第155話 マジョリカダンジョン 再攻略・2

「まず無事に合流出来て良かったと思う。それで明日からのことだが、フレッドたちも攻略に参加するのか?」


 再確認をする。

 もし一緒に戦うとなると、前もっていくつか決めておく必要がある。連携はあってないようなものだから仕方がないけど、隊列など、基本的なことを決めておかないと何かあった時に対応が遅れてしまうだろう。

 フレッドたちも戦闘参加希望ということで話し合った。

 結果。前衛ををフレッド、ガウン、ルリカが担当し、中衛に俺と魔法職の三人。後衛は背後からの奇襲の警戒を含めてヒカリとセラが配置に付くことになった。

 六階と七階は、苦労することなく進むことが出来た。

 ルリカを中心に索敵をしながら慎重に進む。フレッドとガウンは時々ルリカに質問して、注意点を聞いている。同じ前衛でもルリカは偵察よりだから、同じ前を歩く者として学べるものがあると判断したのか、普段口数の少ないガウンも結構な数の質問を投げ掛けていたようだ。

 それにはエデルも驚いたようで、


「あんなに話せたんだ」

 

 と、思わず呟いていた。


「八階はウルフの群れが出てくるんだったよね?」

「そうだ。戦いが長引くと仲間を呼ばれるから厄介な階層だ」


 ルリカは八階に下りる前にフレッドとガウンに話を聞き確認している。


「なら戦うなら通路の交差地点よりも出来るだけ通路の途中がいいかな?」

「何故だ? 遭遇した場所で待ち構えて戦った方が良くないか?」

「ん~、どうしようもなかったり戦力が整っていたらそれでもいいと思う。けど交差地点だと前後左右から攻撃される危険もあるからね。通路だったら二方向からの攻撃に備えればいいから負担は少ないと思うんだ」

「む、確かにそれはあるな」

「だがよ。退路はあった方が良くないか?」

「あった方が安心だけど、逃げた先が行き止まりだともうどうしようもないよ? その場合は正面だけに集中出来るからいいかもだけど」

「それで戦力次第か」

「今回の編成は前衛が五人。ソラをあてにするなら六人だから、多方面から攻められると手薄になるとこが出てくると思うから。私たちも組んでウルフの群れと戦うのは初めてだから、最初の戦闘は通路で様子を見た方が良いと思う。連携だってとれるか分からないから」


 話はまとまったようだ。

 八階に下りて慎重に進んでいく。相変わらずウルフの唸り声が通路の先から響いてくる。そのため交差点で足を止めては先を確認するから進行速度は遅い。

 初めてのエンカウントは通路を進んでいる時だった。

 前方の通路の先からウルフの群れが顔を出し、こちらに気付くと接近してきた。


「エデル、クリス嬢頼む」


 フレッドの声にエデルとクリスが魔法を放つ。

 限定した幅しかない通路だ。魔法の通りは良い。


「セラ、後方の警戒をお願い。もし現れたら声を掛けて」


 魔法をかいくぐり生き残りが襲い掛かって来る。

 フレッドとガウンが二人並び、先頭に立つ。ルリカは遊撃で、時にさらに前に出て戦っている。

 三人が並ぶと、さすがに通路が狭くなって互いの武器で傷付け合う危険があるためだ。

 多くを後方に流さなければ、魔法使いでも物理的に迎撃出来るのを分かっている配置だ。

 今回の群れは一二匹。魔法の先制攻撃で半数の六匹が沈んだから残りが六匹。十分対処出来る数だったようで、結局後ろに流れることなくウルフの討伐は完了した。


「魔法で数が減ったから楽に狩れたな」

「けど連続して撃つと魔力切れをするからあてにしない方がいいかもね。いざという時に使えるのと使えないのとでは全然違うし」

「その通りだ。今度は魔法なしで対処出来るか試してみたいな。しかし魔法使いが複数いるだけでかなり楽になるな」


 手応えを感じているようだけど、すぐに問題点を話し合っている。その姿勢はいいと思うが、早く死体の回収をした方がいいぞ。まあ、俺の仕事ですが。

 魔法で倒した六匹のうち、火魔法の被弾を受けた四匹は外皮が焼かれていて素材としては使えないな。風魔法で倒れた二匹は問題なさそうだ。火魔法は威力がある分、損壊も大きいから素材の回収が難しくなるんだよな。

 ミアにも頼んで魔石の回収をしてもらう。ある意味俺よりも上手くなってるような気がする。ヒカリの指導のたまものらしい。

 ルリカたちが倒したウルフはほぼ一刀の元倒されているから素材の状態も良好だ。ここで解体は難しいからそのまま回収だ。


「ソラのアイテム袋は大量に入って羨ましいな」


 アイテムボックスのことは内緒だから、ダミーのバックを通して回収していく。


「そもそもアイテム袋を持っていないパーティーだと、ここでは解体する暇もないからな。基本魔石と討伐証明だけの回収となると、労力に利益が合わなくて敬遠されるんだよな」


 フレッドはそうぼやくが、だから実戦経験が積み重ねられないんだろうな。

 前は五階から十階を目指すようなことを小耳に挟んだけど、実際は十階に直に転移している奴の方が多いみたいだし。宝箱が必ず落ちるとは限らないとはいえ、楽して一攫千金が狙えるなら楽をする者が増えるのは当然か。商売にもなるわけか。

 ゴブリンキングは確かに強い? かもしれないけど、取り巻きもゴブリン軍団だから回収する素材がないから気にせずに倒せる。もっともボス部屋の取り巻きを倒すのに、素材を気にして倒すなんてのはかなり安全にマージンを稼げるパーティーでしか出来そうもないだろうけど。

 結局八階は二日かけて踏破した。戦略としては交差点を避けて通路での戦闘を心掛けた。魔法の先制攻撃も自重して、基本的には物理攻撃で倒した。魔法の使いどころとしては、挟撃された時や、倒すのに時間がかかって追加で現れた時ぐらいだった。

 それでも階段を発見した時には皆疲れ果てていて、ゆっくりと休憩をとる必要があった。


「お前たち、前回四人でここを通って来たんだよな?」


 フレッドも久しぶりの八階層だったのが、改めて攻略してその難易度を思い出したのか、信じられない者でも見るような目を向けてきた。

 前回は挟まれたりしたら、魔法で通路を燃やすように放って倒したりしていたからな。

 もちろん馬鹿正直に言えないから、曖昧に笑って誤魔化しておいた。

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