第169話 投擲武器作成
時間的には真夜中の時間帯。ダンジョン内は変わらず明るいけど、不思議と魔物の動きも日中に比べて収まっている。ただ単に昼間に多く狩ったからなのかもしれないけど。
「主、お願いがある」
今日はヒカリと見張りの当番をしている。
しばらく雑談をして、会話が止まった時にヒカリからお願いされた。
「どうしたんだ?」
「新しい武器が欲しい」
「武器? ミスリルの短剣は使いにくかったか?」
「ううん。あれは使いやすい」
「なら予備の武器が他にも欲しいのか?」
どうやら違うらしい。
詳しく聞くと遠距離用の武器が欲しいらしい。
「主が使ってた。銃? のような武器が欲しい」
「銃を使いたいってことか?」
「違う……あの、当たると爆発するようにして欲しい」
投擲用のナイフは仕留めるというよりも、今は足止めや牽制の意味合いが強い。
ダンジョンの下の階層に進むにつれて、ただのナイフではダメージが入らなくなってきたからだ。
それこそ魔物によっては牽制の効果がないものまでいる。刃が通らないから、それこそ目とか、急所を狙わないと避けもしない。
特に今回はコボルトシーフに翻弄されたからか、ヒカリなりに考えたうえでお願いしてきたようだ。
今のパーティーだと、基本的に遠距離攻撃で魔物を倒すには魔法に頼るしかないからだ。
そもそも弓職自体、ダンジョン内ではあまり見かけない。矢が消耗品だから、どうしても荷物になるからかその数は少ないように見える。
それでも魔法職がいないパーティーには、最低一人はいるようだ。その場合も弓専門というよりも、普段は近接戦闘をして、ここぞという時に弓矢を使うというスタイルのようだが。
もっともアイテム袋を持つパーティーだと、戦略の幅が広がるから弓職もいるらしい。らしいと言うのは、噂で聞いただけだから本当かどうか分からないからだ。深い階層を攻略しているパーティーに多いとのことだ。
「主、駄目?」
コテンと首を傾げて下から見上げてくる。
誰に教わったのか、あざといお願いの仕方だ。
ヒカリが自分で考えたうえで必要だと思ったのなら用意したいところだけど、どのような形で作ればいいのか迷う。
「ああ、駄目とかじゃないんだ。魔法を付与したものは作れると思う。ただどのようにして発動させるようにするかを迷ってるんだ」
黙っていたら不安そうだったから説明することにした。
付与を発動させるには、今分かっている限りだと二通りある。
一つは衝撃をトリガーにして起動させる方法。これは単純で作りやすいけど、普段の移動中の取り扱いに注意が必要になる。投擲用のナイフは基本的に腰のベルトに差してすぐに使えるように持ち歩く。そのため何かの拍子に衝撃が加わり誤爆、暴発する恐れがある。
もちろんそうならないように衝撃吸収用の素材などでそれを防ぐつもりだけど、そうなるとすぐ取り出すということが出来なくなるかもしれない。
二つ目はシャドーウルフの時に作ったように、魔力を流して起動させる方法。これは魔力を流すことで起動式を発動させて、あとは投擲して衝撃を感じ取ることで爆発などを起こす方法だ。もしくは魔力を流してから何秒後に爆発でもいいかもしれない。手榴弾みたいに。
こちらの方が持ち運びの時も安全を確保出来ると思うけど、問題はスムーズに魔力を流すことが出来るかだ。咄嗟に使いたい時に魔力を流せないと、投げてみたけど不発に終わったりするかもだし、魔力を流すのに手間取って機会を逃すことだってありえる。
ヒカリに説明すると悩み始めた。
ミスリルのナイフの魔力の流し方を見る限り、かなり慣れてきたとは思う。けど前準備なくて咄嗟に使うとなると、まだ分からない。
「主の銃はどうなってるの?」
俺の銃はトリガーを弾いて弾が撃ち出されると同時に魔法の起動式がONになる。
弾の種類としては、一つは衝撃と共に発動する弾丸。もう一つは発射から何秒後に発動する弾丸とに分けて作ってある。
当らなくても時間で発動する弾を作ったのは、避けられる敵に会った時と、目くらましなどの妨害用として使えるかもと思ったからだ。
「ヒカリ、ひとまず今回は魔力を流して発動するタイプを作っておく。実際に使ってみて様子を見てみようか」
衝撃タイプは、今の段階だと暴発を防ぐための良い案が浮かばなかったため、魔力発動タイプしか選択肢がなかったとも言う。
魔力を流して衝撃を与えると発動するタイプを作ることにした。
「今から作るから少し周囲の警戒を頼むな」
一応MAPで周辺をチェックする。うん、近くに魔物も人もいない。
今回はある意味お試し用だ。低ランクの魔物、ウルフの魔石が残っていたのでそれで作る。鉱石でナイフを造りながら魔石と融合する。その時付与術で火属性魔法を付与して発動式を書き込んでいく。魔石を融合させたのは、少しでも魔力を流しやすくするためだ。弾丸にこんなことしてたら、魔石がいくつあっても足りなくなるからな。
それをひとまず一〇本用意した。
「今回はあくまでお試し用だ。もしかしたらダメージは入らないかもしれない。倒すためというよりも、行動を阻害するためと思ってくれ」
「分かった。主、ありがとう」
「使い方だが……」
魔力の籠め方は、普段武器に魔力を流すのと変わらない。なので扱い方は大丈夫だと思う。
威力に関しては、付与する時の魔力量で決まる。付与する魔力量が多くなれば多くなるほど威力は大きくなるはずだけど、これももしかしたら質の良い魔石を混ぜることで変わるかもしれない。今度銃弾でも試してみようかな。
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