第117話 マジョリカ・3

 お昼を食べた後は街を散策。まずは道具屋を回り、あとは食材の買えるお店をチェックしていった。

 借家を借りれば自炊することになるだろうし、ダンジョンに潜る時にもお世話になることだろう。お店を回ってて気付いたことだが、携帯食の種類が凄く豊富だった。味見コーナーがあったので試食したが、今まで食べた中では一番美味しかった。美味しかったけど、手間はかかるが自炊の方が良いな。素直な感想です。

 ただ、アイテム袋など持ってない人からすれば持ち込みたい一品なんだろうな。かなり持ち物を減らすことが出来そうだ。固形バーみたいのが多いが、お湯に溶かして食べられる、イメージとしてはフリーズドライか? みたいなのがあれば簡単にスープが作れて味の幅も広がりそうだけど、そういうのは見当たらないな。商機か?


「何か気になるものでもあったのか?」


 お店を回っている途中、ミアが時々心ここにあらずといった感じの態度をする時があったので気になった。


「な、何でもないです。今日一日で色々回ったから、少し疲れただけです」


 確かに商業ギルドからはじまり今日一日でかなりの距離を歩いている。旅で体力が付いてきたとはいえ、まだまだミアの体力は低い。それに慣れない調べ物もしたからな。


「そっか。ならそろそろ宿に戻るか」


 ヒカリとセラも心配そうに見る。


「大丈夫です。歩けないほど大変なわけでもないから」

「無理するな。別に続きは明日でもいいんだしさ」


 ミアの防具を揃えた方が良いとセラに言われたから見たかったけど、別に今日でなくてもいいしな。

 押し問答の末、宿に戻ることに決定。ミアは申し訳なさそうにしていたけど、気にしないで貰いたい。というよりも、遠慮しないでもっと色々と言って欲しい。そこまで敏感じゃないから気が回らないことが多いんだよな。

 一度奴隷になってから、しおらしくなっている。女性としては魅力的なのかもしれないけど、俺としては少しお転婆でも元気があった以前の方が好きだな。正確には接しやすい。

 その日はそのまま宿に戻り休憩。のんびり過ごした。

 レイラが来たのは夕食を食べ終えて、食堂で食後のお茶を楽しんでいる時だ。一緒にいるのはケーシーか。二人はお揃いの服、学園の制服に身を包んで現れた。

 この世界にも制服というものがあるんだな。軍服っぽいのもあるから不思議ではないのか?


「レイラたちは食事は大丈夫か?」

「はい、寮で頂いてきたので大丈夫ですわ。それで少し遅くなってしまいましたの」


 それならと飲み物だけ注文した。もちろんおごりですよ。


「今日はどう過ごしたの?」


 問われたので商業ギルドで借家の見学会から屋台&露店散策まで、今日一日何をして過ごしたのかを話した。


「ソラたちはダンジョンに行く予定ですの?」

「せっかくだし腕試しをしたいと思ってな。少し魔石も欲しいから」

「そうなると家を借りてもあまり使わないかもですわ」

「そうかもなんだがな。レイラたちは、というか、一般的にダンジョンにはどうやって潜ってるんだ?」

「そうですわね。え、と。例えば二十三階からスタートした場合は、二十五階を目指して進んで、登録を済ませたら一度装置を使って戻ってきますの。もちろん余裕があればさらに進むことは可能ですわ。あとは仮に二十四階の攻略が無理だと判断した場合は、今度は二十階の装置を目指す感じですわ」


 結構、楽じゃないんだな。その場から帰還出来るようなアイテムがないか聞くと、一応あると言う。


「帰還石と呼ばれているアイテムがありますわ。ただ、買うと最低でも金貨三〇〇枚は越えますわ。ダンジョン内の宝箱で稀に発見されますの。オークションにかけられると大手のクランが買いますわ。あとはボスを倒した時に出る宝箱でも手に入りますわ。私たちも一回手に入れたことがありますの」


 もちろん売らないで持っている人もいるとのこと。命を守れるアイテムだしな。ギルドも緊急用でいくつか持っているようだ。


「ですのでダンジョンで寝泊まりする方が長くなりますの。それでも借家を借りる人がいるのはダンジョンから帰還して宿に泊まれないリスクを回避したい人や、知り合いで共有して借りるって人がいるからですわ」


 レイラたちは寮もあるし、最悪実家に戻ればいいらしい。

 あとは一般的ではないが、留守の借家を管理するのに人を雇う者もいるらしい。これは宿と同じように、料理を作って貰ったり、あとは炊事洗濯の細々とした生活に必要なことをやってもらうために雇うようだと言う。

 商業ギルドに言えば斡旋して貰えるし、そのために奴隷を買う人もいる。ベテランに多いそうだ。

 その言葉に黙って耳を傾けていたミアが顔を上げて反応したが、一瞬のことだった。また元の姿勢に戻り話を聞いている。


「あと、知り合いに家のことを聞いたのですが、詳しい方はいませんでしたの。申し訳ございません」

「聞いてくれただけでもありがたいよ。それに学園に戻ったばかりで忙しいだろうに、わざわざ時間を作ってくれてありがとな」

「ソラにはお世話になったし問題ありませんわ。しばらくは私たちも学園に通わないとですので、一緒にダンジョンには潜れませんの。ですが余裕が出来たら一緒しますわ」

「分かった。ちなみにレイラたちは何階まで行ってるんだ?」

「確か二十七階でしたわ」

「ならそれを目標に頑張るか」

「ソラたちならきっと直ぐですわ。ただ、あまり無理をしないでくださいの。普通の狩とは、ダンジョンは違いますの」


 夜も遅いから送ろうかと言ったら、馬車があるから大丈夫だと言われた。街中を移動するために定期的に運行されている馬車があるそうだ。バスみたいだな。

 それでも宿を出て馬車に乗り込むまで見送った。ちょっと周囲から注目されたのは、何故かは分からなかった。

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