第162話 マジョリカダンジョン 11F・12F

 十分な休息をとって再びダンジョンにやってきた。

 予定より一日遅れたのは罠に関するレクチャーをタリアから受けられたからだ。

 流石にダンジョンに一緒に潜ることが出来ないため、学園が終わった夜にレイラと一緒にやってきて、色々と罠に関して教えてくれた。

 お詫びに夕食をご馳走したけど、正直釣り合いが取れていたとは思えない。

 一応お礼にポーションの詰め合わせを送ったけどあれで大丈夫だったかな?


「罠の解除は出来そうか?」


 ルリカとヒカリが屈んで地面を調べている。

 二人とも新調した武器を早く使いたいだろうに。残念ながらこの階層に魔物は出てこない。

 ただただ、罠のみの階層だ。

 逸る気持ちを抑えて、冷静に罠に向き合っているようだから、ひとまず安心か。

 ギルドの鍛練所で軽く素振りをしたぐらいだしな。

 ミスリルの武器は目立つから、人がいない時間を見付けての短い時間しか取ることが出来なかった。


「主、解除出来た」


 ヒカリの言葉に頷き、先に進む。

 俺以外の他のメンバーも、一応罠には触らないが交代で解除する様子を見ている。

 これも経験だ。流石に実際に罠を解除してみてとは言えないけど。

 ちなみに俺は一度だけ罠を解除してみた。

 解除方法は資料にのっていた手順に沿ってではなく、鑑定したら罠の解除方法が鑑定出来てしまった。しかもどんな罠なのか、発動した時の説明文も付いてたよ。

 さらに付け加えるなら、罠の位置だけど、魔力察知を使うと分かった。MAPを併用すると何処にあるかまで分かるという、相変わらずのイージーモードだ。

 ただ残念ながら宝箱が何処にあるかの表示はされないから、もし探すようなら結局は探索しないといけない。そもそも人がいれば先に発見されて開けられているかもしれない。結構な人数がMAPに表示されているし。

 またこの階の謎として、いつ宝箱が補充されているのかとか、解除した罠がいつの間にか復活しているのかがある。一時期それを検証しようとしたことがあったらしいけど、結局分からなかったらしい。謎は謎のまま今も残っている。

 それを何度か繰り返していくとMAPが埋まった。階段の位置は確認出来たけど、もう少し罠に慣れておく方が良いだろう。

 罠はこの先の階層からは普通に出てくる。しかも魔物が存在する階でも普通に、だ。解除中に突然襲われることだってありえる。だから経験を積んでおくのは悪いことではない。


「あ、次の罠を見付けたら解除するのを待ってくれ」


 と、いうことで次の罠では少し実験をしてみた。

 今回見付けた罠は床を踏むと毒矢が壁から飛び出てくる。

 毒の解毒薬があれば死に至ることはないけど、当たり所が悪ければ致命傷になる場合も考えられる。矢が頭とか首に突き刺さるとか。

 鑑定に従って、床に錬金術で分解した鉱石の残りを投げて罠を発動させた。

 矢が飛び出したのを確認したらもう一度鑑定。どうやらこの罠は解除しない限り、床を踏めば何度も発動するようだ。それに連動している床が複数あって、床ごとで矢の飛び出す場所も違うようだ。

 ただ良く見ると、矢が発射される位置が低い。腰から下に集中している。もしかして即死じゃなくて苦しめる系の罠? 悪趣味な。

 罠を解除して改めて鑑定すると、待機時間というのが出てきた。これは他の罠でも同じように表示されたけど、罠の種類によって時間が違うのを確認している。待機時間がゼロになったら復活すると予想されるけど、復活したのをこの目で実際に確認していないから、言い切ることが出来ない。


「ありがとう。それじゃ注意しながら先に進もうか」


 フロア自体の広さはそれほどなかったけど、罠に注意しながら進んだから次の階段まで一日半かかった。まだ活動出来そうな時間ではあったけど、今日は早めに探索を切り上げて休息を取ることにした。

 魔物が出ないけれども、冒険者の姿を結構見るので、見張りをしないといけないのは変わらない。これがむさ苦しい男だけだったら違うんだけど、女性率が多いから警戒は必要だ。すれ違う時に好色の目を向けられたり、卑猥な声をかけられたりしたからな。

 そういえば、ヒカリの蔑むような視線を受けて、恍惚な表情を浮かべた奴もいたな……深く考えるのはやめよう。



 十分な休息をとって、翌朝から十二階に挑んだ。

 ここの階に出る魔物はスライム。ゲームなら最弱と言われる存在だけど、ここでもやっぱり弱い。が、厄介な魔物の代名詞とも言える、会いたくない魔物の上位に上げられる存在だ。

 まず核さえ潰せば簡単に倒せる魔物だけど、スライムはモノを溶かす特性を持っている。酸を飛ばして攻撃してくる。人体には殆ど影響がないけど、触れると装備品を溶かすらしい。誤って浴びると服なんて簡単に溶かすので、女性が特に嫌う。

 とち狂った男と組んでいた男女のパーティーが、何組も解散されるという曰く付きの階でもあるらしい。ほんと、どうしようもない奴が多いのか?

 また武器で核を攻撃する時にスライム本体に武器が触れるわけだけど、その時に武器が劣化させられる。何度も繰り返せば使い物にならなくなる。もちろんその都度手入れをすれば問題ないけど、手入れ用の道具でかなりのお金が飛ぶことだろう。

 なのでここでは専用の武器と、専用のローブを装備して進む。劣化しにくい加工が施されているけど、限度があるからと説明された。

 もちろんミスリルや、魔術の付与されたランクの高い武器なら劣化することはないけど、分かっていても使うのを戸惑うのが人のさがだと思う。

 一応ヒカリとルリカが専用の武器を持ち、特殊なコーティングをされた盾をセラと俺が持って進む。魔法に弱いから基本的に遠距離で倒していくけど、全てのスライムを魔法で倒していたら流石にMPが枯渇する。数が多い時は魔法で、少ない時はヒカリたちが倒して回った。

 数が少なくても罠が近くにある時は、魔法で倒したのは言うまでもない。

 この階層は少しズルをして一日で踏破。MAPで階段の位置が分かったら、言葉で誘導して最短距離を進んだ。

 うん、精神的に疲れた階層だった。

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