第126話 マジョリカダンジョン 5F・3

 ブラッドスネイクの解体が終わった。慣れてないから時間が掛かった。資料室で見た解体方法を思い出しながら四人で悪戦苦闘しながらやった。

 肉を少し味見のために焼いて食べたが、前評判を裏切らない美味しさで、ヒカリは大変満足していた。良い値段で売れるということで半分を売却。残りの半分を食べる用に確保した。一匹が大きいからね。

 素材としては一番高く売れるのが皮のようで、防具に最適なようだ。軽くて頑丈、さらに毒というか酸に対する耐性もあるため、後衛職に人気らしい。あとは牙が武器の材料として使える、とあった。


「ミア姉、ナイス魔法だった」


 ヒカリが素直に褒めるが、ミアは複雑そうだ。たぶん、本人としては納得がいってないんだろうな。

 俺はあの緊張感の中、一度は焦って集中力を切らしたけど、その後で自分で立ち直り魔法を使ったことを褒めてやりたい。が、今はヒカリに任せよう。


「主様、今日はどうする?」


 なんとなく、セラには俺が魔物の位置を把握していることを、薄々勘付かれてるような気がする。セラもなんとなくで、魔物の気配を追えるようだし。獣人の特性なのか、五感が鋭いからなのか。もちろん俺ほど正確には分かっていないみたいだが。


「出来れば薬草を採取したいんだよな」

「主様の薬草採取の腕は名人級だよね」

「逆にセラは採取は苦手だよな」

「大雑把で悪いね」


 珍しく恥ずかしそうに言うな。


「主、何の話?」

「薬草採取は楽しいって話だ」

「草むしりは暇」


 ヒカリからしたら草むしりと大差ないのか……。

 ミアに意見を求めたら目を逸らされた! 君もか!

 あれ? もしかして薬草の採取依頼が結構残っていたのってこういうのが原因?


「ジャガイモ掘りは?」

「あれは必要」


 試しに聞いてみたら即答された。

 その差は食べられるかどうか、か。

 ちなみに正式名称はオジャガ。どうみてもジャガイモです。蒸かして塩とバターを添えただけでしたが好評でした。色々な料理に使えると口を滑らしたら、今度作るように言われました。頑張ろう。上手く出来るかは自信がないけど、スキルに期待だ。


「ヒカリたちは周辺の警戒と、木の実とかの食材を探してくれればいいからさ」


 キラービーにもこの際会いたい。あれも素早いみたいなんだが。

 それにハチミツは人気があるみたいで、納品依頼もあったような気がする。

 俺の要望は受け入れられた。

 一応奴隷主でリーダーだしな。食事のメニュー以外は結構自由に方針を決めることが許されている。ような気がする。

 ただ森の中とはいえ、すぐには薬草の群生地を見付けられるわけではない。実際歩いていると果物がなっていては採取し、魔物と遭遇しては狩り、を繰り返すのでなかなか進めない。

 念願のキラービーにも会えた。成人男性の頭ほどの大きさで、羽音が物凄く煩かった。一匹だけだったらそうでもなかったんだろうけど、さすがに数がいると音が重なり大音響になった。

 ミアの顔は引きつっていた。音よりもキラービーの大群を見て気持ちが悪くなったようだ。

 ヒカリとセラは気にした様子もなく次々と狩っていく。

 俺も何匹か倒したけど、的が小さくて素早いため剣だと小回りがきかないから苦戦した。斧であれに当てるセラが異常だと思ったほどだ。

 キラービーは納品できる素材は羽らしい。何に使うかは調べていない。討伐証明は針になる。もちろん討伐後はしっかりとハチミツを回収。またキラービーの巣の周囲は食物庫と思えるほど食材が豊富だった。

 薬草の群生地も少し離れたところにあったので、俺は念願の薬草採取を開始した。魔力草が多く群生していたので、採れるだけ採るのを忘れない。逆に活力草を一つも見つけることが出来なかった。

 昼食を挟んで今後のことを相談することにした。


「ある意味目的も達成したし、そろそろ帰るとするか?」

「主様、次の階層には行かないのかい」

「登録すれば次回の探索が楽になるけど、そもそも場所が分からないから探すとなると時間がかかるぞ」

「次の階層の階段がある場所なら、だいたいの予想はついてるよ」


 初耳ですが? 俺のMAPでもまだ捉えてないんですよ。


「この階層に来た時に狼煙のろしを見ただろう? たぶんそこが次の階層への階段がある場所だよ」


 詳しく話を聞いてみると納得か? 討伐隊は五階と六階からそれぞれやってきて、索敵している。理由はこの階層が広いからと、あまり時間をかけたくないと言っていた冒険者からの発言から、二手に別れていると予想したと言う。

 俺はむしろ上位種がいるから戦力を分散するのは危険だと思うけど、上位種は時間をおくとさらに進化する危険性があるから、出来れば早く狩ることが推奨されているとのことだ。

 確かにフレッドは合流が何とか言ってたような気がするな。

 あの短い会話と状況から判断出来るなんて、凄いな。


「けど俺たちの来た方向にウルフがいないとなると、向こうにいる可能性が高まるだろう。危険じゃないか?」


 まだMAPの端まで表示がされてないから、まだまだ先があるはずだ。そっちにいる可能性もある。

 ただ予想以上に広いため、一から階段を探すのは骨が折れるかもしれない。


「判断は主様に任せるさ」


 効率を考えれば行くべきなんだよな。安全との天秤をかけて考える。


「うん、一度入口に戻って様子を見よう。狼煙近辺にダークウルフのテリトリーがあれば遭遇してるかもしれないしな」


 進むにしろ戻るにしろ、状況を確認すればいい。そこで既に討伐が完了してるなら、改めて下りの階段まで行って登録して戻ってくればいいわけだしな。

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