第149話 再会・5
その夜は宴会になった。初のボス階突破もあるけど、本当の目的は三人の再会のお祝いだ。料理はタリヤたちにも手伝って貰いつつ、新作の料理も投入された。ビーフシチュー。味はほぼ再現出来ていると思うが、元の味を知らないヒカリたちが美味しく食べてくれているからそれで充分満足している。
他にはシャドーウルフの肉を使った料理、というか、ほぼ焼いただけのステーキを出したりと、普段は使わない肉を使ったりした。もちろん野菜も色々なドレッシングを添えて出すのも忘れない。バランスは大事。
食事の間の話題は何故か俺とセラ中心だった。もちろんお互い自己紹介は済ませているけど、まだ表面的な紹介に留まっている。あとはお互いの冒険譚。ルリカたちの獣王国で見聞きしたことや、ダンジョンの話題で盛り上がった。
楽しい一時は食後のデザート、スイーツを食べ終えて終了した。眠そうなアルトを連れてタリヤとエルザが部屋に戻り、ヒカリとミアは二人揃ってお風呂に行った。
客間に残った俺たちはグラスを傾けながら(中身はジュース)、互いの近況をもう少し踏み込んで話した。
「そっか。ソラは迷い人だったんだ。どっか常識が欠如してたり、なんか隠してるな~とか思ってたんだよ」
「仕方ないよ。見知らぬ世界に来てたんだし。ひどい仕打ちを受けたら警戒もすると思うよ?」
「確かに酷い。けど、そのお陰でこうしてボクたちは出会えたんだ。少しは感謝かな」
「それは……確かにそうかもです」
そう言って貰えるのは助かるな。
「なあ、一ついいか? 俺はこの世界に召喚されて呼び出されたんだが。他にもこの世界に来る方法というか、来てしまうことがあるのか?」
「どうだろう? 私もお婆から聞いただけだから。お婆は不思議な人で、色々なことを知ってたんだよね」
ルリカの言葉に、二人も揃ってうんうんと頷いている。
イグニスは俺を鑑定して異世界人であることを知っていた。
けどすぐに召喚された者だと決めつけて話しかけてきた。ということは、他の方法でこの世界に来てしまうことがあるということを知らないということか?
「それよりも私としては可愛い子を、しかも奴隷を連れているのが気になるかな?」
それジュースだよね? なんか酔っ払いのような絡み方だ。しかも
「仕方ないだろ。殆ど選択がないままだったし。ヒカリに関しては身分証が習得出来ないし、ミアはまあ、色々あったからな」
俺のこともそうだけど、二人の事情も少しだけ話してある。もちろん二人には了承を得ている。ヒカリは無頓着で、返事が軽かったけど。
ミアの聖女よりも、ヒカリが俺を監視していたことに驚いていたな。
「それで二人はこれからどうするんだ?」
「そうね。出来れば一緒にダンジョンに行きたい、かな? もしかしたら足手まといになるかもだけど」
セラの今までの壮絶な経験から、戦力差を心配しているんだろうか?
「だってね。お金が、お金がないんだよ!」
魂の叫び。なんかすごい必死だ。
「獣王国にいた時は殆ど歩きだったんだけど。魔導国では殆ど馬車移動と依頼を殆ど受けてなかったから」
移動優先で、とりあえず早くマジョリカに到着することだけを考えていたようだ。
受けた護衛依頼も比較的安い奴だったりしたようだ。報酬よりも行き先が優先で受けたからみたいだ。
「なら一緒に行けばいいさ。主様、いいでしょう?」
「いいんじゃないか? 四人だと結構大変だったりするからな」
「主様、それ説得力ないから」
何故か呆れられた。人数が多いと野営の時の見張りとかの負担も軽くなるじゃないか。
普通のパーティーだと物資の関係で大変になるかもだけど。
「ひとまずはもう一度十階目指して潜る必要があるな。流石に二人だけで追い付けってのは難しいだろうし」
ミアたちがお風呂から出たので今度は三人が入り、最後に俺はのんびり浸かった。
やっぱお風呂はいい。向こうにいた時はそれほど好きじゃなかったんだけど。こうなると温泉とか探したくなるけど、こっちにもあるのかな?
ルリカが一緒に入る? と
あとはお風呂から出て来た時に、ルリカとクリスの目が死んでた気がするが、気のせいだったかな?
部屋に戻り一息。今日は一日色々なことがありすぎた。
朝から気分の悪い出来事が続いたけど、二人に会えて純粋に嬉しかった。まさかあんなに泣かれるとは思わなかったけど、それだけ心配してくれたということか。
まぁ、サイフォンに会わなければ、俺の生死を知ることもなかったかもだけど。
アイテムボックスから色々と素材を取り出す。魔石の数は多いが質はどれも低い、等級があるようなことをそう言えば耳にしたな。今更だと思うけど、そこまで気にしてなかったからな。主な収入源が薬草だったから、そっちの方ばかり勉強したし。
それに質は低いけど合成すればそれなりに品質を高めることが出来る。
問題は元々の質の良い魔石と比べると性能が落ちる点と、数を無駄に多く使う点だ。自分で集められるからいいけど、これをお店で買ってたら間違いなく破産だ。錬金術で合成するにしても限界はあるし。魔力的にも時間的にも。
売らない魔石は全部俺が錬金術で使うから、これも報酬から抜けてるんだよな。何かで還元してやらないとだ。
あとは今一番の問題はミスリル。これを武器屋のおっちゃんに頼もうかと思ったけど、どうせなら自分で武器を創れないか考えた。そこで覚えたのがこれ。
スキル「創造」効果「武器・防具・魔道具を創造することが出来る」
今までも普通に錬金術でアイテムを作っていたから何が違うのだろうと思ったけど、この世界で発見されたアイテムの設計図がレベルに応じて閲覧できるらしい。簡単に言うと錬金術の上位版で、作れるアイテムが増えた感じだ。
作るには適応するアイテムが必要になるため、一から集めないといけないようだが。
鍛冶とどう違うのかと思ったら、こちらは鉄を叩いて剣を作るのとは違って、錬金術のように魔力で剣を作れるらしい。錬金術や付与術と併用すれば、さらにプラスの効果を持たせられるかもしれない。
鉱石がたくさんあるから、まずは投げナイフとかを練習で作ってみるか。熟練度を稼いでレベル上げにもなるし。
なんか男心をくすぐる夢のあるスキルだな。あ、ポイントは2消費したから、上位スキルではあるようだ。
なんか考えるだけでちょっと興奮してくる。あとは寝るだけだったのに、眠気が吹き飛んでしまったようだ。
ただ創造スキルの中に、銃火器類のアイテムは掲載されていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます