勢い良く落下してくる。
頭上から注がれる石礫を防ぐように、四体のガードが盾を掲げて防壁を築く。
そこに今度は遅れてクリスがファイアーストームを放つ。と、同時に、セラが斧を、ルリカがナイフを、ヒカリが魔法を付与したナイフを間髪入れずに投げた。
追加で防壁を展開した残りのガードによって攻撃が防がれたかに見えたけど、一瞬後にヒカリの投擲したナイフが爆発して、ガードを吹き飛ばした。
そこにミアの放ったホーリーアローがガードの止めを刺す。削れたのは一体。
けど一角が崩れた。
並列思考を使って待機させていた魔法をさらに放つ。
ガードが減った一角に集中させた場所に発現した魔法は、防壁を突き破りそこに待機していたファイターもろとも焼き尽くした。追加でガード一体とファイター五体が消えた。
ガードの持つ盾。確かにあれは魔法の盾のようだけど万能ではないようだ。武器と同じように耐久度か、もしくは使い手の魔力か、維持をするためにはそれを消費しているみたいだった。
防壁を破ることが出来たのは、今までの魔法攻撃もそうだけど、タイミングをずらして多方面から攻撃したことによって限界を突破したからだ、と思う。
魔法の攻撃のおさまった先には、膝をつくガードの姿があちこちにあった。
セラがすかさずファイターに襲い掛かるも、ジェネラルが素早くアーチャーに指示を出し、自らも前線へと駆けてくる。
ジェネラルの抜けたアーチャー隊は、矢を放ちながらもう片方の隊に合流しようと動き出す。ジェネラルが指示を出していたようだ。
そこにクリスが狙ったように魔法を放ち、慌てて盾を構えたガードもろとも一隊を焼き尽くした。
それを見たジェネラルは立ち止まり、一瞬隙が出来た。それが命取りになって、気配を殺して近付いていたヒカリの一刀のもと命を落とした。いつの間に動いていたんだと、驚かされた。これは嬉しい誤算だ。
これで残りはキングとジェネラル。アーチャーとガード二体ずつの計六体となった。
矢の攻撃をものともしないで、前衛陣を頑張って倒した結果だ。もちろん倒す過程で、アロー系の魔法で二人が援護してくれたのも大きい。
そこまで減ると、もうこちらの勢いは止まらない。キングとジェネラルよりも前にアーチャーとガードを片付け、キングはセラが、ジェネラルはヒカリとルリカが受け持ち、後衛は先にジェネラルを倒すべく魔法で援護をした。
ジェネラルが倒れたら、あとはキングを残すのみ。その名に相応しい奮闘を見せたけれども、こちらの勢いは止められず最後はセラを警戒していたところに、死角から迫ったルリカの突きによりその動きを停止させた。
戦闘が終わり、休みたいところだけども、まずは魔石の回収を行った。盾が持ち帰れるか試したけれども、残念ながらそれは叶わなかった。報告通りか。もっともどれもこれもボロボロで使い物にはならない様だったけれども。
鑑定しても構造は詳しく分からなかった。ただ回路? みたいのが表面に刻まれているということだけは分かった。
ちなみに宝箱はドロップされ、中身は帰還石だった。最初の一回は帰還石が手に入る仕様なのか? たまたまか? 他には何もなかった。
出口側の扉が開いたけれども、少し休憩することにした。
魔石の回収をして力尽きたのか、
ヒカリが何かを期待してこちらを見ている。
普通なら体力回復にポーション類を差し出すところだけども、彼女が求めているものは違うんだよな。
俺はスープをカップに注ぎ、それを渡していく。
は~、一口飲んでホッと一息。ショウガが程よく効いていて、疲れた体に染み渡るような気がする。
今回は色々と危ない場面があった。人数の問題もその一つかもしれない。
募集を募るにしても、見ず知らずの人と組むのには抵抗があるからな。
レイラたちもダンジョンの活動を再開したみたいだけど、学園の人たちと組んでいたようだし、向こうにも予定はあるだろう。
他に知り合いとなるとフレッドたちか……けど新しいメンバーを募集しながら鍛えなおすようなこと言ってたからな。初心に返る意味もこめて、低階層からじっくりやるとか言ってたような気もするし。
「どうしたの? また眉間に皺がよってるけど」
眉間を押さえられた。力入ってません? ぐいぐいと痛いですよ。
「ちょっと今の戦いを振り返ってな。セラも負傷したし、危なかっただろう?」
「それはソラもです。ほら、ヒールするから座って」
「これぐらいなら大丈夫だよ。放っておいても治る」
「駄目です」
駄目なようだ。自然に治るのは本当だし、さっきまで魔力がなくなっていて辛そうだったのに。
「これからどうするかは、出てから考えましょう。今は無事に倒せたことを、皆の命があることを喜ぶべきです」
ミアの言う通りか。別に最下層を目指しているわけじゃないし、危なくなったらそこで止めればいいんだしな。
それとあまりここで休憩すると次に入ろうとしている組がいると待たせることになるから、そろそろ移動しないとな。
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