第159話 閑話・7
「どういうことだ。ダンジョンに入れないって!」
「申し訳ございません。現在新規受付というか、他の国から来た方の登録をしないようにと命を受けていまして」
「この人に怒鳴っても仕方ないのよ。すいません」
「い、いえ。わざわざ来て頂いたのに、こちらこそ申し訳ございません」
「ここだけでなく、マジョリカのダンジョンも入れなかったりしますか?」
「あちらは問題なく利用出来ると思いますが……確認しましょうか?」
「よろしくお願いします」
「…………大丈夫なようです」
「そうですか。ありがとうございます」
「それじゃマジョリカに行くのか?」
「どうすっかな。こっちの方が俺たち向けのダンジョンらしいからな」
「確か向こうは迷宮型なんだっけ?」
「ああ、しかもダンジョンの行き来が面倒とかって話だったよな」
「ええ、色々と制約があるような話は聞いたわね」
「なら諦めて王国に戻るか?」
「正直わざわざ戻るほどの魅力があるかと言われるとな……いい奴は多いんだがな」
「ならいっそマジョリカのダンジョンを試しに行ってみて、無理そうなら聖王国か竜王国に行ってみたらいいんじゃないか?」
「そうだな。王国も定住するには少し抵抗ある国だしな。竜王国は……難しいから聖王国になるか?」
「黒い森と隣接してるしな」
「ダンジョンで一攫千金! 夢のスローライフがまた遠のくか」
「無理をしないのが一番よ」
「そうだぜ。無茶をして命を落としちゃそれまでなんだから、って、悪い」
「いい。その通り……だからな」
「まっ、悩んでも宿代で金だけが減ってくんだ。そうと決まったら行こうぜ」
「確かアルタル行の護衛依頼があったはずだ」
「ならアルタル経由で行こうぜ。あいつじゃないけど、せっかくだ。ここは旅を楽しみながらのんびり行こうぜ」
「のんびりと行くのはいいですけど。お金がなくならないようにして下さいよ」
「少しここで討伐依頼を受けておかないか?」
「別に急ぐ旅じゃないからいいけど、どうしたんだ?」
「近頃実戦から遠のいたと思ってな。勘が鈍らないようにしたいと思ってな」
「素直に飲み過ぎたと謝った方がいいと思うぞ?」
「ああ、謝っておけ」
「ば、馬鹿言うな。本当に勘が鈍らないためなんだからな」
「分かった、分かった。なら少し情報収集しような。もしかしたら知らない魔物が生息してるかもだからな」
「あとは準備。少し消耗品を補充したい」
「そうだな。なら先にギルドに行こうぜ。依頼の確認と、魔物の分布図でも分かればそれも知っておきたい」
「プレケスじゃ討伐系の依頼はあまり見かけなかったしな」
「俺たちと同じようにダンジョンに入れなかった奴らが受けたのかもしれないな」
「街の近くの森に魔物がいれば、だがな。あとはプレケスのダンジョン目当てに来た奴らが、マジョリカに流れたら宿をとるのも大変になるかもだな」
「頭の痛い問題だな」
「飲む量を減らせばいい」
「…………」
「少し多めに依頼受けてから行くか?」
「そうだな。何があってもいいように少し多めに稼いでから行くか」
「なんかピリピリしてないか?」
「ああ、なんか雰囲気が悪いな」
「すまない。ダンジョンに入りたいと思ってるんだが、登録はここでいいのか?」
「いえ、専用の窓口がありますので、そちらでお願いします」
「分かった。それで俺たちは今日この街に来たばかりなんだが、何かあったのか?」
「ええ、と。色々と問題がありまして……近頃人が増えたのもあるかもしれませんが。それと、ダンジョンに関してルールがありますので、そちらもしっかり確認して下さい」
「あ、ああ。分かった。ありがとうな」
「何か分かったのか?」
「良く分からん。とりあえず登録したら、色々調べ物をする必要がありそうだ」
「頭使うのか……」
「頼りにしてるぜ」
「良い笑顔で言っても駄目だ。お前もしっかり調べろ」
「そうですよ。飲む時間があれば資料室に行きましょうね」
「……ハイ」
「だが少しだけ飲むのを許可してやってくれ。あくまで情報収集のために、だけどな」
「仕方ありませんか。私は付き合えませんから、飲み過ぎないようにお願いしますね」
「ああ、碌なことしなかったら報告するからよろしくな」
「ば、馬鹿野郎。しっかり情報収集するに決まってるだろ」
「情報収集する腕に疑いは持ってないよ。問題は意味もなく飲み過ぎることだ」
「そんなこと……」
「過去の実績を思い出せ。宿だって高いところしか空いてなかったんだ。無駄金使ったら一人街の外で野宿だぞ?」
「あ、ああ。分かった」
「それなら登録して、まずは資料室に行きましょう。他の人たちが戻ってくるにしても、夜の方が人が多いと思いますし」
「そうだな。ダンジョンの歩き方とか詳しい人がいれば一番なんだけどな」
「クランだっけか? そこに入れば早いかもだけどな」
「一度入ったら脱退するのも面倒そうじゃねえか? なら野良で潜った方がいいぜ」
「それもそうか。知り合いでもいれば一番なんだけどな」
「遠い異国の地で運命的な出会い! まあ、ないな」
「ありえないよな……」
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